何度観ても良すぎて昂る『インファナル・アフェア』三部作
『インファナル・アフェア』がとてつもなく面白い名作というのは周知のことと思っていたんだが、つい最近、友人の子供がマフィア映画好きというから薦めてみたら、友人自身も初めて観て感動してて、そっか〜1作目の日本公開は2003年だし、知らない人だっているよな〜と気づいた。
そして自分も久しぶりに観返してみた。
だいぶ忘れていたおかげもあり、かなり新鮮に楽しめた!
この、自分好みという事実はわかっているのに、内容のディテールは憶えていない状態で観返すのって最高ですな〜(記憶力が弱いってお得だ)。
最初から最後まで手に汗握る『インファナル・アフェア』
原題は『無間道』、冒頭で「無間地獄とは、八大地獄の最たるもので、絶え間なく責め苦に遭う」と語られ、全体を貫くテーマとなる。
本当はマフィアの一員だがスパイとして警察に入り込んでいるラウ(アンディ・ラウ)と、潜入捜査官としてマフィアに身をやつしているヤン(トニー・レオン)の二人が出会い、その運命が交錯していく。
とにかく緊迫感がすごい!
大きな麻薬取引が行われる夜、それを摘発しようと警察が動く。
ラウはボスのサム(エリック・ツァン)に警察の情報をこっそり流し、ヤンはマフィアの動きをウォン警視(アンソニー・ウォン)に密かに伝えるため、それぞれの対応が刻々と変化していき、互いに潜入者がいることがバレる。
視点が入れ替わるので、「敵側のスパイがどうやって連絡しているのか」「情報が漏れたときどう対処するか」「いかに裏をかくか」「自分の裏切りがバレないか」と多面的にハラハラする。
自分自身の心情が、警察に味方なのか、マフィアに味方なのかまったく定まらない!
そして、この複雑な状況がテンポよく混乱させずに繰り広げられるから、息をするのも忘れて見入ってしまう。
こんなのはほんの序盤で、バレるかバレないか、裏をかくかかかれるか…の緊張が絶え間なく続き、かと思えば何度も、意外な展開にびっくりさせられる。
しかし一番の魅力は、苦悩をたたえるトニー・レオンと、知力と行動力をめぐらせるアンディ・ラウの二人そのものだ。
善とは、悪とは、という葛藤。
ビルの屋上で対峙するシーンはたまらなくかっこよく、いつか香港を訪れたら絶対真似してみたいあのポーズ(と思い続けてきたのに、なぜ未だ行けてないのか…)。
アンディ・ラウは昨年、『追龍』(2017)に出てるのも観たのだが、若手警察として登場しても違和感なく、シュッとした立ち姿がこの頃と変わってなくてビビった…。
香港スターはすごい。
それにしても潜入って過酷すぎだよね。
若い人生を捧げなきゃいけないし。
記憶力が貧弱、辛抱も貧弱な私だったら、自分が誰のために何のために働いているかすぐわからなくなって、絶対務まらんな〜。
1作目に劣らぬ傑作! 『インファナル・アフェアII 無間序曲』
1作目ファンでも、2作目は“いかにも続編”であまり魅力的とはいえないタイトルとチラシビジュアルだし、アンディもトニーも出演しないしで、観ていない人が多いかもしれない。
しかしこれもめちゃくちゃいい出来だから、観逃すのは損だよ!
1作目から遡ること約10年、若いラウとヤンがそれぞれどんな事情で潜入になったか、サムがどうやってマフィアのボスにのし上がっていったかが描かれる。
やはり緊迫感がすごくて、この作品単体でも充分楽しめるのだが、1作目を踏まえると、この人とこの人とこの人は10年後には出てこない…つーことは何らかの理由で消える…と不穏な予感をはらませながら観ることになる。
なんといってもサムとその妻マリー(カリーナ・ラウ)の関係がグッとくるんだよな〜。
マリーはきりっとしてて強い意思が揺るがなくて本当にいい女!
サムはいわゆる男前じゃないけど、目がくりっとして、いつも潤んでいるのかキラキラしてて、なんかかわいいっつーか愛嬌ある。
それに激震の裏社会をあっという間に掌握していくハウ(フランシス・ン)も、シュッとしたビジネスマンみたいなたたずまい、穏やかな話しぶりながら、醸し出す威圧感がただごとではなくて目が離せない。
親父さんの死を悼み、部下とともに献杯する姿にしびれる〜。
「世に出た者はいずれ消え去る」…マフィアの美学である。
それにしてもチンピラのキョン(チャップマン・トウ)が出てくるとなごむな〜。
おめーはそんなでよく10年間、生き延びてくれたよ…。
『インファナル・アフェアIII 終極無間』
3作目は時系列が行ったり来たりするし、新しい人間関係が絡んできたりで少しわかりづらいのだ…そして1、2作目とはジャンルが異なる感じで、私としてはちょっとテンションが下がる。
しかし、生きている限りとこしえに終わりなく責め苦が続く地獄…というシリーズを貫くテーマはここに見事に完結する。
過去を振り返って、トニー・レオンが笑顔になるひとときが見られるのも、胸に迫るものがある。
冒頭でキョンがマッサージの女について愚痴っているのが笑えるんだが、よく考えたら、1作目でのヤンとの最後の会話に繋がってるんだな…。
しかし三部作を通して観ると、あっちにもこっちにも、いったいどれほど潜入がいるんだよ…って誰も信じられない気持ちになるね。