フリースクール活動日記 2023/07/06-ブルーベリー狩り
「ブルーベリー10粒につき1粒と答えるんだ。いいね。」レイセンから皆に周知された後、僕達は園に入った。
今日は吉祥寺へ集合、武蔵境でバスに乗ってブルーベリー農園へ行き、ブルーベリーを狩る。そう聞かされ武蔵境に到着し、イマンモの説明を受けて愕然とした。目的地のブルーベリー農園は、家の近所―というほどでもないが―だったのだ。そこからちょっと歩けば家に着く。
何故、教えてくれなかったのだ。そうイマンモやレイセンを問い詰めたが、知らぬ関せずで通される。そろそろブルーベリー農園が近づいてきた。皆で準備を調えて入園する。
この農園では入園料はタダ。ブルーベリーを持ち帰るときにのみ料金がかかる。また、当然のことながら園内で試食するブルーベリーもなるべく少ない数にしなければならない。
そう周知されながら入ってみると、そこにはブルーベリーの木がどっさりと。ためしにそこらの実を一つ採って囓ってみる。甘い。その木に生っていたベリーの中で大きいものを幾つかかごに入れていると、Χαοσがやってきて自慢気に言った。
「あまりに美味しかったから、5個一気に食べちゃった」
5個。数で言えば、まだ少ない。中ではあまり食べるなと言われているが、5個ならばまだ許容範囲だろう。それが本当に、5個だというのなら。思い返してもみて欲しい。レイセンが、なんと言ったのか。Χαοσの自己申告は5個。つまり……
さすがに食べ過ぎだと思ったが、もう後の祭り。仕方が無い。そう思って園内のあちこちの木へ行って、なるべく大きなものを収穫する。僕も試食した数が5個に成ろうとしていた頃。一番甘いと感じた園内の一番端の木。そこで大きいブルーベリーを何個ももいでいたとき、ずっと向こうの入口の方から、皆の声が聞こえてきた。
「よし、帰るか」
「ありがとうございました。」
「全員いるか?」
「うん、いるよ!」
「よし、野川公園で弁当を食べよう。」
一寸待った!慌ててベリー狩りを切り上げ、入口へと駆け戻る。すると
「あ、居たんだ。」
「そういえばお前来ていたな!」
「すいません!この子の会計まだ終わってませんでした!お願いします!」
酷いことに、僕の存在は完全に皆から忘れ去られていた。嗚呼、なんといふことでしやう。僕はそんなに影が薄いのか。まあ、家に帰ることは出来るからまだ良いが。
ブルーベリーを購入後、南下して野川緑地公園へと移動、弁当を食べるというが、僕はそれに反対した。僕はここの地元民。ここのことならば確実に皆よりも知っている。その自負を胸に、ここから一番近い公園「武蔵野の森公園」へと行こうとイマンモを説得。実際グーグルマップで見ても一番近い。ところがそうは問屋が卸さない。Χαοσが猛烈に反対した。
「野川公園の方が絶対近いよ!」
嘘をつくな!と言いたいところだが、あれよあれよとながされてその道を通ることになってしまった。国立天文台の脇道を、北上して。
当然ではあるが、その道程に公園などない。本来ならば10分で武蔵野の森公園に着くはずだったというのに、1時間を超えてもまだ歩き続けている。
そうして漸く到着した野川公園は、最寄りに駅などない不便な場所だった。武蔵野の森公園であればすぐ近くに多磨駅があるのにとも思うが、言ってもなにも始まらない。折角の野川公園なので川に入って皆で遊んだ。
その翌日。久しぶりにカッパくんがやって来た。彼はしばらくの間、体調不良で欠席していた。その場に来た皆に聞いてみたのだが、皆が試食した数はものすごい数となっていた。
僕とemmanmoは5個。かなり多いが、これでも彼らに比べれば少ない方だ……パイセンは13個。そして、彼ら龍角散、Χαοσはなんと20個!どうしてそんなに食べた?君たちの目はそんなにも悪いのか?
ブルーベリー狩りは予想以上に楽しかったが、やはり夏。水場に行きたい。そこで思いついたのが、水上アスレチック。僕が初めて参加したとき行った場所だ。そこならば皆が水中へと転落していくのを楽しく眺めることが出来る。
だが、それは残念なことに全員に却下された。そこで思いついたのが横須賀の戦艦三笠、三笠公園。海へ行く絶好の機会だと思うのだが、何故か皆は遠いからと言って反対する。そして挙げ句の果てには「仙台へ行きたい」。
そんなことはどうだっていいが、どこかで横須賀には行ってみたい。
‘今日持っていった本’
吉村昭「殉国」
〃 「闇を裂く道」
松原始「カラス屋の双眼鏡」