昨年読んだなかで刺さった本3冊
断捨離熱が高まっていることはすこし前に書いた気も書いていない気もするのだが、身のまわりの「もの」をとにかく整理したい欲求に駆られている。
昨日も夜中に突然、本を整理したくなった。
夜中の変なテンションあるあるではなかろうか。
…なお酔っぱらっていたわけではない。
家にある本をずらっと眺めてあーでもない、こーでもないとしていたところで、ふと思い出した。
本当は2023年の振り返りとして「今年(2023年)読んだ本」を書きたかったことを。
年内のうちに書いておきたい別のことがあって後まわしにしてしまった。
というわけで昨年読んだ本で個人的によかったと思う3冊、いってみよう。
反応しない練習
僧侶の草薙龍瞬氏による1冊。
仏教の思想をすこし学んでみたくて、何冊か読んだうちいちばんすっと頭に入ってきた。
人間は反応の生きものであり、反応してしまうからこそ苦しむ。
苦しまないために反応をコントロールしましょうという内容。
こんなことを言っては元も子もない気がするのだが、わたしは「反応しない」のは無理だと思っている。
驚いたときにまばたきをしてしまうような反射的な反応も、やっぱりあるだろうから。
しかし反応してしまった自分に気づき、心を凪の状態へリカバーしていくことはできる。
この本には反応を小さく短くする具体策が書かれている。
あとやっぱり瞑想の効果は大きいのだな、と。
昨年からわたしもちょろちょろ瞑想を続けているのだが、今年も継続しようと思う。
噛みあわない会話と、ある過去について
辻村深月さんの短編集。
まあ後味の悪い作品が多かった。
いや人によっては「やられたら、やり返す」のスッキリ感が得られるのかもしれないが、わたしはそうは感じられなかった。
無意識に人を傷つけてしまったことというのは、誰しも経験があるだろう。
無意識であるから、本人から、あるいは人伝いに、相手を傷つけたと知らされなければ皮肉にも自分が気づくことはない。
ややこしいのは同じひと言であっても、相手や状況によって受け取られ方が変わることだ。
よく議論に上がるのが「がんばって」のひと言だろう。
「がんばれ」と言われて嬉しい人もいれば、言われたくない人もいる。
こちらがどんなに励ましのつもりで投げかけたとしても、逆効果になってしまうことがある。
先ほどの「反応しない」と同じように「人を傷つけない」というのもまた、なくしていくのは難しい。
できればなくしていきたいが、人と関わって生きている以上ゼロにはできないと思うのだ。
さりとて、言葉には、態度には、気をつけていきたいと、キュッと心が引き締められる1冊であった。
無自覚の残酷さが、磨き上げたナイフのように鋭く描写されているため2回目はしばらく読みたくない。しかしそれだけ印象に残る作品であった。
線は、僕を描く
複雑な過去を抱え、心のなかにある「ガラスの部屋」から出られない主人公が水墨画と出会い、世界とのふれあいを取り戻していく物語。
著者の砥上裕將さんご本人も水墨画家であり、活字を追っていても脳内には主人公や師匠が半紙に向かって手指・腕・体を動かしていく様子がありありと想像された。
水墨画の特徴は2つ。
墨以外の「色」を使わないこと。
そして「塗らない」こと。
墨に含ませる水の量を繊細に調節し、筆が紙に触れる圧力、時間からにじみ具合やぼかし具合を一瞬のうちに計算して描いていく。
「刻(とき)の絵」だなと感じる。
その「瞬く間」の時のなかで、対象物をよく観察して捉え、なにを描き、なにを描かないのか、あるいはどう描くのか、ばっさばっさと選び、切り取り、描写していく。
…時を失ってしまったような主人公とは真逆の活動なのである。
墨一色しか使わなくとも、ゴッホのような力強い作品を得意とする人、モネのような繊細な作品を得意とする人、あるいはピカソのように大胆な作品が得意な人と、個性が表れるからおもしろい。
類まれな観察力を持ちながら、師匠たちからの指導を受けて「自分の表現」を追究していく主人公のひたむきさと、ガラスの部屋から一歩二歩踏み出していく姿は、読んでいて清々しいものだった。
映画も気にはなっていながら観る機会を逸しつづけ、先に小説を読む運びとなってしまったのだが、小説から読んで正解だったと思う。
わたしの好きなあるキャラクターが、映画版には登場しないらしいので…。
活字が苦手な方は、コミック版も発売されているのでぜひ。
今年はどんなすてきな作品との出会いがあるだろうか。
ちょうど今、発注していたブックカバーが届いた。
…とてもいい。
たくさん本を読みたくなる、使い込みたくなるカバーだ。
どんどん読もう、これからも。
今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近読んでよかった本は、どんなお話でしたか?