ごちゃごちゃ is life『この春、とうに死んでるあなたを探して/榎田ユウリ』
生活感のない部屋に憧れる。物が少なくてすっきりとしていて家具とかラグの色が統一されているような、そんないい感じのシンプルな部屋。
でもたぶんそれは無理だと思う。なぜならごちゃつかせている色んなものが自分の生活であり、人生だから。
榎田ユウリ先生の本はBLの榎田尤利名義でいくつか作品を読んだことがあった。
でも一般文芸は初めてでどんな感じの本なんだろうと気になって図書館で借りてみた。
矢口と小日向は38歳のアラフォーで立派な大人なのだけど、中学生のころの担任について調べるためにかつてのクラスメイトの元を訪れて話を聞く。
それによって思春期特有の友達とのじめっとした距離感とか、内にこもった鬱屈した感情が見えてくる。
それでもそれがあまり嫌な味つけに感じないのは、あくまでも主人公や登場人物がすっかり大人になった地点からそれを語っているからだと思う。
全体を通して情景の描写も含みつつも文章のリズム感がよくて引き込まれた。
こういう文章が書けるようになりたい~!文章が上手い~!
矢口の家へ訪れたときにあまりにも家具や日用品が少ないことに対して小日向と矢口のやりとりが特に好き。
そう、ごちゃごちゃしている生活が続いているのが人生なんだよなあ。
自分がわりと理屈をつけて色んな事物をすっきりとカテゴライズしたがるタイプ、どちらかというと白黒思考ではっきりさせたがりの部分があるので、このやり取りは刺さった。
小日向みたいな性格に憧れる。私は圧倒的に矢口タイプなのだ。
ごちゃごちゃさせたままにするということは、ちゃんとそのごちゃごちゃに向き合うことを考えてないとできない。
向き合うことを怖がって切り捨ててしまえば楽だから。
いまちょうど自分の部屋を見回してみて、たしかにスッキリしているとは言えない。
整理整頓苦手だし!
PCまわりもペンやらメモやら本やらがあるし、好きなキャラの小さいアクリルスタンドまで置いてある。
本棚も色んな種類が並んでいてコミックスもある。
でもこのごちゃごちゃ感がとても好きだしリラックスできる。
自分の部屋だなあと思う。
だから多少の部屋のごちゃごちゃはいいかなーなんて、ね。
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