スリランカに心を馳せる日々
横尾明親 YOKOO Akichika
2007年に早期退職して日本の仏教僧となり、アジア各地のお寺を巡ってきました。縁あってスリランカのお寺で修行することができ、その繋がりで、2015年からコロンボ近郊の仏教大学で日本語を教えてきました。
2020年夏に世界的感染症拡大によって大学が閉鎖され、日本に戻って未だにスリランカへ渡航できない状況です。
ご承知かも知れませんが、スリランカでは海外債務への返済が滞り、国家財政がデフォルト状態になっています。
ここ数年、世界的感染症による観光客の激減、海外での出稼ぎ者の減少と自国送金の減少などで、外貨資金が不足する状況が続き、かなりの領事館の閉鎖や石油代金と紅茶のバーター取引などもしており、経済的に困難なことになっています。
今年に入っても、その状況は改善せず、悪化して、原油やガスの輸入ができなくなり、発電所が動かず、地域に時間を規制する停電が行われ、生活に困窮する人々の抗議活動への暴力的な弾圧や、非常事態宣言なども出されました。
長きに渡った現・元大統領一族への権力集中と腐敗が大きな原因であるものの、政治的な混乱は続くことが予想されています。
生活用品の多くを輸入に頼っているため、人々の日常生活は困難を増しています。また、医療品・医薬品なども国内在庫が少なくなり病院によっては今月中に閉鎖せざるを得ないとの情報も入っています。
インドや中国、IMFとの金融支援協議がなされていますが、なかなか返済条件などをクリアーすることは難しそうです。
日本に住む多くのスリランカ人も、新年を祝うどころでなく(スリランカでは今年は4月14日が元日でした)家族や友人の状況をメールやSNS、電話などで確かめています。
スリランカ・ルピーは為替レートが暴落しており、日本からの送金も難しいことのようです。
わたしは、自宅から1時間ぐらいの岐阜県海津市のスリランカ寺院で、週末に日本語教室を開いています。お坊さんや檀家さんが参加して勉強していますが、世界的感染症の規制もあって、参加者も継続的な出席ができないことが続いています。
このお寺では、日本で暮らす子どもたちへスリランカの言葉や文化を継承させ、成長させるための仏教日曜学校が開かれています。
わたしは、当面、所属する日本のお寺の行事に参加しながら、スリランカ寺院のお手伝いもしていこうと考えています。
また、縁あって、昨年3月に名古屋入管に収容中に飢餓状態で亡くなったスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんの葬儀や追悼儀礼にも関わることになり、彼女の御遺骨が供養されている愛西市のお寺でも一周忌法要がありました。
宗教や国籍を超えて、彼女の悲しい死を悼む人々が多く集まりました。
4月には、日本の禅宗寺院の花祭り(お釈迦様の誕生法要)で、ベトナム・スリランカ・日本のお坊さんが一緒に参加する行事にも参加しました。このお寺は、在日ベトナム人の駆け込み寺として、緊急事態宣言の間は多くのベトナム人が共同生活していました。
最近は、在日スリランカ人の中で、多くの多国籍カップルを見かけます。
ブラジルとスリランカ、フィリピンとスリランカ、日本とスリランカ、中国とスリランカ、タイとスリランカなど、多くの多国籍のご家族がスリランカ寺院の法要に参加されています。
また、在日スリランカコミュニティーも民族・宗教などのいくつかのグループができていますが、その一方で、国籍による共同活動などもあり、共通の文化活動などが行われています。新年行事や独立記念日の行事など、多くの人々が集まります。(これから世界的感染症の広がりがなければ、再び集まることができると思います)