詩 8
はじまりは 音
曖昧で奇妙な音の断片
-私はその町で、まだ、何物でもなかった-
地下鉄
校庭
路地裏
教会
アパートメント
に、あふれる
音、音、また、音
押し寄せる音の波
鼓膜からどんどんと内側に流れ込んで
私の中に浸みこんでいく
少しずつやわらかくなった両耳の奥
音は言葉と手を繋ぎ
記憶の襞に印を刻む
空気が濃度を増し
きのうまで未知だった音たちが
輪郭を持ち
産声を上げては
呼吸を始める
-私はこの町で、今や、私なのだ-
"Hallo, die neue Welt."
新しい私をたずさえて
音の海へ 漕ぎ出していく
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