a.k.a 阪元憂哉 | お手柔らかにお願いします。

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    杞憂を願う掌

    題名を含めて原稿用紙一枚に収まる物語の『掌編小説』、詩に憧れ詩を目指して書いた文章である『詩的実験』と題したものをそれぞれ十二編ずつ収めたものになります。 杞憂を願う掌 / 阪元憂哉 目次 ・はじめに 《掌編小説》 ・雨の少女 ・不思議なバー ・寂寥の旅立ち ・恋の病 ・青空の下で ・穢れと審美眼 ・愉快 ・喫茶店に現れた男 ・ミニカーの少年 ・いつもと違う朝 ・現と夢の隙間 ・救いの手 《詩的実験》 ・海 ・まどろみのなかで ・腐った心 ・逃走 ・孤独の古本屋 ・生の呪文 ・母への愛の詩 ・倒錯した心 ・地球外生命体に関する仮説 ・ひとつの隧道 ・薔薇 ・再会 ・あとがき -------------------- サイズ:A5 様式:ホッチキス止め ※手作業でホッチキス止めをしているため、多少のズレはご了承ください。
    825円
    書店 憂
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    題名を含めて原稿用紙一枚に収まる物語の『掌編小説』、詩に憧れ詩を目指して書いた文章である『詩的実験』と題したものをそれぞれ十二編ずつ収めたものになります。 杞憂を願う掌 / 阪元憂哉 目次 ・はじめに 《掌編小説》 ・雨の少女 ・不思議なバー ・寂寥の旅立ち ・恋の病 ・青空の下で ・穢れと審美眼 ・愉快 ・喫茶店に現れた男 ・ミニカーの少年 ・いつもと違う朝 ・現と夢の隙間 ・救いの手 《詩的実験》 ・海 ・まどろみのなかで ・腐った心 ・逃走 ・孤独の古本屋 ・生の呪文 ・母への愛の詩 ・倒錯した心 ・地球外生命体に関する仮説 ・ひとつの隧道 ・薔薇 ・再会 ・あとがき -------------------- サイズ:A5 様式:ホッチキス止め ※手作業でホッチキス止めをしているため、多少のズレはご了承ください。
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【散文】杞憂を願う掌

 目を凝らし掌に力を込めて、砂で作った山を何度も固める。辺りが暗くなってからもう長い時間が経つ。海の上には満月が浮かんでいる。  電話のために堤防を越えて向こう側に行った姉がなかなか戻って来ない。相手は父親らしく、声色から穏やかな話ではないことは確かだった。私はどこか落ち着かない心を、砂で作った山を掌で固めることで紛らわせた。  腹這いになり、視線を砂の山より低くして砂の山の上に満月を浮かばせてみた。山の大きさに比して月がとても大きく、極めて綺麗である。この満月が今の不安

    • 【掌編小説】地下へ迷い込んだ女

       地下の一室に、今日も人が漂っている。大半の人は酒か煙草を片手に、もう片方の手にはスマホを持ち、暗い顔をそこに落としている。次のバンドの演奏の準備をするこの時間、人々はそれぞれの時間を退屈そうに過ごしている。女は会場の後ろの方で、両手で持つ、氷が解けて薄まったハイボールを見つめていた。そこへ急に、男がやってきて「やあ、今日はどのバンドが目当てで来たの?」と、馴れ馴れしく女に声を掛けた。「……上の看板をたまたま目にしてふらっと入っただけなので、どのバンドが目当てとかは……」「そ

      • 【詩的実験】ナチュラル・ビーナス

        曇天の空がひろがる広場に たくさんの人がはしゃいでいるなかに わたしとあなただけの舞台が設置された 足下に 淡いスポットライトが照らす会話劇 暗闇のなか 二人で微笑み合う黙劇 わたしはあなたに 何か伝えたいことがあるはずなのに 言葉にできずにいる 一滴の雫のあなたが わたしの海に落とされる 夜 永遠で一瞬のときを あなたはわたしに差し出す わたしはあなたの掌に触れようとするが どうしてもできない 幽霊のようなあなたは わたしをずっとわらい続ける

