ひとりぼっちメガネ
メガネ屋さんでメガネを買ってもらった。
小さい頃から有難いことに視力はずっと良くて、未だに裸眼で両眼1.0は確実にある。
(視力検査にはものすごい気合を入れて挑むので記録更新するといつも嬉しい)
妹や父親は目が悪いので、よく一緒にメガネ屋さんに行くことがあった。
そのたびに「私はこれらのメガネを買うことはないんだろうな」とずっとそう思っていた。
いろんな色や形のメガネがたくさんあって、選ぶだけでも凄く楽しいのに、私はきっとずっと買えないのだろうと。
さみしかった。そりゃメガネなしで生活できるんだから買わなくて済むならそれでいいんだけれど、買えないものがあるってことがさみしかった。
けど今年のクリスマス、思いきってメガネ屋さんで、並んでる中からひとつ黒縁メガネを買ってもらった。
もちろん度は無しの伊達メガネ。仕事で使えるかなと思ってブルーライトカットだけ。
目は良いのにメガネを買うなんてもったいない!とも思った。けど、メガネをかけることで、薄くて嫌いな自分の顔がちょっと好きになれるし、なによりごきげんになれる。
どのくらいごきげんかというと、川口春奈のラーメン動画の真似をして、1人でメガネかけてラーメンを食べに行くくらいだ。
休日に1人で出かけることがよくある。
ガッツリ作業をしたい時とか、ちょっと心を落ち着かせない時とかに、好きな服を着て好きな化粧をして好きな場所にフラッと出かける。
人と待ち合わせずに乗る電車で、わざわざ急行に乗り換えず各停のままのんびり目的地まで行く瞬間がすごく好きだ。
心にゆとりが生まれるし、自分の人生は自分で楽しくするんだな、と改めて気づける。
だから割と映画も舞台もラーメンでもどこにでも1人で行くことが多い。
1人で出かけると、ずっと思考の矢印が自分にしか向いていないので脳内で独り言が止まらなくなる。あの店はやっぱいいよね、この道の方が近道だな、とかそういう細々した考えごとを自分の中で大量に消化するから、帰宅した途端にどっと疲れる。
その疲れさえも心地よくて、やっぱり定期的に1人の時間を確保しないとストレスが溜まる。
そんな私でもやっぱり、1人であちこち歩いていると、どうしても人目を気にしてしまうことがある。なんとなく行動しにくい場所がある。けど、メガネがあればちょっと気にならなくなることに気がついた。
黒縁な枠の分視野が狭くなるからか、ガラス1枚分の隔たりができるからか、メガネをかけている時の自分はちょっと強くなった気がする。
キノコを手に入れたマリオみたいに。ちょっとひとまわり大きくなって、前に進める気がする。
一生ご縁のないと思っていたモノを手に入れて、またひとつ強くなれた。ごきげんになれた。
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