元オタクだからこそ我が子をオタクにしたくない

私は元オタクである。
正確に言うと、漫画を読んだりイラストを描いたりするのがとても好きだった。
一方でアニメや声優、グッズ、ミュージカル、キャラソン等には全く興味がなかった。

一般人の尺度でいえば充分オタク、
オタクの尺度で言えばそうでもないという感じだ。多分。

アニメオタクではなかったが、臆病な自尊心と尊大な羞恥心によりあまり普通の友達ができなかったので、
中学校からはアニオタグループ(古い?)に属するしかなかった。

アニメイトでテンション爆上げになる友達に合わせて楽しんでいる風を演じていた。
自分は原作漫画の筆致とかキャラクターの性格の背景とかの方に興味があったので、内心では少し退屈な時間だった。
何より、絵を見ることと描くことが大好きだった。


さて、時は流れて高校卒業という時。
私は熱中し熱狂してきた全ての漫画を売った。


ある日突然、「絵は絵でしかない」ことに気付いてしまったのである。

絵に描いた餅。
そう、キャラクターは実在しない。
私が必死に描いているのは、誰かの生み出した餅。

どこかのおじさんおばさんお兄さんお姉さんが描いたフィクション。
嘘。
物語。

何を当たり前のことを、と馬鹿馬鹿しく思うかもしれないがこの時は雷に打たれたような衝撃を受けたのだ。

オタクというのは(多分)キャラクターがこの世に存在していると0.1㎜ぐらいは思っている生き物だと思う。
存在してないことは当然分かっているが、それでもやっぱり存在しているというか。
これは神に対する人々の認識に似ていると思う。
いるわけない、けれど偶像崇拝。

しかし、キャラクターは存在しない。
何ならアンパンマンと同じぐらい実在しない。

自分は一体何をしていたのだろう、
と思ってしまったのだ。

勿論、漫画などの創作物をフィクションとして普通に楽しんでいる人が大半だろう。
私の場合は、何かそこの距離感を見誤っていたのだ。

何かを生み出すには、エネルギーも時間も要する。
絵でも小説でも立体物でもなんでもそうだ。

崇拝する神の偶像を自らの手で作り出す。
神が自分の手の中で形になっていく。
もうそれは仏師とかの精神状態だ。

消費したエネルギーと神への熱い想いが人を狂わせる。

昔、PC画面に二次元の女の子を表示して「嫁が画面から出てこない」などというノリが流行ったが
あれは結構本気だったのではないか。
メンタリティとしては私も最早同じであった。

キャラクターは人の創作物であり、人間ではない。


今現在でも藤子F不二雄さんの漫画作品などは大好きだ。
けれど、それは当然キャラ萌え(死語?)とかではなく、発想の豊かさやオチの秀逸さに対する「好き」である。


娘が成長するにつれ、お友達や色々な媒体からサブカルチャーの影が忍び寄るのを感じる。
あー、もう、この感じ。
私は小学校高学年でサンデー系の少年漫画によって突然目覚めてしまったので、危機感を感じる。

それまで少女漫画で育っていたのに、一気におかしな方向へ爆進してしまった。

まじでやめてくれ。
見せないでくれ。
本心ではそう叫んでいる。
上の子がいる子達は何でもよく知っていて、
色々な文化を第一子である我が子に伝授してくれる。
ああ、もう。

良くないハマり方をしたオタクの友達に共通するのは家庭環境の悪さである。(1人だけ両親大好きで愛されていたお金持ちのディープオタクがいたけれど)

家庭環境の良さそうな子たちは「ほどほど」であった。

心の穴を埋めるのは、宗教。神。偶像。
すなわち、キャラクターである。

キャラクターは病める傷ついた魂に、
救済と安らぎを与えてくれる。

そう、心がボロボロになった人間が新興宗教にハマるのと大して変わらない。

傷付いた時、近所の神社にお参りして木の葉が風にそよぐ音を聴きながら休憩するのと、
正体不明の教祖に身も心も捧げるのは全然違う活動である。


「子どもをオタクにしないためには」
Googleに問い掛けると、
「過度な規制をしないこと」だと答えが返ってきた。

規制をしすぎる気はない。
きりがない。
規制のしようがない。
問題は規制するかしないかではないだろう。

子どもの心に穴をなるべく作らないと言うところが最も大事だと思う。
ほどほどに楽しんでくれたらいいのだ。

遍く大衆に受け入れられるべくよく練られた文化である。
それはオタクカルチャーだけでなく、
アイドルも同じことだ。

見るな、楽しむな、ハマるなというのは不可能だろう。
出会ってしまうかどうかは神のみぞ知る、運頼み。
けれど、ハマって帰ってこなくなるかどうかは親子関係にかかっていると思う。

大袈裟だけど、これから我々の親子関係が試されるフェーズに入っていくのだと思う。

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