その彼は アーティチョークを添えて。

その彼は、自分の美学を持っていた。
悪く言えば、こだわりが強いが
私にはそのこだわりを持つ姿が美しく冷たく感じていた。
冷たくというと、冷酷な感じだがそうではなく、例えば夏休みに山の中で、足だけ浸かる川の水のように冷たくキラキラと輝いていた。

ある年私は大きな壁にぶつかった。
こんな暑い夏の日差しが私をさすのに
私は途方も無く暗く深い所まで落ちる音がした気がした。
5年ぶりに電話をかけたにもかかわらず
彼は変わりなくただ冷静に私の話を聞いてくれた。
そして、私に一言、一旦落ち着いて。と言う。感情的ですぐ泣き物事の本質を見失う私は、その言葉を聞くと少し笑ってほっとしてしまう。
この人には、本音を話しても大丈夫だなと。

彼は昔からそうだった、物事に対して自分の軸があり、美学で判断する。
物事が格好良いのかダサいのか。
そしてそれをちゃんと言語化する力がある。
私はそれにかなり助けられている。
ありがとう。
貴方に助けられてここに生きています。

あのさすような暑い日、コンクリートの坂を登りながら通りにカレーパン屋さんが見えた。丁度お昼時でカレーパン屋さんは人で賑わっていた。


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