障害者配慮を最大限生かし、発達障害でも資格試験に一発合格する方法
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※本記事は、障害者手帳を取得している発達障害の学生・社会人を対象としています。
年が明けました。
この記事にたどり着いた方は、今年は何かを達成しようと新しく何か資格を取り、就活のアピールやキャリアアップに役立てようと考えているかもしれません。
一方、いざ試験を受けようにも次のような不安も抱えていると思います。
物事を理解するスピードが遅くて解答まで時間を要する。
周りの雑音に気が散って集中できない。
しかし、障害者手帳を取得している方であれば、資格試験団体から障害者配慮を受けられるのをご存知ですか?
そして、障害者配慮を最大限活用できれば、発達障害でも一発合格に手が届くということを!
この記事では、障害者配慮を使って数々の資格試験に合格した僕が、なぜ障害者配慮を活用する理由と具体的行動について、解説します。
どうぞ、配慮によって当日安定した状態で受験が臨めるヒントを得ていただければ、嬉しいです。
【注意】
実際に受けられる障害者配慮は、試験によって異なります。
必ず事前に、どのような配慮が受けられるかは試験団体に確認しましょう。
1.発達障害者向けの、障害者配慮とは?
①別室受験
まず、発達障害を抱えた方には別室受験がいただけます。
これは、視覚過敏・聴覚過敏によるものによる配慮です。
周りの受験者が、問題冊子のページをめくったり答案用紙に書き込む音が気になるかもしれません。
また、そもそも慣れない場所で受験することに、不安を覚えるかもしれません。
しかし、別室受験であれば試験官以外の人間は自分しかおりません。
そのため、一人の環境で問題に集中できます。
②試験教室までの付添人同行
試験会場という、普段とは異なる場所。
交通手段もいつもと違い、ちゃんと乗り換えられるか、会場まで迷いなく着けるかも気になるでしょう。
そうした環境変化の不安から、障害者配慮では試験会場、それも教室までの付添人同行も認めています(ただし、試験開始前までには退出します)。
親やパートナーなど、あなたの味方でいてくれる存在が会場までそばにいてくれたら、心強いでしょう。
試験直前に大切な人から「頑張ってね」と言われたら、励みにもなりますよね。
あなたの理解者と試験開始前まで一緒ならば、試験開始のチャイムが鳴った時に強気で臨めるチャンスだってあるのです。
③イヤホン受験
障害者配慮には、イヤホンをつけて受験も可能です。
これは①にも通じますが、周囲の騒音といった聴覚過敏への配慮から来るものです。
さらに、イヤホンはリスニング試験中にも適用できます。
例えばTOEICでは、スピーカーではなくイヤホンからの音声受験が可能です。
これにより、雑音を気にすることなく音声に集中できます。
普段リスニングを聞き流しする時はイヤホンからだ、という人にとっては、いつもと同じ勉強方法だという安心感にもつながります。
④時間延長
最後に、時間延長が可能です。
これは、物事を整理して理解する速度が定型より時間がかかるという、状況把握の困難からの配慮によるものです。
これも先ほどの続きですが、TOEICは最大2倍の時間延長ができます。
時間延長ができれば、仮に時間配分を間違えた時に焦ってもペース回復のための時間が保てます。
よって、合格への可能性も高くなります。
「自分は時間内に絶対解ける!さっさと帰りたいし、時間延長なんていらない」と思っても、保険のために時間延長は申請しましょう。
2.なぜ障害者配慮を最大限利用するのか?
