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2020年8月の記事一覧

詩 37

次男が眠っている
離れると途端に目を覚まして泣いてしまうので
諦めて
私もぼうっとしている
身体をぴったりとくっつけて
鼻息を少し大袈裟に
顔に吹きかけるようにすると
安心するのか
また微睡みに溶けていく

私はもう、一切を諦めて
五本の指だけで
何が出来るか考えていたら
詩が一遍出来上がった

短歌 1

コーヒーの渦に溶けてく感情には名前がなくて詩にも出来ない

通り雨 上着を被せてくれたから折りたたみ傘は畳んだままで

炭酸の気が抜けていく夏の夜
私はひとり 泡粒になる

詩 36

*English version is below.

むっとするほど湿気を含んだ熱い空気
雷が切り裂く昼間の眠り
それを合図に
美しい雨が世界を濡らす

灰色の荒野の真中
旅人がひとり
立ち尽くしている

雨は旅人の身体を濡らし
火照りを鎮めてくれる

じきに夜がくるだろう

旅人は火を焚き
今朝仕留めた兎の肉を焼く
溜まった雨水で喉を潤し
土埃にうねる黒髪を洗う

幾夜も
こうしてひとり
繰り

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