        • 【詩的実験】秋の午後

          ベランダに出て確認する秋は 祈りと泡の金木犀   秋気をさまよい歩く ずっとこうしていたみたいに 陽が翳り だれかの口笛が聞こえる 四辻にさしかかり どちらへ帰るのかわからなくなる   自宅の灯りが 冷たい手をあたためる ふっと さっきまで外にあった寂寥が どっと 今わたしに襲う   毛布にくるまり ぬくもりでまどろむ 夏の魔物に見守られて ここは秋

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        【散文】杞憂を願う掌

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        記事

          【掌編小説】紫色の空

           女はビルの非常階段に出て、煙草に火をつけた。女にやっとのやすらぎのときが訪れた。時は夕暮れ時で、ビルの隙間から見える空は紫色を呈し、幽玄な世界がそこにはあるように女に思わせた。女は、朝からの長い長い時間を霞ませるように、煙草のけむりを吐いた。朝からの時間はせわしなかったが、それに反して、ぼんやりとした人生に何の意味もない時間であった。なので、女はせめて、煙草のけむりでその時間を曇らせてしまいたかった。こんな時間を過ごすくらいなら、朝から喫茶店で好きな小説をひたすら読んでいた

          【掌編小説】紫色の空

          【掌編小説】輝きの残り香が漂う場所

           ここは昔栄えたが今は廃れてしまった地方都市。私はこの街が好きで時々訪れる。抜け殻となった煙草屋や廃墟と化した映画街。それらに私はロマンを感じずにはいられない。  この街を歩きふと目を閉じると、栄えていた当時の人々の声が聞こえてくる。眩しい白熱電球の灯りが目を焼く。煙草らが入り混じった臭いが鼻に香る。目を閉じれば、いつだってその時代のその場所に浸ることができる。  この街の、とある喫茶店に一度訪れた記憶がある。カウンターには新聞を広げた男が座っていて、その新聞の日付は一九

          【掌編小説】輝きの残り香が漂う場所

          【掌編小説】大雪の外

           外は大雪である。私は初めて訪れた喫茶店でひとり、本を読んでいた。天気予報では雪が降る可能性があると言っていたが、ここまでの大雪になるとは知らなかった。窓の外の音は聞こえないが、窓から見える外の人々の様子が少し慌ただしいので、外が騒がしく感じる。その分、ジャズのBGMが流れるこの喫茶店の静謐さが増しているようであった。  気付けばもう夜の十時である。辺りは雪の白さで夜の十時とは思えない明るさである。雪で覆われた外の世界からこの喫茶店で守られている自分に、少しばかり陶酔してい

          【掌編小説】大雪の外

          【掌編小説】とある古書店での出来事

           私の家の近所にとある古書店がある。この古書店はとても狭く、置いてある本の数も少ないのだが、「あれ、こんな本があったのか」と毎回思わせてくれるからおもしろい。新しく仕入れたのか元々あったのかわからないが、いつ訪れてもその驚きは必ず用意されていた。  私はこの古書店にこの初夏から通うようになった。ただ夏の後半、酷い風邪をひき、長期間訪れない日が続いた。季節は秋になった。  久しぶりにこの古書店に訪れると、いつもいる店主さんではない人がレジにいた。相変わらず初めて見る新鮮な本

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          【随筆】泉鏡花「白い下地」を読んで

           江戸から明治にかけて、よく使われた慣用句に「色の白いは七難隠す」というのがある。女の肌が白いのは、少しくらい醜くても美しく見せる、という意である。この言葉はその時代に大っぴらに口にしても問題がなかったように思われる。しかし、現代においてはこんな言葉は一蹴されてしまうだろう。多様性の名のもとに。私は日本史に詳しくないから当時のことは推測でしか言えないが、そんな言葉が横行する当時、肌の白さは先天性な性質であるとある種開き直っていて、肌の白くない者はさほどコンプレックスを抱えてい

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          【詩的実験】神経症

          畳なわる笑い声が ぼやぼやと耳の中に拡がり 飛び交う話し声が はらはらと頭の中で消失する わたしはどっちつかずで 曖昧な顔しかできなくて つまらない そんなわたしがつまらない  それでもひとのぬくもりを求めてしまう わたしの心は未熟である 未熟ゆえに ひとのぬくもりさえも捕らえられず それでまた求めての繰り返し 大切なものを愛せるつよさがほしい そのための 空腹の耐久 くすりを多量摂取しながらの

