声

　幽霊の中には姿を現さず声だけを聞かせる者もいます。姿を見せないので、ただの 空耳かと思われる人もいるかもしれませんが、そうではありません。
　過去に親戚のおじいさんを亡くした経験がある方には夢の中、そのおじいさんが何か言いたげな顔でぼんやりと立ってる姿を見た人が少なくないと思います。これは、おじいさんが近々あなたの身の上に災いが降りかかるかも知れないから用心しろよと 暗に警告を発しているのに違いないのです。
　小学生の頃、やはり私も声にまつわる不思議な体験をしたことがあります。危機一髪の不思議な体験です。
　その日、私が自転車で夕方の道路をぼんやりと走っていると、突然、2日前に亡くなったばかりのおじいさんの声で、
「左だ！ハンドルを左に切れ！」
という声が聞こえてきました。
　ハッとした私が反射的にハンドルを左に切ると、道の向こうから1台の車が猛烈なスピードで飛び込んできて、それから私の右の横腹を掠めるようにして走り去って行きました。私は、それこそ危機一髪のところで事故を免れたのです。