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詩的実験

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【詩的実験】を集めたものです。
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2024年4月の記事一覧

【詩的実験】愛の教会

【詩的実験】愛の教会

アムールの土砂降りにただただ狼狽える
その場ではわたしは啞である
どうしようもない幸福が諦めとともに襲ってくる

チャコールグレーの日射
満ち足りないと神父は嘆く
救済と落葉が同時に眼前にあらわれる

盗まれた神灯が街を豊かにする
わたしはその恩恵に預かる
ひとりだけ苦しみもがくものがいる

神父が破顔した
こどもたちは泣いていた
教会に恭しい鐘の音が鳴り響く

【詩的実験】ほつれた脳内

【詩的実験】ほつれた脳内

頭痛のような眠気
どうしようもない天からの啓示
わたしは瞼の裏にユートピアを持つ

悪夢が悪夢のような顔をしていない喜劇
どうすればあなたと健やかな眠りにつけるのか
諦めに似た諦めが心のなかでゆらゆらする

もう何も考えなくていいとあなたは言う
神様はわたしに天罰をあたえる
ああ! きっとこのままどこにも行けない

【詩的実験】新しい朝

【詩的実験】新しい朝

眠気の辞書はだれにも見つからない場所に隠している
眼を擦りながら太陽と月の衝突を再確認する
枕と珈琲の朝は冷たく忙しい

薄志弱行の決意
不規則なリズムで揺れる脳はまだ夢と現実を区別できない
ひっそりと立つ富士山がわたしをくっきり惑わす

澄んだ狂気が血液に充満する
ベッドのぬくもりは靴の中にだけ残っている
気味の悪いポストは今日も朝の匂いを浸す

あなたが向こうから歩いてくる
ポッと灯った燈火の

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【詩的実験】愛の技術

【詩的実験】愛の技術

浄玻璃がまぶたの重さに変わる
わたしは酒の瓶を持ってあなたの帰りを待っている
きっと、肋骨にできた空白は酒をもってしても埋まらない

雲の鳴らすメロディは美しいに決まっている
わたしは密かに地球の裏側にまわりこむ
記念日はわたしにとって空疎なものでしかない

噓を醸し出す水夫は地獄の扉の鍵を持つ
あなたはその水夫の面貌に魅力を感じ、水夫の手を取る
あなたと水夫は楕円軌道を描く

夜明けの街中でユラ

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【詩的実験】季節の桜

【詩的実験】季節の桜

浮き足だった鏡にだけ桜の花弁は写る
その鏡の裏側には吐瀉物の美学が語られている
通り過ぎていくジリ貧の男はその鏡の存在に気付かない

池のほとりに絶縁体の真珠がひっそりと佇む
それは電気によって照らさる
月はただただそれを見守る

行列は永遠の川に接続する
わたしはその行列の往来のなかに立ちすくむ
杞憂の言葉が頭の中でグルグルする

掌に映し出された桜は桜のような顔をしている
あなたはその桜に刹那

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