「心身症」って、ナニかしら?
どうも、「世の人が何に興味をもつか、まったく読めない」心療内科医あもうです。
直近は、カクレウオに大興奮し、ワニを捌くことへのカッコよさを画像付きで力説したらフォロワーさん減りました。(Twitterあらため、X下手くそ芸人)
今回は「心身症」について、お話ししようと思います。
よく知らない言葉を調べようと思った時に、人はどうするか。
私はインターネット老人会所属なので、10代からネットスラングでこう言われて育ちました。
「ggrks」
(「わからないことは、その場で誰かに質問するのではなく、Googleで検索するなど、自分で調べる手間を惜しんではいけませんよ」の意)
なので、本日(2023年8月8日)「心身症」とGoogleで検索すると、何がヒットするのでしょうか。
NCNP病院 国立精神・神経研究センターのHP に辿りつきました。
なるほど、わかりやすい説明です。(個人的には「一般的治療では改善困難」というのが、若干「え、何それ怖……」感がありますが、心療内科医による専門的治療が奏効するのは事実です)
けれど、この説明でも「一般的な中学生が理解できるか」と言われると難しい印象なので、もう少しわかりやすく説明したいと思います。
まずお伝えしたいのは、心身症とは「病名」ではなく、「病態」だということです。
今、思ったでしょう。「……何がちゃうねん」と。
私も心身医学を学びはじめた15年くらい前に、まったく同じことを思いました。というのも、日本心身医学会における心身症の定義は、以下のようになっているからです。
これを初めて読んだ私(初期研修医2年目・心療内科医になりたい)のひと言目。
「…………はぁ?」
心身医学が理解できるようになった今だからこの定義が呑み込めますが、この定義の一番良くないところは、「どういう状態を指しているのか、まったくイメージがつかない」ことだと思っています。(あもう個人の意見です)
こういうわかりにくい定義の罪は、学生教育に携わるとわかります。私が教える側の立場として慣れない頃、この説明を医学生・心理の学生にすると、もれなく皆の目の光が消えました。経験から学んだ私は、説明の方向を変えました。
「心身症」というのは、身体の病気のカテゴリーだと理解してください。
病名というのは、例えば「胃潰瘍」、「高血圧症」、「頸肩腕症候群」といったように、「その症状に対して、医師が診断してつける診断名」を指しますが、心身症は「その病気が起こった背景に、心理社会的因子が影響したもの」に対して、「胃潰瘍(心身症)」というように診断名の語尾にカッコ書きで記載されます。(これ、多分医者もあんまり知らない話)
心理社会的因子についてわかりやすく申し上げると、ストレスになりそうな出来事です。
例えば「受験前だ」とか、「繁忙期で1ヶ月休みなしで仕事している」とか、「上司にパワハラ受けた」とか、「近しい人が亡くなった」といった、心身に負担がかかるような出来事を指します。
つまり、腸炎後に下痢が数ヶ月にわたって遷延している場合であれば、診断名は「下痢型過敏性腸症候群」になりますが、「受験前のストレスが要因で下痢を繰り返すようになった」ことが明確であれば、「下痢型過敏性腸症候群(心身症)」になります。
上記を踏まえて心身症の定義をわかりやすく噛み砕くと、
「身体の病気の中で、その経過にストレスがかかるような出来事が密接に関係した、器質的(臓器そのものの異常)ないし機能的(臓器の運動やホルモンの異常)な障害を指す。 ただし、神経症(不安障害)やうつ病(気分障害)など、他の精神障害に伴う身体症状は除く」
という具合になります。
(これでもわかりにくかったら、コメント欄でもXでも指摘をください)
心身症の具体例は、下記のnoteにササノさん(仮名)のケースを紹介しました。彼の場合、診断名は「高血圧症(心身症)」という形になります。
「心身症」という言葉は独り歩きしやすいので、まとめてみました。
こんな感じで、心療内科領域で「○○ってどういうこと」 ということがあれば、ご質問をお待ちしています。
(皆さんの健康と安全を守るためにも、個人の病状についてのご相談は受けかねます)
皆様、暑さに気をつけてお過ごしください。
追記【2023/08/15】
心療内科きってのインフルエンサー、内科医たけお先生が、ちょうど心身症をテーマにお話しされていました!
ご厚意で、ポッドキャストのリンクを貼らせていただきますので、ぜひ聴いてみてください。
興味シンシン♪
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