「ハレとケ」のハレの残り香
何か行事で特別な料理を食べたその時は勿論嬉しいのだけれど、
翌日かもしくは数日間ハレの気配が残っているような、
日常のケハレに溶け込んでいるような時間がとても好きである。
ハレの日、ケハレの日、ケの日は、
すぐに切り替わるものなのでなく、
グラデーションのような感じで移り変わりを見せているように感じる。
お正月には毎年母にならって、
お節を作る。
大きなお重3段に沢山詰め込むので、三が日で食べきれないこともある。
数日間はおせちの和風おかずと、普段のケハレの食事が一緒に出てくるようなハイブリッドご飯になる。
大晦日に作ったお雑煮で使いきれなかった、
お餅が数日間出てくるのも、飽きる人も多いと言う。
でもお正月の残り香を楽しめるし、
ハレの日が延長されたボーナスタイムのような気がして、
私は好きである。
クリスマスのローストチキンが翌日以降にちょっと出てくるのもとても好き。
夏といえば、土用の丑の日にちなんで
昨日は鰻丼を夜ご飯に食べた。(1日早めだけど)
うなぎの蒲焼ってなんでこんなに美味しいのか本当にわからない。
違う魚で全く同じ味付けで蒲焼を作っても、
当然圧倒的に鰻が美味しい。
ご飯にタレを掛けておいてから、蒲焼を乗せる。
その上にかいわれ大根と山椒を添える。
鰻丼は山椒が1番美味しく食べられる料理だとも思う。
蒲焼タレは結構こってりしているけど、
そこに山椒の香り豊かなピリ辛があることで、
少し爽やかになり、味に立体感や彩りが出るのも楽しい。
少し多めに買っておいた鰻がやはり余ったので、
翌日の仕事に持っていくお弁当箱に入れることにした。
そういえば実家でもお母さんが
土用の丑の日の鰻丼の翌日には、
お弁当に鰻を入れてくれてたな、と親からの愛を思い出す。
ハレの日は両親のことをいつも思い出す。
翌日に食べた鰻丼もやはり美味しくて、
ハレの日の余った特別なご飯を、
残り香を感じるように
ケハレの日常に少しだけ食べるのは、
まさに「日常にスパイス」といった感じで心が踊る。
普段のケハレの日常の日は、特別なご飯はなかなか食べられないからこそ、
このグラデーションを興じることで、
生活の悦びを感じられる。
本日も山椒がよく香っている。