詩 9

たとえばGコードが私にとっていちばん心地よいとかそういう、感覚だけで生きている
長すぎる指に時々嫌悪感を抱くのだけれど、それが或る時には誇りであったりもする


世界は、いともたやすく形を変える


たとえばあの日見た海の青が心に染み込んでもう、どうにも泣きたくなった夜に、
唐突に死んだおじいちゃんを思い出したりする
骨ばった手 薄い唇 刻まれた皺


あの頃は分からなかった、永遠の不在


遠く、遠くに行ってしまった
というよりは
此処から消え失せてしまった
という、感覚

後に残るのは、記憶とかすかなにおいだけ

一番大事なものを守れずにいる私でも
だらしなく口を開けば
肺に空気は行き渡る

潮水が、靴擦れから入り込んで
心を掻き乱して両眼から溢れる


約束は、きらい


全部びりびりにやぶいて屋上からばらまいて、おしまい




#詩 #詩作 #改作


※2012年に書いていた詩の改作です。

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