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突然の変化にどう備える!?地元で人気の観光施設が突然閉鎖!環境変化に負けない宿経営とは③〜宿には課題が山積、優先するのはどれ?課題の評価方法について解説

前号では、近隣のスキー場閉鎖の可能性が出てきた宿泊施設の強みについて、実際にヒアリングした内容をもとに深く掘り下げてみることで、

日本の地域文化、暮らしに興味を持つ国内外の大人の音楽ファンが、家族経営ならではの行き届いたホスピタリティと日本らしい温かなおもてなし、アットホームな居心地の良さの中で、好きな音楽を好きな楽器で奏で、
聴き、語り合えるミュージックコミュニティリゾート』

という新戦略の方向性が、より明確になってきたと思います。

しかしその一方で、いくつかの経営課題も見えてきました。
 
今後の戦略を形にしていくためには、宿の魅力や強みを引き出すだけでなく、すでに顕在化している経営課題を認識し、一つずつ精査していくこともまた重要なプロセスとなります。
 
次のステップに進む前に改めて、このメルマガで取り上げている『スキー場閉鎖により対応を迫られているとある宿』の現状課題について整理しておきたいと思います。
 
インタビューしたところ、この宿には下記のような課題が顕在化しているとのことでした。
 
――――――――
【ヒト】
・オーナーの体調不良を含めたリソース不足
 
【サービス関連】
・外国人(主に中国人)利用者のマナーの悪さ、壊される備品
 
【財務/経理】
・ランニングコストの負担増(お客様が一人でも満室でも変わらない維持費)・館の老朽化に伴う、修繕費の捻出などで困っている
 
【ハード(建物、施設備品等)】
・建物、設備の老朽化
・ホテル前を走るメイン道路が悪路すぎる(私道扱いのため、所有者が整備しなくなると酷い有様。タイヤのパンク多発)
 
――――――――
 
いかがでしょうか。
 
これらはおそらく経営者の皆様にとっては深刻な課題で、可能であれば全ての課題に今すぐにでも対処していきたいと思われるものばかりだと思います。

しかし、私たちのリソース(人的資源、経済的資源、時間)には限りがあるため、全てに同時に取り組む事は多くの場合、不可能であることが多いように思います。
 
では、これら尽きることのない多くの課題に、私たちはどう向き合っていくべきなのでしょうか?


 この課題解決のプロセスの中で重要なのが、下記のような軸で

課題のアセスメント(評価)を行い、優先順位をつけていく

ということです。


(課題のアセスメント評価方法にはいくつかありますが、今回はシンプルに戦略面からとお客様視点の両面の評価軸から、その影響の大きさを可能な限り定量的にスコアリングしていきます
 
①新戦略を実行するにあたって障壁となることが予想される場合、その影響度はどれくらいか。
 
②その課題が解決されないことによってお客様が被るであろう被害や満足度(顧客体験の質)の低下などの影響度はどれくらいになるか。
 
では、ここからは上記の軸をもとに、実際に【ヒト】、【サービス関連】、【財務/経理】、【ハード(建物、施設備品等)】の各カテゴリーで抽出した課題を、それぞれ簡易的に5段階評価していきたいと思います。
 
なお、5段階評価を行うにあたっては、挙げた課題のうち、自館の力が及ばない、即ちコントロールが難しいもの(例えば、行政の決定次第で決まるものや、市場にて価値が決定されるもの等)が含まれていた場合には、それらについては一旦課題から外しておくことにします。
 
今回のケースでは、
 
『ホテル前を走るメイン道路が悪路すぎる(私道扱いのため、所有者が整備しなくなると酷い有様。タイヤのパンク多発)』
 
という課題がありましたので、一旦除外しました。
 
理由としては、自館の働きかけだけではすぐに解決できず、近隣の住民や施設や自治体など、多くのステークホルダーを巻き込む必要があるためです。
 
残った課題について、今回は前述した①、②の評価軸とともに、5段階評価でその影響度の大きさを5(大)〜1(小)を割り振っていきます。
 
弊社で課題評価を行なった結果を、わかりやすく一覧表にしてまとめてみました。以下をご覧いただけたらと思います。

ここからは、上記a〜eの5つの課題について、どのような観点から影響度の大きさを判断し、定量に落とし込んだのか、評価のポイントを簡単に記載しておきたいと思います。
 
――――――

a. オーナーの体調不良を含めたリソース不足
 
中小宿泊施設においては創業者の存在感とエネルギーはまさに車のエンジンのようなものであり、宿経営においては欠かせない柱であると考えました。このことは新戦略を実行していく上でもお客様への影響面が大きいため、最も深刻かつ緊急度の高い課題として評価しました。

b. 館の老朽化に伴う、修繕費の捻出などで困っている
朽化した設備は、早急に修繕を施さなければお客様の安全や健康に影響することもあるため、新戦略、そして大切なお客様に対して負の影響が及ぶ可能性があるという観点から、緊急度が高い課題として評価しました。
 
c. ランニングコストの負担増(お客様が一人でも満室でも変わらない維持費)
お客様に直接的な影響はないものの、コスト増などの影響により本来のサービスの『質』を担保するために不可欠な要素をコスト削減する必要性が出てくることが考えられます。そのため、お客様への影響面が比較的大きいと判断。一方で新戦略における影響度としては、稼働率向上により解消できる可能性もあるため、中程度を想定しました。
 
d.  建物、設備の老朽化
老朽化がお客様の満足度にどのように影響するかは、最低限、宿経営をするにあたっての環境整備は必要不可欠であるものの、それ以外の面においては、お客様のセグメントや価値観による部分もある(例えば老朽化することによる風合いや味の深みが出ることもある)ため、いずれの評価軸とも一旦、中程度としました。(この評価は宿の戦略、ポジショニングによってかなりバラツキがあると考えます。お客様の安全、快適を確保することが困難な場合には、評価はより緊急度が高いものになるだろうと思います。)
 
e.  外国人(主に中国人)利用者のマナーの悪さ、壊される備品
そのまま放置することができない課題であると思われます。しかしながら新戦略が適切に実行されることにより、お客様の層(セグメント)がより良い方向へ変化し、宿へのロイヤルティがアップすることで自動的に解消される可能性があるため、現時点での評価はそれほど高くないと判断しました
 
――――――

さて、今回は具体的な課題の例を挙げ、評価軸を設定し、スコアリングを行うことで優先順位をつけていくとう具体的なプロセスについてお話ししましたが、いかがだったでしょうか。


宿が今置かれている環境や状況、課題はそれぞれに異なるため、優先順位の付け方もまた、宿ごとに変わってくるものです。
 
そのため、ここまでは評価軸の設定と評価の方法をお伝えするために、近隣のスキー場閉鎖の可能性が出てきた宿泊施設の事例をもとに、サンプル的にご紹介させていただきました。
 
皆様の宿におかれても様々な課題がおありのことと思います。

今回の例を参考にしていただきながら、課題の評価を経て優先順位付けを行い、今、宿が置かれた環境や条件を考慮に入れていただきながら、「新しい戦略の実現」を目指して、理念やビジョンを大切に、それぞれの課題の解決策を見出していただければと思います。
 
次号では今回の事例で策定した新戦略『ミュージックコミュニティリゾート』のように、貴宿がどんな宿であるのかーーつまり明確で具体的な「看板を掲げる」ことで、宿にどのようなメリットがあるのかをお伝えする予定です。
 
是非楽しみにしていただけたらと思います。

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