最近読んで面白かった本を軽くまとめる:2/1~/30
こんばんは。あんどーなつです。
久々ですが2月に読んで面白かった本を紹介します。
1冊目は女だから男だからと性別に縛られて疲れてしまった方に。
2冊目は何者かになりたいがゆえに自分の才能のなさに嫌気がさしてしまう方におすすめです。
K-POPアイドルユニットのRed Velvet・アイリーンが「読んだ」と発言しただけで大炎上し、国会議員が文在寅大統領の就任記念に「女性が平等な夢を見ることができる世界を作ってほしい」とプレゼントするなど、韓国では社会現象にまでなった小説です。
出産を期に精神を病んでしまった主人公キム・ジヨンが、精神科医に自分の半生を話していくという形式で綴られています。
この小説が炎上の対象になったのは、韓国に未だに根付く女性軽視・女性差別を赤裸々に問題形式しているからです。例えば、こんな場面があります。
炊きあがったばかりの温かいごはんが父、弟、祖母の順に配膳されるのは当たり前で、形がちゃんとしている豆腐や餃子などは弟の口に入り、姉とキム・ジヨン氏はかけらや形の崩れたものを食べるのが当然だった。
箸、靴下、下着の上下、学校のかばんや上履きいれも、弟のものはちゃんと組みになっていたり、デザインがそろっていたが、姉とキム・ジヨン氏のはばらばらなのも普通のことだった。(中略)
実際のところ幼いキム・ジヨン氏は、弟が特別扱いされているとか、羨ましいとか思ったことはなかった。だって、初めからそうだったのだから。
男子学生は、サークルの花だの、紅一点だのと言って女子学生をおだてるのが常だった。いくら大丈夫だと断っても、女子には荷物も持たせなかったし、お昼のメニューも打ち上げの場所も、女子のいいように決めてくれと言う。合宿に行けば、女子の参加者が一人りしかいなくても、広くて良い部屋を割り当ててくれた。
そうしておいて一方では、やっぱりサークルってものは、度量が広くて力持ちで、よく息のあった俺たち男子学生のおかげで回っているんだよなあと、男同士で勝手に盛り上がっていた。会長も男、副会長も男、総務もみんな男だった。(中略)
「何度も言ったじゃないか?大変だから(会長などの役職は)女子にはできないよ。君たちはただサークルにいてくれるだけでいいんだよ。それが俺たちにとっては力になるんだから」
キム・ジヨン氏は保育園にジウォンちゃん(娘)を迎え行き、ベビーカーに乗せた。(中略)
このまま家に帰ろうかと思ったが、天気がよかったので歩き続けた。公園の向かいのビルの一階に新しくカフェができ、割引サービスをやっている。キム・ジヨン氏はコーヒーを一杯買って、公園のベンチに座った。(中略)
久しぶりに外で飲むコーヒーは美味しかった。すぐ横のベンチには、三十前後と思われる会社員たちが集まって、キム・ジヨン氏と同じカフェのコーヒーを飲んでいた。
サラリーマンの疲労も憂鬱さもしんどさもよく理解しているけれど、それでもなぜか羨ましくて、しばらくそちらの方を見てしまった。そのときベンチに座っていた一人の男性が、キム・ジヨン氏をじろっと見て、仲間に何か言った。正確には聞き取れなかったが、途切れ途切れの会話が聞こえてきた。俺も旦那の稼ぎでコーヒー飲んでぶらぶらしたいよな…ママ虫(育児をろくにせず遊びまわる害虫のような母親という意味のスラング)もいいご身分だよな…韓国の女なんかと結婚するもんじゃないぜ…。
「なんてことのない日常じゃないか、これくらい誰にだってある」と思えるのが、哀しいかな性別に基づく差別が私たちの身近にあることの証明なのではないかと私は思います。
本書には「ストーカー被害にあったのはお前の格好のせいだ」と膝丈の中学校の制服を父親に責められたり、就職後同期内で最も成績がよかったのに男子の同僚ばかり昇進しボーナスがでるといったようなさらに露骨な性別に基づく差別の描写もあります。
それも読んでいて心が痛いのですが、それよりもシンドイなと思うのは先ほど引用したような日常にある小さな差別だと思います。小さな差別が積み重なって身動きがとれなくなってしまう、というのは男女問わず経験があるのではないでしょうか?
