今日ときめいた言葉33ー栗山監督の言葉「ダルビッシュ、申し訳なかった」
(写真はfullcount.jpより転載)
にわか野球ファンだから、メディアに出たことしかわからない。当然、映像で見る大谷選手のパフォーマンスは、一番輝いていたし、彼の発する言葉だって多くの人々をときめかせた。
でもここでダルビッシュ選手の功績を書かないのはフェアじゃないだろう。なぜ栗山監督がダルビッシュ選手に謝罪の言葉を述べたのか。夜のニュース番組に出演した栗山監督がチームの舞台裏を語ったときに、その謝罪の意味を理解した。
ダルビッシュ選手は、チームのキャンプ初日から参加し、若手の投手陣にアメリカ野球の特徴や自身が参加したWBCの経験、自分のスキルを伝授したり、アドバイスしたりとチーム全体をまとめ上げることにそのエネルギーの多くを使っていたそうだ。
決勝戦では、自身の登板があるにもかかわらずアメリカのバッターの特徴について若手投手に説明していたそうだ。だから自分に対する調整の時間が十分ではなかった。その上、調子もあまり良くなかったようだ。だから栗山監督の謝罪の言葉は、そこまでしてくれたダルビッシュ選手に対する「感謝の言葉」でもあるのだ。
映像に映るダルビッシュ選手の時間だって、二刀流の大谷選手と比べれば断然少なかったし、メディアの取り上げ方も大谷選手のような華やかな扱いはしていなかったと思う。
確かに大谷選手は稀有な能力の持ち主だし、人々を魅了してやまない。でも日本チームが勝利をつかみ取るために、こんな風に力を尽くした人がいたということにもっと思いを致すべきだろう。
それは、野球がチームプレーだからだ。こんなチーム力を短期間で作り上げるために尽力したダルビッシュ選手に対する評価、注目度、認知度が低すぎないだろうか。もう一人の勝利の立役者としてダルビッシュ選手に賛辞をおくりたい。
そして、それはダルビッシュ選手ばかりではなく、大勢のスタッフや関係者、普通我々の目には映らない人々が、陰に大勢いたことを思い起こすべきだろう(追記 栗山監督はこういうスタッフたち一人一人に電話をして協力を要請したそうである。スタッフコメント)
そして何よりも、そんなダルビッシュ選手を見つめていた栗山監督の目。選手に全幅の信頼を寄せ、任せるという度量の大きさ(追記「信じる力が誰よりも強い人です」白井ヘッドコーチ コメント)
朝日新聞(2023年3月21日付)に栗山監督が自身について語った記事がある。3歳年上の原辰徳巨人監督に憧れていたそうだ。原監督は輝かしい球歴の持ち主だが自身は「一流選手になれなかったトラウマがある」と語っている。
でも誰よりも野球が好きであること、そして監督就任後は、選手のためになるかどうか、この一点に信念を貫いたという。
「僕はそんなに能力がある人間ではない。ただ唯一できるのは、誰よりも情熱を持ってやること。できることはそれしかない」
こんな栗山監督のひたむきさが選手を動かし、勝利へと導いた原動力にもなったのではないか。だからダルビッシュ選手も自分の時間を割いてまで献身したのだろう。「ダルビッシュ・ジャパン」と言ってもいい!