【海と山の境目】 第8話 透明な羽根
若い人たちに絵を描くことや、彫刻の創り方などを教える立場にあった隆志は、幼子の傷をさすりながら、羽根がはえると教え、悟られぬように泣きじゃくり、腫れあがった両目を押さえている若者には、うしろを見ながら歩けないことを教えた。手に取れないぬくもりは、透きとおり、若い心の傷跡を癒し、染み渡ると信じていた。
音楽のリーダーである指揮者であっても、曲の中にある空間を捉え、雲を掴むように動き、リズムの中を漂っている風を立体的に読み、雨の流れに浸透するような音を、観客に魅せる。振り抜く強