薩摩芋流処世術
さつまいもほど世渡り上手な食材があるだろうか。
おやつ界隈でのさつまいもの立ち位置は年々上がっている気がする。
芋けんぴ、干し芋にはじまり、さつまいもソフト、お芋チップス、安納芋プリン…。
かつては秋のみ食べられる期間限定的存在だったにもかかわらず、最近では一年を通して彼女を見かけない日はない。なんならさつまいもスイーツ専門店なるものまで現れる始末だ。
その一方では野菜という肩書を利用して、ダイエットに向いてますよ、みたいな顔をしてきたりする。
罠である。
私も一度試してみたことがあるが、おいしさのあまり食べ過ぎてしまった。
聞くところによれば、ダイエットに効果的なさつまいもの量は一食100g程度。対して一般的なさつまいもの大きさは200~400g。
無理である。
ホクホクアツアツの焼き芋を前に、それを半分あるいは三分の一で止めなければならないなど不可能である。
たしかに脂質が低く食物繊維が豊富な点では評価に値するが、少なくとも私向きのダイエット食ではなさそうだ。
何もさつまいもが嫌いなわけではない。むしろ大好きである。
小学校の時の好きな野菜ランキングでは、いつもかぼちゃと首位の座を争っていた。
だから誰にでも愛想を振りまく彼女に嫉妬して、その巧みな自己アピールにもちを焼いてしまうのだ。(「頭痛が痛い」がうるさく指摘されるのなら、「焼きもちを焼く」も同じではないかと最近考えるようになった。)
そんな私のお気に入りのさつまいも料理はさつまいもとりんご煮である。
同じくらいの大きさに切ったりんごとさつまいもを炊飯器の中に詰め込んだら炊飯ボタンを押す。秋になれば週に一度は食べたくなるとっておきのレシピだ。一番の得意料理といっても過言ではない。
あとはお味噌汁や粕汁に入っているさつまいもも好き。ついつい盛り付ける時はたくさん入るようにしてしまったりする。
つまるところ、私もさつまいものハニートラップにまんまと引っかかっているわけだ。ダイエットに向いていようとなかろうと好きな気持ちに変わりはない。