私はこのnoteでフェミニズムやジェンダー論を議論したくありません。男女がまったく同じように社会で生きるには今の世の中は難しいし、男性も「男ならデート代払って当たり前でしょ」などと男性だから求められる社会的な振る舞い方があると思うからです。
性別にかかわらず、性別に基づいた『生き辛さ』はついてまわるものだと思います。ですから、自分が性別を理由にした嫌な経験をしたときには、「女は、男は、いいよな~こんな経験をしなくて済むんだから」と異性を拒絶し、さげすむような言動をしないでほしいと願います。
異性が異性であるが故に、どのような嫌な思いをするのかは正直なところ分からないと思います。しかし、相手を思いやるにはなるべくリアルにその嫌な経験を理解しなければなりません。その際に、この「82年生まれ、キム・ジヨン」は一役買うのではないかと私は思います。
あなたの大切な彼女や奥さん、娘さんがどのような経験をしているのか、一度知ってみたいという男性にぜひ読んでほしいと思います。(もちろん、女性も彼氏や旦那さん、息子さんの生きにくさを知らなければなりません。重松清の作品を読むことをお勧めします。)
そして「生きていくのって大変よね、お互い大変ね」といたわれるように、性別に基づく生き辛さを共有できたら幸せな社会が築けるのではないかと私は本書を読んで思いました。
女性の生き辛さを理解してみようと思った方はこちら↓
「職場の人間関係に悩む、すべての人へ」という副題にある通り、職場にいる人間を「天才・秀才・凡人」にカテゴライズし、属性の違いによって発生するコミュニケーションの祖語を丁寧に解説した一冊です。
格好つけて書きましたが、要は「天才はこんな人で、こんなことができて、こんな風に物事を考えるので、職場ではこんな風にみられがち」というのを天才・秀才・凡人ごとに記しています。物語風に書かれているので、堅苦しさは一切ありません。
最後には要旨が物語を交えずにまとめられているので、時間がない人はそこだけ読むといいと思います。
私がこの本を気に入ったのは、凡人も悪くないな思えるようになったからです。厳密にいうと、自分が凡人であることにあきらめがついたからです。
本書では凡人の最大の武器は「共感力」だと言われています。それに乗っ取り、こんな切り口で物語は始まります。
「ええか、学歴が良くて仕事のできる人間ほど、よーく勘違いする。強みで愛されるってな、だどもな、真実はむしろ逆や。弱みがあるからこそ人は愛されるんだべ。つまり、犬の才能は『愛される余白』や」
「人間が抱えるほとんどの悩みは一緒や。それは『自分のコントロールできないことを、無理やりコントロールしようとすること』から生まれている」
(中略)
「じゃじゃーん。じゃあ、ここでクイズな。人間が一番コントロールしたがるけど、一番の悩みのもとになるものはなんや?」
「うーん、他人…ですか?」
「他人は二番目や。あのな、一番は『自分の才能』や。言い換えれば『ないものねだり』をすることや。つまり、人が一番思い悩む根本は、『自分の才能をコントロールしようとしたとき』なんや。思い当たる節はないか?」
私はこの2つの箇所に共感しまくってしまいました。これに非常に共感してnoteまで書いてしまうあたり、私は凡人なのでしょう。
凡人は武器である共感力を使って、天才や秀才の緩衝材となり組織で活躍できるそうです。その具体的な方法は本書に譲ります。自分が凡人であることに苦しんでいる人は一度読んでみてください。諦めがつきます。
凡人の活躍する方法が知りたいひとはこちら↓
~Fin~