気持ちよく差し出せる人でありたい
映画を観たい気分だった。
収納ボックスを開けると、ありゃりゃ。
買ったはいいが観ていないDVDがあるではないか。
『Laundry』
2002年公開と、今から20年ほど前の作品だ。
主演は窪塚洋介さんと、小雪さん。
なのだが、内藤剛志さんが演じるサリーがたまらなくいい。
以下、ネタバレ含みます。
サリーはやさしくないが、人はいい。
出会って間もないテル(窪塚さん)と水絵(小雪さん)に、「ふたりのことを気に入った」という理由で家も車もくれてやるんだから。
サリーは仕事柄、自宅で鳩を飼っているから鳩もついてくるんだけどね。
そして自分は「やりたいことはだいたいやってきた。だけど、まだやっていないことがある。結婚だ」
「しかし問題がある。俺はモテない。でも日本ではの話だ。だから海外で金髪デカパイと結婚する。そのために明日ここを発つ」と。
ヒッチハイクで本当に出ていってしまう。
なんて気前がよく、潔いのだろう。
映画じゃなくても、サリーみたいに気前の良い人ってたまにいる。
「そのかばんいいね」と褒めたら「おう、じゃあやるよ!」とその場でくれちゃう人。
旅行中、寒くて上着を借りたら「あ、それ返さなくていいよ。あげるわ。荷物減るし」ということもあった。
2年前の自分が恥ずかしくなる。
夏の終わりのちょっと蒸し暑い日。
飲み会の帰りにわたしは見てしまった。
友だちのワンピースに、大きなシミができているのを。
座っていたから気づかなかったが、どうやら月のものがきてしまったようだ。
とっさに「これ使えば隠せるだろうから」と、自分が羽織っていたロングカーディガンを渡した。
室内の冷房対策だ。外はまだ暑い。どうせもう帰るだけだし。
「ありがとうございます!洗濯して返します!」と。
そう、貸したつもりだった。
でも、あげてしまえばよかった。
「貸した」から、返ってこないのが気になる。
その後、彼女とは会っていない。いや会えていない。
何度か約束したのだが、互いにタイミング悪くリスケが続いてしまった。
そのままわたしは引っ越した。
もうカーディガンは返ってこないだろう。
返ってこないとわかっていたら、貸さなかったかもしれない。
お気に入りだったもの。
返ってこないカーディガンのことで、彼女を嫌いになりたくない。
そんな小さくみみっちい自分が、サリーを見て顔を出した。
人と貸し借りするのが苦手だ。
借りたら必ず返したい。
貸したら…
やっぱり「返してほしい」と思ってしまうので、貸すぐらいならあげてしまったほうが楽だ。
でも、あげるとなるときっと急にケチになる。
お気に入りのカーディガンをくれてやる気前の良さも、その日持っているバッグをあげちゃう潔さもわたしにはまだないもの。
これから住む家も決まっていないのに今住んでいる家を手放したサリーは、実に身軽である。そして自由である。
モノを持たない人が身軽なんじゃなく、モノを手放せる人が身軽なんだ。
それが誰かのためであれば、すてきなことだ。
明日わたしはなにを手放そうか。
2024年になにを置いていこうか。
誰かにあげられるものはないかな。
今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近誰かにあげたものは、なんですか?
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