アニメ「BANANA FISH」感想

BANANA FISH。
元々チェックリストには入れてあったが、主題歌がKing GnuのPrayer Xだと気づいてから、それを聴きたいがために観たような感じ。

で、観て正解だった。
超良かった。

主題歌Prayer Xの持つ強烈な悲壮感と、アッシュという人物が醸し出す悲壮感がマッチしすぎてて。
エンディング映像も彼の孤独を表してるようで素敵だったし、本編を流したまま曲だけインストverのままエンドクレジットに入る演出とかすげえ良かった。



以下は感想。
だけど、印象に残ったことを箇条書きメモのまま貼っつける。
分析や考察風の何かを若干混ぜた自己満足メモ。Filmarksの映画レビューでもやってるけど。

・物事がスピーディに進む。それ故、ことが次の段階に進んでも、常に危険やピンチがつきまとう。
すぐに罠にかかったり、誰か攫われたり、脅されたり。だから油断できないというか、精神的に休憩できない感じが割と好き。
1話を観た時点では結構ワクワクしてて、4話辺りまでの時点で「うーんこれどうなんだろ」って思い始めたけど、6話辺りでアッシュが仲間を連れて故郷に帰るところでRPGのパーティ感が楽しくなって、そこから徐々にハマっていった。

・人が結構あっさり死ぬ。それもいい人が。そういう感じも好き。

・ただ、人物の関係の変化や心情の変化が繊細に描かれずに唐突に感じたり、ストーリーに関わる大事な場面や感情的な場面への移り変わりが一瞬で通り過ぎていくので頭に入りにくいこともあった。
ピンチが訪れてからそれを乗り越えるまでが結構早かったり、逆に危機に転落するまでが早かったりしてあっけなさを感じることも割とあった。
漫画原作なのでアニメ尺に合わせるにあたって色々省略してるんだろうなとは思う。
終盤に近づくにつれてどんどん面白くなっていく感じはあるけど、最後の戦いへ踏み出すにあたって「さあクライマックスだ……!」と気が引き締まる感覚も薄くて、そういう物語の“抑揚”をあまり感じなかったような。
まあだからといってつまらなかったわけじゃないけど、こういうスピーディに進むスタイルの弱みはこういう部分なのかな。
逆に、抑揚がなかったことで中だるみもなく一気に突っ走ってる感じはあるのでそう考えれば強みかも。

・登場するのはギャングやマフィア、警察だけでなく、銀行、財団、科学者、政治家、軍人……結構色んな人が出てきて大人向けのフィクション感が強くなってくる。
で、そのうち世界情勢が絡む陰謀レベルの規模になってきて物語のIQが上がってくる。
ただそれでいてアッシュ、英二、ディノの三人の焦点がブレることがなかったので、話が難しくなっても夢中でいられた。

・アッシュがとにかく魅力的な主人公だった。美しさが呼び寄せた悲しい過去や、人を信じられない孤独感や、目的のために手を汚さなきゃいけないことへの葛藤。過去に心の傷を負っているにも関わらずそれを武器にして切り抜けることもあったり。売春とか。

・英二はアッシュにとって特別で、いなくてはならないのと同時に、いてはならない存在でもあって。
小難しい戦いのことを忘れさせてくれ、唯一素の自分をさらけ出せる感じ。作中でも語られる通り、英二と接する時のアッシュは本当に無邪気で可愛い。
けど英二からすれば、彼が自分に隠し事をしているように見えてしまうというすれ違い様もリアル。それでもアッシュは戦うしかなくて、英二を心配させてしまう。
中盤辺りからそういう心情が濃厚に感じ取れて心に染みた。
お互いが傷つく度に寄り添ったり弱さを見せたりするシーンはどうしても涙腺が緩んだ。アッシュが普段内に秘めている色々な悲しみが垣間見えてしまって。

・アッシュとマックスの関係性も、序盤は特に面白かった。年の差特有のお互いに感じるギャップというか。義理の親子感。
マックスのお節介な性格のせいでアッシュを放っておけずに行動を共にしながらも、同時に彼の信念とぶつかり合うのも好き。

