「コミュニティ活動」に関する僕の見解
このテーマ、触れるべきか触れないべきか悩んだが、自分のスタンスを明確にするためにも敢えて書くことにした。
「コミュニティ活動」が広がりを見せている。同じテーマに共感した人が集い、利害関係抜きに意見交換や課題解決を行う。最近では、同じ製品やサービスを利用する企業の担当者同士が集う「ユーザコミュニティ」のようなものも盛んになってきている。
その取り組み自体、僕は素晴らしいことだと思う。
一方で、コミュニティ活動の名のもとに、専門家や有識者に無償での知識提供を悪気なく求めようとする人がいるのもまた事実で、そこに僕はモヤモヤを感じている。
とくに、明らかに特定の企業の製品やサービスのマーケティング活動の意味合いが強いのに、その利用者でもない人への参画や知識提供を無償で依頼してくるケース。
利用企業(ユーザ企業)の参加者が、主体的に参加し、越境して(他社の利用者とつながって)課題解決をしていく。その取り組みそのものは有意義であり、どんどんやれば良いと思う。
一方で、専門家を呼んで知識提供を求めるなら、それは、その製品やサービスの提供企業が「マーケティング活動」「ブランディング活動」としての予算を確保し、講演料なりマーケティング支援料なりの対価を支払うのが筋だと思う。
百歩譲って、相手がその製品やサービスの利用者かつ共感者であるならさておき、利用者でもない人にその製品やサービスの世界観を後押しするような専門的なことを語って欲しいのなら、正式な講演として依頼するのが妥当でしょう。
僕自身、複数のソリューションベンダーさんからマーケティング支援のお仕事として、きちんと対価をいただいてその製品やサービスおよび世界観を意味づけする講演や対談に出演している。
それなのに、「ユーザコミュニティ」の名のもとに、無償で知識提供してしまうのは、マーケティング費用をきちんとかけてお仕事を依頼してくださる他の企業に対して不公平であり、不誠実ではないだろうか。
とはいえ僕も、かつてはお付き合いで何度か、特定の企業の製品・サービスのPRの意味合いのあるコミュニティで無償で話したこともある。
その時の体験で、同じテンションで依頼されてもお受けできない/しない。
最近のコミュティへの無償登壇のご依頼も、僕はスタンスを明確にしたうえですべてお断りしている。
(せめて依頼者が企業側に、「だったら、マーケティング予算とってください」の働きかけや行動をして欲しい。利を得る組織に正しくお金を出させる。社会人として、ビジネスパーソンとしての行動の基本であり社会的責任では?)
そもそも、僕は知識に正しく対価を払うカルチャーを創っていきたい。そのポリシーでさまざまな活動をしている。
それをやらないことには、日本がますます知識が育たない、イノベーション出来ない、低位安定の社会構造から脱却できない国になってしまう(そして優秀な人が流出する国になってしまう)と思っているから。
百歩譲って、普段お仕事のお付き合いがあり、その担当者の考えや行動に共感して……であれば喜んで協力する。
百歩譲って、話を聞いた人たちが、組織や世の中を変えるための行動をする、小さくても周囲に影響力をもたらす行動をするのであればまだ話は別である。
(が「いい頭の体操になった」程度で、その場の自己満足で終わってしまう人が多いのもまた事実。話す方は、無力感しか残らない)
そうでないのに、なおかつ明らかに特定の企業(その製品やサービスの提供企業)に利があるのにもかかわらず、自分の都合の良い時だけ馴れ馴れしく出しゃばってきて、専門家をタダで動かそうとするのは「ちょっとムシが良すぎやしませんか?」と思うのだ。
繰り返しになるが、コミュニティそのものの考え方や取り組みはとても良いと思う。
▼組織と個人が正しく成長する、バリューサイクルを回していこう