窓を開けたら夏の匂いがした。(短編小説)①
僕の好きな人には、大好きな人がいる。
でも、彼女の大好きな人は、恋人がいる。
僕の好きな人は、相手に恋人がいても想いを隠すことが出来ないらしい。
一度、僕が
「君の大好きな人には恋人がいるのだから他を見るのもいいと思うよ」
「無理にとは言わないけど」
と言うと、僕の好きな人は
「それは、大丈夫。彼以外好きにはなれないし、ならないから」
「でもそうやって私のことを心配してくれるとこも素敵よ」
と、とっても綺麗な横顔で僕に優しく言った。
そのくらい、好きなのだ。
今日も僕の好きな人は、大好きな人とお酒を飲みに行く。
彼女はお酒も大好きなのだ。
特に、好きな人と飲むお酒は、とても美味しくこの時間が幸せだと。
今、この瞬間に二人だけしか存在しないんじゃないかと本気で思うくらい何も
見えなくなる、と。
だから、僕は今日も22時を過ぎてから丁寧に部屋の掃除をする。
酔うと必ず僕に電話をかけて家まで来る大好きなあなたのために。
泣きながら話す、君の大好きな人がどう素敵でどのくらい大好きか聞くために。
僕はきっとベッドも綺麗にするだろう。
君は酔って、泣き疲れるとすぐに寝ちゃうから。
そして、翌朝君は
「今日はありがとう。また話聞いてね」
「あなたが友達で本当によかった」
と言って家に帰る。
そしたら、すぐに部屋の換気をしよう。
君の香りをすぐに無くしてしまわないと。