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長所はひとりじゃ活かせない

秋のドラマがぼちぼちクライマックスを迎えている。
『あたりのキッチン!』もそのうちのひとつだ。

絶対音感ならぬ「絶対味覚」を持つコミュ障大学生の清美は善次郎が営む定食屋『阿吽』でアルバイトを始め、料理を通じて成長していく…というドラマだ。
好きなのよね…食卓系ドラマ…。

先週の放送で就職活動が始まった清美がまず取り組んだのは自己分析だ。
長所、できること…。
料理ができる・根気強い・絶対味覚の3つから食品開発が自分に合うのでは?と考え、大手お弁当チェーンのインターンシップに参加。
結局、食品開発の仕事を志すには至らなかった。
つまりインターンシップに参加して食品開発は「やりたいことでない」と気づき、その道を選ばない判断をした。


自分の長所ってなんだろう。
面接官に「あなたの長所は?」と聞かれたら、わたしはなんて答えるんだろうなあ…
そもそも選考にエントリーする会社をどう選ぶんだろう。

まずはスキル=できることから選択肢を絞るだろう。
スキルといっても、料理とか目に見えてわかりやすいスキルである必要はないと思っていて。
たとえばデスクワークだってスキルになりうる。
友人にいわれて気づいたのだ。
「えいみさん、よく1日何時間も座ってられますね。俺パソコンとか絶対無理っす」と。
なお彼は現場で働く職人さんだ。

だいたい「できそうにないこと」は無意識に選択肢から外している。
車の運転が苦手な人はタクシードライバーになろうとは思わないだろうし、職人さんの彼のようにデスクワークが無理なら事務職やエンジニアは視野に入らないはずだ。

だから、ここはあんまり心配することはないと思っている。


で、こんなことを言ったら元も子もないのだけれども、長所ってひとりでは発揮できない気がする。
「長所と短所は裏返し」ともいうように、相手や環境次第だと思うのだ。

しかるべき環境に身を置いてこそ、長所が立体的に浮かび上がってくる。

清美は一見するとコミュニケーション能力ゼロだが、もうすこし詳細にいえば「極度の話し下手」なだけでコミュニケーション能力がないわけではない。
愛想のいい接客はできなくても、お客さんの様子をよく見て料理に工夫ができる洞察力と気遣い力の持ち主だ。
その洞察力と気遣い力は『阿吽』だからこそ発揮できているのであって、たとえばこれが威勢のいい元気な居酒屋だったらたぶん、そうもいかない。


わたしの友人で現・会社員で元・美容師の女性がいる。
美容師を辞めた理由は「お客さんと話すのが苦手すぎたから」だそうだ。
当時はお客さんと話した内容をできるだけメモにとり、次に来店したときにそのメモを頼りに会話するようにしていたと。

ここからはわたしの憶測だけど、彼女はきっと環境が合わなかったんじゃないか。
もし彼女が働いていた美容院が「積極的にお客さまにしゃべりかけましょう」という方針だとしたら、それは彼女にとってつらい環境のはずだ。

今までいくつも美容院に通ったが、わたしは別に美容師さんにおしゃべりを求めない。
それよりも「前回と同じ感じで」とお願いしたときに、ちゃんと「前回と同じ感じ」にしてほしい。
接客の内容をメモに取っていた彼女だったら、たぶんわたしの希望通りに髪を染め、切ってくれただろう。
おしゃべりのサービスよりも「前回と同じ」を再現してくれるサービスのほうが、わたしにとっては優先度も満足度も高い。
実際、今まで通ったなかでいちばんよかった美容師さんは口数は少ないけれど前回どうしたかをちゃんと覚えていてくれて、毎回もっとよくしてくれる人だった。


「置かれた環境で咲きなさい」というが、わたしは「咲ける環境でなければ咲けない」と思う。
フリーランスだろうが職人だろうが会社員だろうが、仕事というのは人が関わる。
そして人は十人十色・千差万別、所変われば品変わる。

今いる環境をみずから飛び出たっていいし、今いる環境を変える方向で動いてみてもいい。
睡蓮は砂漠では咲かないし、サボテンは沼では育たないのだから。

あのゴッホだって、フランスでは売れなかったかもしれないけれども、もしアフリカで絵を描いていたら売れていたかもしれないよね。



今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが咲ける環境はどこでしょう。今そこにいますか?


『あたりのキッチン!』の詳細はこちら


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