イーヴォ・ポゴレリチ ピアノリサイタル
今年もイーヴォ・ポゴレリチのリサイタルに行ってきました。
会場はお馴染みのサントリーホール。
毎回会場選びに悩むのですが、結局サントリーホールを選びがちです。それなりにチケットのお値段もしますし、未知のホールに冒険する勇気はなかなか出ないですね。
さて、今年のリサイタルは前半がモーツァルト、後半がショパン、アンコールがシベリウスでした。去年聴いた、あのキラキラと輝く音が忘れられなくて今日の公演はとっても待ち遠しかった。
しかも、ポゴレリチのモーツァルトは初めて。
さぞ美しく輝くんだろうなと開演前からワクワクが止まらなかったです。
19時、ステージの照明が明るくなる。
ご本人はいつも通り社長歩きで登場。マスクをつけていて、何故かステージ上ではずしながら歩いてくる。ピアノの前までくると床に楽譜を放り投げ、着席後は観客の拍手が止まるのを待たずにすぐ弾く、安定のゴーイングマイウェイぶり。
うん、それはいいの。ただ気になるのがね…
きゃ、客席明るすぎない!?!?
たいてい客席の照明って暗めじゃないですか?
まぁご本人からそう言う申し出があったのかもしれませんが…去年もこんなに明るかったっけな?とか色々考え込んでしまった。その後、何度も演奏に集中しようとしましたが、やっぱり無理でした。
まず、ポゴレリチのモーツァルトが重心低めで乾いた音をしていた。それが照明のせいでそう聴こえるのか、彼の解釈でそう弾いているのかは分かりませんが、私はその世界観に入っていけずで…
私の中でモーツァルトと言えば藤田真央さん。
幸せに満ち溢れ、空高く昇るあの音がモーツァルトのソナタにピッタリで。
その印象が頭の中にあったせいか、ポゴレリチのモーツァルトに偏った期待を持ちすぎてしまったのかもしれません。
何だか置いてけぼりになった気分で前半が終了。
後半のショパンに期待しつつ休憩が終わるのを待っていると、まだ休憩の雰囲気が漂っている中いきなりご本人が登場する。それを見たスタッフが大慌てでロビーの扉を閉め、観客の拍手も譜めくり係の登場も遅れ遅れと言うグダグダ感で後半がスタート。遅れて来た譜めくり係に対してイライラしているようにも見えました。
そしてまた、ステージ上でマスクをはずす。
マスクぐらいいいじゃない〜
と思われるかもしれませんが、マスク文化のない海外の方がマスクをつけるのって珍しくないですか?国によるかもしれませんが、観光客でもマスクをしている人あまり見ない気がします。なのでもしかしたら、今日はご本人の体調が悪かったか、機嫌が悪くマスクで誰とも話さないぞオーラを出していて、それが演奏にも現れていたのかなと。
後半のショパンも、やはり乾いた音がしました。
艶のあるキラキラした音も鳴るのですが、良いところで乾いた音が混ざる。
ここで名探偵アンナ、あることに気づいた。
まず、観客の入りがいつもより少ない。ざっと見ても結構な空席が目立つ。そのせいか、会場が温まりきらず(会場も会場の雰囲気も)湿度も低く感じました。ポゴレリチのような、空気に浮遊させるタイプの音にはあまり良い環境ではなかったのかも。
去年は神公演だったのかなぁ…
今回アンコールだったシベリウスの悲しきワルツは、去年のリサイタルでは後半の部の第一曲目。
当日時間に遅れてしまった私が、初めて彼の生きた音を耳にした曲。あまりの美しさに感動した曲。
今年は同じ曲と思えなかったです。
アンコールも去年は2曲弾いてくれました。
彼の演奏については賛否両論あり、ネットでの声を見ていると、奥様を亡くされてからの演奏について特に色々と言われているように思います。
恐らく、日によってご本人の状態に波があり演奏が安定しないことが原因ではないでしょうか。
気難しそうに見えるけど、多分本当はとっても繊細な人。メンタルにもムラがあるのかな…
オレンジ色の答えを探す旅はまだまだ続きそうです。