バカ野郎!ひとりにしないでよ。アメリカで夫に先立たれた妻のバイブル(15)
残された遺族の不安と自立
夫が突然死してから10ヶ月が経ちました。
あの日から……睡眠障害・自律神経失調障害・過食性障害・心身不良・不安症候群など今まで経験したことのない障害に襲われています。
時々、亡くなった人はいいよなと思ってしまいます。残されたものは、どんなに辛くとも毎日生きなければなりません。
これが現実です。
我が家の内情ですが、私自身は夫が生きていた2年前にセミリタイアしました。
「俺はあと何年か働いてからリタイアするけど、君は何も心配せずに好きなことをして」
「はーい」能天気な私でした。
時間を持て余した私は、彼の出張に一緒について行き、見知らぬその街を観光したり、彼の休暇を利用して旅行に出掛けたり…本当に充実した日々を過ごしていました。
それだけではありません。彼は、誕生日にはピアノ、バレンタインには車をセミリタイアを祝ってプレゼントしてくれました。「好きな車を選んでいいよ。君はこれまでたくさん頑張ってくれたから、セミリタイアのプレゼントね」とディラーへ連れて行ってくれたのでしたが、貧乏性の私は、新車は勿体無いので2年落ちの中古車を選びました。彼は苦笑いしながらも、どこか誇らしげでした。
若い頃には苦労した時期もありましたが、堅実な日常の中にもお互いを思いやる潤いのある今の生活に私たちは満足していました。そして、永遠に続くものなのだと思い込んでいました。
しかし、夫が突然亡くなり…生活が一転。
年金が支給される年齢でもありませんし、これからの生活を自分自身で支えなければなりません。
お金の問題は、現実問題であり、死活問題です。悲しんでいる時でも支払い請求書は送られてきます。あんなに楽しかった薔薇色の生活が一転にして切なさに変わります。
生活するため、私は会社を立ち上げ賃貸不動産を購入しました。この不動産投資については後でまた詳しく書きますが、入ってくる家賃で収入を確保することにしたのです。このインフレを乗り切るために大きな決断も最速でしなければ投資チャンスを逃してしまいます。
お金が絡むと周りの目も変わります。夫が亡くなった時、無職の私がどのようにこれから生活するのかと噂し、さーっと引いていく人もいました。それを喜んでいるようにお金に困窮するだろうと噂を広める人もいました。
このような時ほど、人の本性が現れるのですね。
「人の不幸は蜜の味」なのでしょうか。
ショックは愛する人を失った事だけではなく、その後の生活が一転する現状にもあるのです。
重い現実。
当人しかわからない目に見えない重圧は、この世の苦行です。