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近況



退勤後ビルを出て、行き交う大勢の人々にぶつからないよう避けながら駅に向かう。


仕事で使っているオフィスのカードキーを、
駅の自動改札機に通した瞬間、大音量の通行不可音が鳴った。
スーツを着た仕事終わりの大量のサラリーマンをせき止めてしまったところで、
ボーッとし過ぎている自分に喝を入れる。

電車に乗って、カバンの中のイヤホンを探していると、
職場の人から貰ったお土産のクッキーが袋の中で粉々になっているのを確認する。
食べることが大好きな私は、
粉々のcookieでも受け入れる。


最寄り駅に到着する。
私の家の最寄り駅は、沿線の中でも特に多くの人が降りてゆく。
先程まで同じ車内で時間を共にした皆が、
それぞれの帰路に向かい、一気に散らばって行く様子はいつもあっけなく感じるとともに、
これだけの生活の数があるのかと、しみじみと感じたりもする。


帰宅し、ポッドキャストで30代OL2人の戯言ラジオを聞きながら、冷蔵庫の余り物で夜ご飯を作る。

お茶パックを入れておいたヤカンが、香ばしい香りととともに、プシューーーーと鳴る。
気づいた時には遅く、ヤカンから茶色の水が溢れてしまって、五徳の周りを布巾で吹く。

よくうっかりしてお茶を吹きこぼしてしまう。
ちゃんと見ていなくて忘れているともちろん吹きこぼれるし、ちゃんと見ていても吹きこぼれてしまうときもある。

昨年は喜怒哀楽に関わらず、
感情が自分の思いとは裏腹に、吹きこぼれてしまうことが多い1年だった。
今年も始まってもう2ヶ月になるのだが、
ヤカンのお茶も、自分自身も、
こぼさないように過ごせているかどうか微妙なところではある。


聞いていたラジオの中で、
年々、「1日」や「1週間」や「1ヶ月」が過ぎるのが早く感じるという話が出た。

時間の流れを遅く感じる方法があると、ある学者が言っていたようだ。
それは、とにかく1日を充実させること。

色んなことをするということはもちろんだが、
普段とやっていることは同じでも、
その事実のディテールの部分まで、
丁寧に拾い上げるような感じ方を意識することで
1日の充実度が上がる。

そうすることで、今日はあんなこともこんなこともできた!(こんなに多くのことをして、感じることが出来た=体感時間が長くなる)となるのだという。


それができていなくて、
1日が短く感じてしまっているのだとしたら、
かなり良くない状況な気がする。


凝りもせず、一喜一憂だけを繰り返す夜を過ごし続けて、気づけば本当に毎日心だけが忙しない1日を過ごすのはもうやめにして、
朝のトーストが焼ける匂いに柔らかな幸せを感じたり、
真新しいことに目を向けたり、
そういう生活にしていきたい。




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