・サイドキャラクターたちもみんな良かった。シンは可愛かった()し、ケインもかっこよかったし、オーサーやユエルンもネチっこさが敵役として良かった。


ここからネタバレを交えるよ。


・ブランカおじさん好き。私情を交えて行動するだけでも人間臭いのに、愛を語るとかギャップ最高すぎる。
そこで始めてユエルンとアッシュの違いが「愛を知っているかどうか」ということにも気づかされた。逆に言うと説明されるまで気づけなかったわ。

・最後はディノとの真っ向勝負になるかと思いきや、実質ラスボスはフォックスみたいだった。
最後の敵だと思ってた奴が他の奴に成敗されてラスボス交代みたいな流れは結構好きだけど、散々いがみ合ったディノとの最後の対面があの形で終わるのは少し物足りなさも感じた。
ただ、ディノはアッシュを自分が生み出した誇り(宝?)としていて、ある意味自分より大事なのかも。フォックスに脅されているアッシュを助けてそのまま死んでいったことからそう想像する。

・印象に残ったセリフ「あいつは俺の友達だ。たとえ一生会えなくても、想うことくらい許されるだろ」。

・最後の結末、ちょっと理不尽さを感じてしまった。英二が手紙で語っていたこととは裏腹に、結局二人は一緒になるべきではないという運命めいた何かなのだろうか。。。
「死を恐れないが死にたいとは思っていない」と語っていたことを思えば、やはり彼には死こそがある種の救いなのだとも考えられるが、そういう物語のテーマ性の介入が少し強めに感じた。
けどアッシュがあそこで死んだとも限らない。
まあ生きていたとしても、そこから二人が会うことはないのだろう。生きていようと死んでいようと、二人とも幸せなのは違いないと思う。



とまあこんな感じ。
気になったところもちゃんと書いてみた。今までは作品で気になったところがあっても目をつむってたというか見て見ぬふりしてたけど、思ったこと正直に言おうと思って。

最近アニメとか映画とか、物語作品をあんまり観てなかった。
けど、気楽に楽しもうと思えば楽しめるものなんだなと。
ちゃんと真剣に観賞しなきゃいけないみたいな意識があるせいで、ただ観るだけでエネルギーが必要になってだるくなってたけど、
もっとこう、ご飯食べながらスマホで観るとか、歯磨きしながら観る程度の気軽さでいいんだなって思った。
むしろ、何かをしながらでも見入ってしまうほどの魅力があるかどうかがわかりやすい。
何か驚きや感動があれば手を止めて画面に集中する。その瞬間を待ちながらだるだるな気分で観てればいいのかなって。



で、ついでに考えたこと。
俺には中学の頃からずっと心の隅に置いて留めてた創作世界があった。
でもある時から考えなくなった。
BANANA FISHを観てそれを思い出した。
なんか、その創作世界の物語に欲しい要素の数々をBANANA FISHは全部詰まってた気がして。
一つの謎のキーワードを巡る戦いだったり、それが都市部でティーンエイジャーによって繰り広げられていたり、腹の探り合いとか、進むたびに次々と現れる敵たちとか、運命との向き合い方とか、大切な人に向ける想いの表れ方とか。
色々とお手本になるようなお話だった。
俺は教養がないので、政治経済や権力関係の話になってくると「?」となることが多いんだけど、そうなると「誰が誰を狙ってる」とか「今こっちが不利」とかそういう対立軸とか人物の関係とか、心情とかの部分に目が行く。逆に、そこさえ見ていれば話が難しくても全然追える。
半沢直樹とかを楽しめるのも同じ理由。そういえば半沢続編始まるな。楽しみだわ。
こういう、ちょっと知的な戦いというか、そういうの好きなんだよなぁ。バカだけど好き。いや、バカだからこそ憧れるのか。

やっぱ物語っていいなぁ。
って思ったよ。
 

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