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春雨スープの蓋から裏方仕事に思いを馳せる
春雨スープの蓋は儚い。食べると決まった瞬間、真っ先に捨てられる運命を背負っている。
昼ごはんによくカップの春雨スープを食べることがある。開封する際、まずは蓋を外す。だが、この蓋が再び登場する場面はない。
カップラーメンやカップ焼きそばであれば、お湯を注ぎ、数分待つ間に蓋をし、湯気を逃がさず温める役割がある。それに対して春雨スープでは、お湯を注ぐとそのままスープをかき混ぜるだけで食べられる。蓋の役目は開封と同時に終わりを迎え、あとはゴミ箱に行くのみ。お役御免となる。
とはいえ、蓋がなくてはカップの中身を守れない。工場でパッケージングされ、配送され、店舗の棚に並ぶまで、春雨やかやくが衛生的に保たれているのは、この蓋のおかげであることは間違いない。
けれども、消費者の私たちに届いた瞬間、その存在意義はほとんど見えなくなり、あっけなく捨てられる。そう考えると、妙に切ない気持ちになる。
年末の忙しさで疲れていたせいかもしれない。春雨スープの蓋に感情移入している自分に気づいた。「最後はこんな扱いか」とつい思ってしまう。直接の恩恵を受けることはなくとも、蓋がなければおいしい春雨スープをいただくことはできない。それでも蓋の存在を意識することはほとんどない。
でも、仕事をしていてもそういう役回りの立場ってあるよなあと、ふと思う。
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目立たないが確実に重要な役割を果たしている仕事。それを担う立場の人がいることで、業務全体が円滑に回る。
IT業界では、エンジニアリングチームを支える「インフラエンジニア」の役割がこれに近い気がする。ユーザーがアプリを使う際、目に見えるのは華やかなUI(ユーザーインターフェース)や便利な機能の方だと思う。
ただ、その裏にはサーバーを安定稼働させ、データベースを保守し、システム障害が起きないよう監視するインフラエンジニアの努力がある。彼らの仕事がなければ、どれだけ優れたアプリも動作しない。
また、プロジェクト全体を支える「プロジェクトマネージャー」も、目立たない存在ながら重要な役割だと思う。メンバーの進捗を管理し、問題があれば解決に向けて調整する彼らの仕事は、直接的に「成果物」には現れない。
しかし、この役割がなければ、納期に間に合わない、品質が保たれないなど、全体のプロジェクトが失敗に終わる可能性が高くなる。
私自身も、どちらかといえば裏方の仕事に向いていると感じている。人前に出て注目を浴びる立場は得意ではない。それよりも、細部を整え、周囲を支える業務が心地よい。
たとえば、新しいシステムを導入する際、目立つのは営業部やマーケティング部の成果だが、その裏で私は操作マニュアルを作成し、トラブル時の対応フローを整備していた。誰もがその存在を意識することはないが、必要不可欠な仕事だと信じている。
だから、春雨スープの蓋ほどの悲壮感はない。
裏方の仕事にも評価があるし、成果が形になって見えることもある。システムの稼働後に障害が一つも発生しなかった時、「あの準備があったから」と感謝される瞬間が訪れることもある。蓋のように完全に忘れ去られる存在ではなく、少なくともその重要性を理解してくれる人がいる。
春雨スープの蓋も、自分がいなければ中身が保たれないという事実を知っていたら、少しは報われる気持ちになるのだろうか。
確かに、全ての裏方の仕事が報われるわけではないのも事実だと思う。職場での雑用的な仕事や、誰も引き受けたがらない役割を担う場合、それを認めてくれる人がいないと疲弊してしまうこともある。
私自身は言われてないことまでやるほど、お人好しでもないが、そういう時に、自分の中で何か支えになるものは見つけておかないと精神が持たないだろうなあとは思う。
ちなみに、エースコックの『スープはるさめ』シリーズでは柚子ぽん酢味が最近の一番のお気に入り。
スープを飲みながら、蓋が守り抜いた春雨と具材の味を楽しむ。その一杯に感謝の気持ちを込めつつ、今日もそっと蓋を捨てる。
今年も一年がんばっていきましょう。
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