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北村陽 チェロリサイタル【神宿る憂いの音】

以前お伝えしていました、チェリスト 北村陽さんのリサイタルに行ってきました。

リサイタルと言ってもピアノありなので、デュオ演奏と表現した方が分かりやすいでしょうか?
ピアノは大伏啓太さんでした。
会場は初のハクジュホール。
入場後、毎度恒例音響チェックをします。
他の方の話し声や物音に耳を傾けながら、音の響きを確認。
ふむふむ…
ハクジュホール、良い意味で音響設計に手を加えすぎてない、自然でアットホームな響きの会場でした。客席数が300らしいのですが、このくらいのキャパの会場で毎回不安なのが、狭い空間でも最大限良い響きにしようと音響設計にこだわりすぎてしまうこと。結果、音を台無しにしてしまっていて残念な思いをしたことが過去にあります。
また、残念な思いをする時って決まって最初の音響チェックから嫌な予感がして落ち着つかないのですが、その点ハクジュホールでは安心して開演を待つことができました。

あともう一つ。
今回は抽選経由での購入だったので座席が選べずでした。
前回のリサイタルはトッパンホールの前方席。
今回は後方席で聴きたかったので、
どうせ後ろしか取れないだろうし丁度いいや〜
なんて安易な気持ちで応募したら、当選した席がまさかの最前列だったと言う…
ジャパンアーツさん、いらぬ気遣いよ〜

描きたい音楽家の音を実際に聴いて絵が浮かんだとしても、その絵が納得するものとは限りません。今まで聴いた北村さんの演奏はどれも素晴らしかったけど、自分が納得する絵をイメージできないでいます。あと少しで北村さんの音が掴めそうでしたが、次のリサイタルまでおあずけですね。
しかし、これも何かのご縁。
また違った景色も見えるでしょうし、この最前列席をありがたく受け入れたのです。

そして始まった演奏。
相変わらず北村さんの音は神々しい。
ですが、途中ピアノとチェロの掛け合いで音が上手く混ざらない瞬間があり、段々そこが気になって仕方なくなってくる。
これは以前聴いた、ピアニスト 藤田真央さんとビオリスト アントワン・タメスティさんのデュオ演奏でも感じたこと。あの時もピアノとビオラの音が上手く混ざらない瞬間が気になった。

その時は私が初めてビオラの音を聴いたことと、お2人の音の方向が違ったこと、私の座席やステージ上の楽器の位置でそう聴こえるのだと思っていました。しかし、今回またも同じ状況になり、音が上手く混ざらない原因が他にもある気がしてならず…真相究明してみることに。

まず、北村さんと大伏さんも音の方向は違う。
北村さんの音は客席から見て左斜め上によく伸びる音。対して大伏さんのピアノはその場でフワッと湧いてくるような静かな動きの音。楽器それぞれの特性がある上、お2人の音の方向も違うとなれば、当然上手く混ざらない時もあると思う。しかし、凄く綺麗に混ざり合ってとっても良い響きになる瞬間もあって。
「その差は何?」と考えた時、ふと目に入ったのがピカピカに磨かれたスタインウェイピアノ。
そこで一つの疑問が湧く…

そもそも、現行のピアノって作曲当時あったの?

…多分なかったですよね。
同じスタインウェイピアノでも、使っている木材や弦、その他の部品、今と昔では違うはず。
演奏中音が上手く混ざってないなと思う時、ピアノがチェロに覆い被さっているような聴こえ方をしていました。そして大体が、フォルテやクレシェンドで盛り上がる場面だった。
ピアノに詳しくないので何とも言えませんが、今のピアノに使われている細かい部品含め、トータルで音の性能が良すぎるのではないでしょうか。作曲された当時に主流だったピアノの音量もこんなに大きくないのかも。
ちなみに今回のプログラムがこちら


プログラム
■ショスタコーヴィチ:チェロソナタOp.40
■ヤナーチェク:おとぎ話
■ベートーヴェン:チェロソナタ第4番Op.102-1
■ブラームス:チェロソナタ第2番Op.99

まあ最前列だったからそう感じただけの可能性もあります(←ヤダ、結構根に持つタイプだった)
もしくは、私の耳が変わり者なのか…?
他の人にはどう聴こえているんだろう。
今回の演奏だと、ピアノとチェロは横並びの方が良い音に聴こえると思ったのですが、実際そう上手くはいかないものなのでしょうか?
改めて、音楽は奥深いですね。

とは言え、美しい響きもたくさんあって。
途中、チェロとピアノのあまりに美しいハーモニーに思わずため息が出てしまったのですが、それが近くの座席の方々と被ってしまった。きっと皆さん、同じように美しいと感じていたのでしょうね。
また、普段は切ないほどの憂いと艶を持ち、厳格なオーラを解き放っている北村さんの音ですが、ピアノがあることで柔らかい雰囲気を纏っていました。

そしてそして、なんと!
前回に引き続き、アンコールがバッハだった!
私がチェロの演奏で1番好きなのがバッハの曲。
それを北村さんの演奏で2曲も聴けるなんて…
夢のような時間でした。



結局、真相究明なんて大それたことはできず…
確かな証拠もないので、今のところ音が上手く混ざらない原因は私の空耳と言う結論に…
ベートーヴェン始め、ブラームスやショスタコーヴィチなどの音楽家達にはアンサンブル演奏ってどう聴こえていたのだろう?
彼らにも音の方向って見えたのかな。

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アンナ ブラック
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