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フリードリヒ・グルダ【音で描く現代美術】

夏から演奏会に画材にと惜しみない愛を注いできた私。
しばらく演奏会巡りはお休みです。画材もなるべく、今あるもので工夫して制作しています。
生音もいいですが、それは今生きている音楽家に限定されたものなので。だからこそ、毎年1つ1つの演奏会が貴重ではあるのですが、録音でしか聴くことのできない音楽家たちの音は、こういった、私の演奏会巡りが落ち着いた頃にどっぷり浸ることにしています。(金欠なだけでしょと言うツッコミはご遠慮下さい)

現在制作しようと企んでいるのは、フリードリヒ・グルダの音からインスピレーションを受けた作品です。
私、グルダの音を描くのが大好き。今までも描いたことはあるのですが、私と音の相性が良いのか、面白いぐらい描きたい絵がスルスル描ける。また、音はもちろん、人生も含めて、神から選ばれた一流の芸術家だと思っています。
グルダの特徴は、積み重なっていく音の、マチエールの強さです。それは、決して陳腐にならない、格好良くキマると言う意味での強さ。技術のない人がやると、ダサくて大火傷するやつです。
マチエールとは、画材によってできる質感や凹凸感のこと。デッサンなら木炭や鉛筆の質感。油彩画なら、油絵の具の盛り上がりによってできる形も、マチエールの一つです。
絵画作品でのマチエール作りは超重要。
どんなに色が綺麗でも、マチエールがしっかりしていないと絵として成り立たないのです。
それこそ、一瞬でダサくなります。
グルダの音のマチエールはいつだって完璧。そして彼の音が描く絵は、アンゼルム・キーファーのような力強くて美しい現代美術。

そんなグルダの表現を作っているのは、彼のインプットの多さだと思っています。
クラシックだけでなく、ジャズも学んだグルダは、音楽表現に対する引き出しが非常に多いのでしょう。私が師事している先生も、口が酸っぱくなるほどこう言います。
「インプットがないのにアウトプット(自己表現)はできない」「どんどん良い物を学んで吸収して、他人のマネでいいからやってみなさい」と。
それが最終的に自分の表現に繋がっていくんだと言う、先生からの教えです。グルダの音は、そんな先生の金言を見事に体現しています。
それは、彼のモーツァルトやベートーヴェンなどの古典作品を聴けば、すぐに分かります。
弾いている作品は古典なのに、聴こえる音が現代的だから。今でこそ、現代芸術的な音を奏でるピアニストはたくさんいらっしゃいますが、あの当時ではグルダぐらいだったのでは?
これは、表現の引き出しが多いからこそなせる技なんだと思っています。

グルダは本当に偉大な音楽家でした。
2000年1月27日、ご本人が公言したとおり、モーツァルトの誕生日に亡くなったそう。
今も生きていれば、今年で92歳。
逆に私がもっと早く生まれていれば、きっと演奏を聴くことができたんだろうな。

そう言えば、お弟子さんのマルタ・アルゲリッチのマチエールも力強いですよね。アルゲリッチの音は情熱的すぎて、私の方が音に負けてしまうのであまり聴かないのですが、それでも彼女が凄いことは分かります。同時に、グルダサウンドが受け継がれていることを嬉しく思います。
アルゲリッチの師匠で、もう1人忘れてはいけないのがアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ。彼はピアノ界のレオナルド・ダヴィンチだと思っているのですが…この続きはまたの機会にでも話しましょう。

では皆さん、良い年末年始をお過ごし下さい♪♪♪

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アンナ ブラック
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