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【人らしい学び方を学ぶ】スキーマとは
スキーマは、教育活動をデザインするうえで非常に強力なツールです。生徒の理解を深めるだけでなく、自己成長や他者理解にもつながります。この理論を現場に応用し、生徒の学びをより効果的にサポートしていきましょう!
スキーマとは何か?
「スキーマ」とは、心理学や学習科学の分野で用いられる概念で、人が世界を理解し、情報を整理・解釈するための認知的な枠組みを指します。スキーマは、過去の経験や知識を基に形成され、次のような特徴を持ちます:
情報の整理と予測:スキーマは、新しい情報を既存の知識に統合し、理解を助けます。
省エネルギー的な認知:新しい状況に直面した際、すべてを一から分析するのではなく、スキーマを使うことで迅速な判断が可能になります。
柔軟性と更新性:スキーマは経験を通じて更新され、学習や成長によって進化します。
例として、子どもが「動物」というスキーマを持つとします。このスキーマには「動く」「生きている」「餌を食べる」といった情報が含まれており、新しい動物を見たときにそれを理解するための基盤となります。
教育現場でスキーマを活用する意義
教育現場でスキーマを理解し、活用することで、次のような学習効果が期待できます:
既存のスキーマを活用した新しい学び
新しい知識を教える際に、すでに生徒が持つスキーマと関連づけると、理解が深まります。例えば、科学の授業で「光合成」を説明する場合、植物の成長に必要な条件(光、水、二酸化炭素)を既存のスキーマとして活用することが効果的です。誤ったスキーマの修正
生徒が持つスキーマが不完全または誤っている場合、これを修正することも重要です。例えば、「全ての動物は草を食べる」という誤ったスキーマを持っている場合、肉食動物の具体例を示して矛盾を解消します。スキーマ形成を支援する活動
経験や探求的な活動を通じて、生徒が新しいスキーマを形成できるようにします。例えば、実験やフィールドワークを通じて、生徒が「エネルギーの循環」についてのスキーマを構築することができます。多様なスキーマの構築を促進
生徒が異なる視点や文化的背景を理解できるように、多様なスキーマを築く支援をします。これにより、偏見を減らし、多様性を受け入れる態度を育むことができます。
教育現場での具体的な実践例
1. アンカー活動を用いた導入
新しい単元を導入する際、生徒が既に持つスキーマを引き出す質問や活動を取り入れます。
例:「地震の仕組み」を学ぶ前に、「地震が起きたらどうなるか知っていることを書き出そう」という課題を出す。
2. スキーマを拡張する課題設計
授業では、既存のスキーマに反する情報や新しい観点を提示します。
例:地理の授業で、「砂漠でも雨が降ることがある」という事例を紹介し、生徒の「砂漠=乾燥地帯」というスキーマを拡張します。
3. ディスカッションやグループワーク
生徒間で意見を交換し合うことで、自分以外のスキーマに触れる機会を作ります。
例:「リーダーシップとは何か」というテーマで議論し、さまざまなスキーマを比較させます。
4. 誤概念の明確化と修正
誤ったスキーマを特定し、修正するプロセスを設計します。
例:歴史授業で「中世=暗黒時代」という誤解を、文化や技術の発展例を通じて修正します。
注意すべきポイント
スキーマは固定的ではない:生徒が既存のスキーマに固執しないよう、新しい経験や視点を提供することが重要です。
過負荷を避ける:スキーマを活用しつつも、あまりにも多くの新しい情報を一度に与えると混乱を招く可能性があります。
個別性を尊重:生徒一人ひとりの背景や経験に基づいたスキーマが異なるため、個別のサポートが必要な場合があります。
思うこと
授業を行うときにグループで既有知識を整理し直すことで、自己調整的に集団から学ぶ姿勢が見られ教員がすべてを教えるのでなく、自分たちで課題をクリアしようという流れができてきました。「スキーマ」という概念を持ちながら教育することは、昨今のSTEAM教育の基盤となる【構成主義】にもつながっていくので忘れたくありません。