          【詩的実験】神経症

          【掌編小説】色は匂えど

           窓を開けると、寒気が私の部屋の中に吸い込まれてきて、それが私の顔をかすめ、顔に冷水をかけられた心持ちになった。だが、やはり顔に触れられたのは液体ではなく気体で、独特でいて哀切な匂いを運んできた。外の空気が季節はもうすぐ冬であることを教えてくれている。空を見ると、雲一つない青空で、この広い空に太陽が一つ圧倒的な存在感で、でも孤独を感じさせるような寂しさで居座り、私の家の庭を照らしている。冬になりかける時の光の中に見える土の色の麗しさを形容したいといつも思うのだが、どうしてもで

          【掌編小説】色は匂えど

          【詩的実験】父方の祖父母

          二〇二〇年の正月に 父方の祖父母に一人で会いに行った 一人で会いに行くなんて いままでなかった なぜ行こうかと思ったのか もう忘れてしまった 祖父母はわたしたち孫と会うと いつも同じ話をする 祖母に関しては ぼけてはいないが わたしに いつまでも子供のように接して 祖母のなかでは わたしは中学生から成長していないようだ いつものように同じ話をする祖父母が ひとつ いつもと違う話をした 「おじいちゃんも仕事を辞めたから 二人でヨーロッパへ 旅行に行こうと思ってるんだよ」 祖

          【詩的実験】父方の祖父母

          【詩的実験】家から駅まで

          熱と湿気が同時に襲う八月下旬 仕事のために駅まで歩く 少し歩いただけなのに シャツの胸の部分には 汗が大きく浮き出てきて もううんざりだ 小学生は こんななか運動をするのか ときには泥だらけになって ソックスは汗臭くなり わたしにもそんな時分があった そのときのこころなど忘れて こんなにもちっぽけになってしまった 駅まで歩くわたしの頭の中はもう 冷房が効きすぎるほどに効いている 電車の中で涼んでいる

          【詩的実験】家から駅まで

          【掌編小説】永遠の夏の早朝

           夏の早朝の浜辺の波打ち際を歩いていた。太陽はすでに昇り始めていて、少しの靄がかかり仄明るい。辺りはほとんど誰もおらず、居たとしてもその人と私とは違う時間が流れていて、それぞれが心地のよい孤独を感じている。  私が歩いてゆく方向に一つの大きな朽ち果てた流木があり、そこにおじいさんが座っている。私が会釈をして通り過ぎようとすると、「ちょっと」とおじいさんは手招きをしながら言い、私を自分の横に座るよう促した。私はおじいさんに従い、隣に腰を掛けた。おじいさんはずっと黙っている。私

          【掌編小説】永遠の夏の早朝

          「杞憂を願う掌」

          (2024/09/17 修正) はじめに 私は小さいときから長い文章を書くのが苦手でした。中学生のころ、学校でよく講演会が行われて、その後、必ず講演会の感想を書かなくてはなりませんでした。先生は「最低三行は書きなさい」と毎回言うのですが、私は三行さえもいつも苦労していました。周りの同級生を見てみると、すでに十数行書いている人がいたりするのです。私はいつも最終的に二行と三文字程度を苦し紛れに書いて提出し、何とか乗り切っていました。  時は経て、ある程度は長い文章を書くことがで

          ¥500

          「杞憂を願う掌」

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          【掌編小説】ミニカーの少年

           午後四時。デパートのおもちゃ売り場で少年がとあるミニカーに釘付けでいる。三十分以上は見続けていた。迷子かもしれない、と思った店員が「親御さんは?」と少年に訊いた。少年にはその声が聞こえていないようで、ただただそのミニカーを見つめ続けている。店員はもう少し少年の様子を見ることにした。  突然、少年は店員に駆け寄り「あれは車じゃない。なんでそんなものがあるの?」と訊いてきた。「どうして車じゃないと思うの?」と店員は答えた。「……店員さんにはわからないの?」「ごめん、わからない

          【掌編小説】ミニカーの少年