①自分のパフォーマンスを最大限発揮するため
障害者配慮を最大限利用する理由はまず、自分のパフォーマンスを最大限発揮するためです。
なぜなら、どう頑張っても他人のヘルプなしでは対処できない特性要因を一つでも多く取り除ければ、合格への可能性が高まるからです。
例えば、時間延長。
一瞬、他の受験生の立場を考えたらずるいじゃないかとためらうかもしれません。
ただ、僕は周囲の目を気にして遠慮する必要はないと考えます。
確かに、一般受験者からしたら、時間延長なんて何ともぜいたくな配慮なんだとお思いかもしれません。
しかし、発達障害の方は予想外の展開への対応に難を抱えます。
少しパターンが違っただけで、わめきたくなるほどのパニックを起こす傾向にあります。
その焦り具合は、昨日まで元気だった家族親戚友人が、急に亡くなったのと同等のレベルです。
試験中、あなたがパニックになっても誰も助けてくれません。
焦ったまま試験が終了し、散々な結果で不合格なんてもったいないでしょう。
僕からしたら、一般の方と同等の条件で受けるなど火中の栗を拾うようなものです。
だから、障害者配慮を可能な限り申請して、使い倒してください。
せっかく試験団体が、あなたを合格させるために用意しているサポートです。
障害者配慮を、存分に使いましょう。
②不安要素を一つでも多く取り除くため
2つ目に障害者配慮を最大限利用する理由は、不安要素を一つでも多く取り除くためです。
なぜなら、障害者配慮を使えば本番での試験集中のために外部環境に対応できる余裕のなさから回避できるからです。
試験会場は、予測不能な出来事が起こります。
後ろの受験者が、ブツブツ言いながら貧乏ゆすりをしている。
会場近くが車の通行量の多い場所で、クラクションも良く鳴る。
隣の受験者との距離が短く、圧迫感がある。
自分だけでは変えようもできないものよって、気になってしまう可能性があり得ます。
そのような不安要素によって、集中力を邪魔されたくないですよね?
せっかく、決して安くない受験料を不合格で無駄金にするなんて、もったいないですよね?
だから、障害者配慮を申請しましょう。
そもそも、家庭でも学校でも会社でも、1年通じて安定したコンディションを維持するのが困難な障害特性。
受験料を「合格」という価値のある対価に、変える取り組みをしましょう。
3.障害者配慮を、最大限使い倒す具体的行動
①試験団体に電話し、配慮事項を確認する
障害者配慮を最大限生かすためには、まず試験団体が提供している配慮事項内容を読み込んだ上、試験団体に確認します。
時期としては、試験本番の3カ月前から着手します。
なぜなら、本番直前では会場と席の手配が間に合わず、希望通りの配慮ができなくなるからです。
例えば、TOEICには「プライオリティサポート」と呼ばれる障害者配慮を提供しています。
この中で、僕は受験時に次の3点を希望しました。
え、発達障害じゃないサポートも受けられるの?
はい、「受けられます」。
周囲の物音に敏感なので、聴覚に特性があります。
後ろの席では、リスニングの音声が拾いにくいのと前の受験者の行動に気が散るので、一番前の座席にしてください。
物事を理解するのに時間を要するので、時間延長をお願いします。
聴覚・その他のサポートであっても、全部立派な発達障害の特性でありませんか?
そして、これらの配慮が受けられるか、試験団体の障害者配慮担当に確認するのです。
ここで重要なのは、事前にかかりつけ医へ診断書に記載してもらいたい配慮事項を自作することです。
なぜなら、診断書作成には何千円という費用がかかり、もし配慮が受けられなかったら、診断料が無駄になるからです。
具体的には、自作したたものを試験団体に読み上げ、「こちらの内容で問題ないですか?」と確認します。
これで「問題ありません」と回答が来れば、次の「②かかりつけ医に、配慮事項を明記した診断書記入を依頼する」に進めます。
もし先方が難色を示したら、「では、どのような記載が望ましいですか?」と問いましょう。
先方から「この場合は、〇〇のため△△で~」と具体的な回答が返ってくるまで、受話器を切ってはいけません。
何とも坂巻は、がめつい野郎でしょう(笑)
実際、電話した時は何度も保留と折り返しをさせられ、試験団体は骨を折らせる面倒なヤツと思ったかもしれません。
しかし、これだけ我を張ってでも僕は「試験に合格する」目的一心で、試験団体と齟齬のないよう確認を怠りませんでした。
配慮によって、アドバンテージが得られます。
そこに、遠慮や忖度は必要ありません。
合格のために、受けられるサポートは存分に使いましょう。
