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散歩で広がる未知の道と発見の楽しみ

アパートやマンションの建物名を見かけるたびに、その名前がピン芸人の芸名にありそうかどうかを勝手に考えるという趣味ができた。初めは何気なく始めたが、意外に楽しく、散歩中のちょっとした楽しみになっている。

いくつか例を挙げると、個人的に「ピン芸人っぽいな」と感じた建物名には「コーポよしの」や「グレイス小林」、「パークサイド関口」などがある。
「片桐センチュリーハイツ」はちょっとクドいと思った。

数年前に仕事が完全テレワークとなり、通勤がなくなったことで、歩く機会が劇的に減少した。運動習慣がない私は、このままではまずいと感じ、早朝の散歩を始めることにした。

近所を歩き回る中で、自然と「好きな道」と「なんとなく避けたい道」が自分の中で明確になっていくのを感じた。私の好きな道は、早朝の静まり返った繁華街や、小さな飲食店がひしめき合って並ぶ奥まったところにある狭い通路。夜の喧騒が嘘のように、朝の光にさらされている路上に積まれたゴミ袋やメルトダウンしているサラリーマンたちの姿を見ていると、どこか現実的でありながらも心に落ち着きをもたらしてくれる。

一方で、歩道もないのに車の通行が激しい道や、住宅街など家がずっと並んでいるような道はあまり好きではないことに気づいた。とはいえ、住宅街でも散歩を楽しむ工夫がある。それが、冒頭のピン芸人っぽい建物名を見つける遊びだ。ただピン芸人っぽければ良いというわけではなく、地名が名前に含まれている建物は除外するという自分なりのルールが一応ある。そんなゆるい縛りの中で楽しむのもまた面白い。

散歩を続けていく中で、少し嫌だなと感じる道を避けていると、これまで通ったことのない新しい道が次々と選択肢として浮かんでくる。その中には、普段通り慣れた道と意外な形でつながっている道もあり、その瞬間、頭の中で地図ができあがっていく感覚が非常に心地良い。未知の道が既知の場所と結びついたときの高揚感は、散歩中の楽しみでもあり、散歩を習慣づけさせる要因のひとつだ。

いくつかルートを試しながら、自分にとって最も心地よい散歩ルートが徐々に決まっていく。こうした散歩ルートの「最適化」は、単に効率的な道を見つけるという意味ではなく、自分なりの心地良さや満足感を得られるかが重要。そして、この過程自体が散歩の醍醐味のひとつだと感じている。どの道を通るか、どの道を避けるかという選択肢が増えることで、散歩の楽しさは広がり、毎日のルーティンに変化をもたらしてくれる。

さらに、同じ道を歩いていても、その日の心境や頭の中で考えていることによって、目に飛び込んでくる情報が変わるのも興味深い。例えば、郵便物を出さなければならないというタスクが頭の隅にあるときに散歩をしていると、今まで気にしていなかったポストの位置が急に目に入ってくる。一種の「カラーバス効果」なのかもしれない。

散歩中にふと立ち寄る場所が増えたり、少し遠回りしてでも通りたい場所ができたりすることも楽しい。普段は歩かない道を選ぶことで、日常の中に非日常的な冒険心を感じることができる。気まぐれに足を向けた道が、新しい発見や予期せぬ景色を見せてくれることも多い。散歩は、ただの移動手段ではなく、心のリフレッシュや新しい発見ができる機会なのかもしれない。

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