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海辺のカフカ(上)/村上春樹

▫️あらすじ
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」ー15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ち出したのは、現金だけじゃない
古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。

▫️感想
いつかの学生時代の試験問題で本書が出題された記憶があり、そこから中々読む機会がなかったが、今回久しぶりに村上春樹作品を読みたくなり手に取った一冊。内容をざっくり説明すると、東京から高松へ家出をした15歳の少年と、ある事件がきっかけで字が読めなくなり、都からの補助を受けて平穏な日々を送る老人の物語が交互に描かれている。登場人物の名前がどれもありきたり(それも苗字のみが多い)であるが、一人ひとりのキャラクターがどれも個性的で輪郭がはっきりとしていて覚えやすいというのが第一感想であった。現実と幻想の境界線が曖昧であり、不思議な世界観が終始続いていくが、淡々と語られる登場人物の会話とは裏腹に衝撃的な事件が起こるため退屈せずに読み進めることができた。また読み始めからさまざまな疑問が生じる点が本書の特徴の一つであろう。生じた疑問を抱えながら話は進んでいくが、ほとんどの疑問は上巻で解決することはない。しかし、その疑問があまりにも自然に存在していて、漠然と読み進めていたら読み逃すものばかりである。けれどもその疑問はどれも物語に欠かせないものになるだろうという確信があり、どう回収されていくのかとても楽しみだ。

▫️心に残った一行
P20 「君はただの吸い取り紙になるんだ。なにを残してなにを捨てるかは、あとになってきめればいいんだからさ。」

P184 「でもさ、早いうちからあまりいろんなことをきっちりきめつけないほうがいいよ。世の中には絶対ってことはないんだから」

P235 「この世界において、退屈でないものには人はすぐに飽きるし、飽きないものはだいたいにおいて退屈なものだ。そういうものなのだ。僕の人生には退屈する余裕はあっても、飽きているような余裕はない。たいていの人はそのふたつを区別することができない」


▫️こんな人におすすめ
・村上春樹作品に挑戦したい方
・名作と呼ばれる本を読みたい方
・長編にチャレンジしたい方

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