②かかりつけ医に、配慮事項を明記した診断書記入を依頼する
次は「①」で確認した内容を、かかりつけ医に診断書記入を依頼します。
そして、この診断書が障害者配慮を受けるための決定的な資料となります。
なぜなら、あなたの障害特性から来る配慮について、自分以外の客観的な「根拠」となるのが診断書になるからです。
そのため、かかりつけ医には適当に依頼せず、きちんと配慮が通るような「お膳立て」をしっかり準備します。
順序としては、下記になります。
1.診察前
①試験センターに掲示してあるサポート内容を印刷し、該当する部分を蛍光ペンで塗るなり枠で囲む
②事前に自作した、診断書に記載してもらいたい配慮事項を印刷
①・②を、診療時に持参する。
2.診察
①・②をかかりつけ医に提出し、次のように伝える。
そして後日、かかりつけ医が記載した診断書を受け取ります。
その後、試験団体から指定された必要書類(障害者手帳のコピーなど)をそろえ、郵送ないしはFAXします。
重ねて主張しますが、障害者配慮を受ける決定打は診断書の内容です。
ここは気を抜かず、試験団体・かかりつけ医としっかり認識合わせをした上で診断書を準備してくださいね。
③試験当日、試験官に配慮事項を自分から伝える
そして試験当日、試験官に配慮事項を自分から伝えます。
試験官は、事前にあなたが障害者配慮を受けていることを知っています(そのために、試験官は事前に部屋を別に設けたり優先的にあなたを試験会場へ通したりしているのです)。
それでも、念押しで自分からカミングアウトするのは重要な行動です。
なぜなら、ここで申告すれば試験中に起こる突発的な配慮にも対応してくれるからです。
まず、試験官が来た時にあなたは次の内容を伝えます。
ここまでバカ丁寧に申告するの?とお思いかもしれません。
しかし、これが後々に大きな差を生みます。
僕が、英検準1級を受験した時のことです。
リスニングに入った時、会場から先に試験が終わった受験者が帰る足音が聞こえました(配慮のため時間をずらしているので、一般の受験者とは試験時間に若干の差があります)。
試験に集中し、少しの物音でも過敏になります。
僕は、かすかな音でも気になったらすぐに試験官に挙手し、問題文を巻き戻すように頼みました。
短期記憶が苦手な上、1回しか流れない音声には最大限の集中力を払います。
恐らく10回は、挙手したと思います(笑)
試験官も、正直僕を迷惑がっていたかもしれません。
それでも、合格のために粘り強く巻き戻しに配慮いただけました。
それは試験前、試験官に障害特性を伝えたからだと考えます。
事実、2次試験のスピーキングでも、予想外の事態にどもりやすい傾向を自己紹介の時に伝えた上で臨みました。
その結果、一発合格を果たしたのです。
日々の勉強が点数に結び付くのは言うまでもありません。
しかし、試験中の配慮もまた、合否に影響するのも事実です。
落ちた時に「あの時ちゃんと伝えりゃ良かった!」と後悔しないよう、試験当日もきちんと自分から伝える努力をしましょう。
まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
以上で、障害者配慮によって合格を勝ち取る理由と具体的方法を、お伝えしました。
実は、僕がここまでしつこく障害者配慮にこだわるのは学生時代に思うように結果が出なかった悔しさからでした。
僭越ながら、僕は学生時代、模試や学校のテストではまずまずの成績を残していました。
※ 具体的なエピソードは、こちらの記事をご覧ください
ただ、肝心の本番で僕は結果が出ませんでした。
確かに、当時はまだ障害者配慮なども存在せず、定型と同じ土俵で戦わざるを得ない環境も合格を遠ざけたのかもしれません。
しかし、結果が出ず高校も大学も滑り止めに入学した悔しさを引きずっていたのも事実です。
大学1年の時は、仮面浪人して別大学に編入する計画も立てていたほどです(未練たらしいのは嫌なので諦めましたが)。
その反動が、社会人になってから「一発合格」へのこだわりを強くさせたのでしょう。
合格のためには、綿密な戦略を練り、様々な可能性を考えて本番に臨む。
弱点をなくすには苦手分野の克服も一つですが、どう頑張ってもできない障害特性から来る阻害要因を減らすのも、戦略の一手です。
その一つが、障害者配慮の申請になります。
資格試験を受験される、みなさまへ。
ぜひともご紹介した障害者配慮を使い倒し、弱点をなくして合格を勝ち取りましょうね!
この記事を通じ、あなたが発達障害でも合格できる手助けとなりますように。