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ysh
2017年6月8日 13:06
シンクには数日前の紅茶のカップ干からびて 底にへばりついた檸檬数日前の それは 私夜の端をつかまえて縫い閉じようとする決してもう、開かないようにクローバーの針と、透明な糸部屋全体が脈打って濃いにおいを撒き散らす眩暈窓の外には、星夜の底にへばりついてそのまま干からびた私は薄く目をあけてとうの昔に死んだ星のひかりをみている
2017年6月3日 13:47
ねぎを刻むためいきをつく歌をうたうちょっと笑う言葉をつづるドアを開ける そわそわするどきどきするずきずきするわくわくする それは少女それはおとなの女それは青年それはひかりそれはねこそれは蝶それは宇宙それは、私 私の中の いくつもの私が 息をしている 私の中の いくつもの私をたばねて 息をしている 私のからだで 私のここ
2017年5月18日 17:56
たとえばGコードが私にとっていちばん心地よいとかそういう、感覚だけで生きている長すぎる指に時々嫌悪感を抱くのだけれど、それが或る時には誇りであったりもする 世界は、いともたやすく形を変える たとえばあの日見た海の青が心に染み込んでもう、どうにも泣きたくなった夜に、唐突に死んだおじいちゃんを思い出したりする骨ばった手 薄い唇 刻まれた皺あの頃は分からなかった、永遠の不在
2017年5月9日 23:52
はじまりは 音曖昧で奇妙な音の断片-私はその町で、まだ、何物でもなかった-地下鉄校庭路地裏教会アパートメントに、あふれる 音、音、また、音 押し寄せる音の波鼓膜からどんどんと内側に流れ込んで私の中に浸みこんでいく 少しずつやわらかくなった両耳の奥音は言葉と手を繋ぎ記憶の襞に印を刻む 空気が濃度を増しきのうまで未知だった音たちが輪郭を持ち産声