身体、ピル、じぶん
この記事は生理について書いています。
ピルを飲みはじめて半年は過ぎて、たぶん一年は過ぎていない。そんなクィアが語る、じぶんとの向き合い方です。
まえの生理
ピルというものを知ったのは数年前。生理不順ではないし、生理痛だって外に出られはするくらいだし、なんて言い訳をしながら、少し安定しない周期の生理と向き合っていました。
だいたい一ヶ月くらいで生理が来ていて、前回の生理の重さで周期を予想していました。前回重かったし、次は四週間後かな。今回軽めだったから、今度は三週間後くらいかな。みたいに。
生理痛も比較的重い方だとは思えど、倒れたことはないし、どうしても動けなかったこともないし、と、なあなあにしていました。
だって、生理痛がひどいって人は、学校や仕事に行けないくらいなんでしょう。倒れたことがあるんでしょう。
そこまでじゃないし。
そうやって気にしない振りをして、それでも生理痛は確かにあって。痛いと主張する権利を持っていたかったこともあり(心配してほしいと思っていたので)、ピルには踏み出しきれませんでした。
生理の変化
そんなやんわりとしたお付き合いをしていた生理が、三年ほど前に様子を変えました。痛いのです。めちゃめちゃ痛い。脂汗をかく痛さは経験したことがなく、これはやばいな、と思ったことを覚えています。
さらに経血量も増えました。二時間前に変えたとくに多い夜用のナプキンが真っ赤になっているのを見たとき、我ながらグロいな、と思いました。
重いとされる生理の基準に、夜用ナプキンを一時間ほどで取り替えなければならない、というものがあることは知っていたため、ここから低容量ピルを真剣に検討しはじめました。
この頃一気に生理が重くなった理由として、今なら生活習慣の乱れだと結論付けることができます。生活習慣の乱れは、当時じぶんが鬱のどん底にいたから、だと思っています。
ベッドから起き上がれない。動けない。喉が乾いたという感覚はあっても、水を飲もうと動けない。寝れば悪夢で起こされ、二、三時間の短い睡眠が重なっていく。カーテンが開けられない。
生活習慣がある程度直ると、生理のしんどさも少し減りました。なんか最近の生理キツいな~とお悩みの場合は、一度生活習慣を見直すといいかもしれません。
それが出来れば苦労しないんですけれども!
身体とじぶん
同じころ、じぶんの身体を鏡で見ることが苦痛になりました。至るところに感じられる膨らみが気持ち悪いと思ったのです。肉をぜんぶ削いで、もいでしまえたら。脱衣所で裸になった身体が嫌いでした。
じぶんはクィアという性別を自称しています。これは、「じぶんの性別は決めていないよ」という性自認です。
だからこそ、婦人科に行くことが嫌でした。もともと病院は嫌いだし、じぶんが女であらなければならない場に行くことがとても嫌でした。
ピルを決めたきっかけ
ピルを飲むぞ、と決めたのは、今のパートナーと出会ったことでした。性行為はしたくない、とごねるじぶんに、あなたが嫌なら最後までしないよ、と答えてくれた相手でした。
性行為がしたくない理由として、じぶんの中にあった大きなものは、妊娠の可能性でした。
クィアなじぶんが女側の性行為なんて、みたいな気持ちはありました。今でも思います。女側を強要されるみたいだと思ってしまうので、あまり得意ではありません。
性別はともかく、妊娠の可能性なら科学でどうにかなるぞ、と知っていました。いいきっかけだろう、と、婦人科にかかる決意をしました。
同時にとても泣きました。嫌で。苦しくて。
はじめての婦人科
近所の婦人科に行って、ピルを処方してもらうための検査をしました。問診と内診というやつです。
問診はあまり苦戦せず済みました。それなりにピルについて調べていましたし、聞かれる内容もおおまかに予想がついていたので。
(この問診票の記入で、はじめて生理周期がぴったり何日、とカウントできることが普通なのだと知りました。今でも疑っています)
じぶんが行った婦人科では四種類のピルから選ぶことができました。詳しくは覚えていないのですが、避妊効果があるやつ、という基準はありました。避妊効果があると保険適用されないとかで高くつきます。高いですどうにかしてくれ。
生理時の肌荒れや精神的な不調によって効果的なピルがあるらしいので、もしピル処方をお考えでしたらきちんと病院の人と相談してください。
どうしても駄目だったのが内診です。椅子に座ると椅子が動いて足が勝手に開くやつです。
痛いし怖いしむなしいし、泣きました。べしょべしょに泣きました。じぶんが病院にかからなきゃいけないほど弱いこと、知らない人にプライベートな部分を見られること、わかっているのに耐えられないこと。ぜんぶ苦しかったです。
今も内診のたびに泣いてます。何なら採血でも泣いてます。本当に掛かり付けの婦人科の人、ごめんなさい。
内診の結果、少し卵巣が腫れているらしいこと、じぶんは子宮後屈というやつらしいことを知りました。これは生理痛いでしょう、たいへんだったね、よく来てくれたね、とおばちゃん先生が言ってくれました。
あ、やっぱあの生理、痛くていいんだ。と思えて、嬉しかったです。
検査結果としてピルはもらえたので、そのあとの生理がはじまってから飲みはじめました。
じぶんとピル
ファボナール、というピルを飲んでいるのですが、これがじぶんに合っていました。
ピルは最初の一、二シート(だいたい一、二ヶ月)で副作用が出るかもしれないけどね、そのあとは楽になるからね。そう説明を受けましたし、そういうもんだと知りながらピルの服用を始めました。
まっっったくない。なんにも起きない。
もっとこう、気持ち悪かったり痛かったりするんじゃないのか。だって体験談とかみんなそう言ってたぞ。めちゃめちゃ快適だが???
もちろんはじめての休薬期間では普通に生理が来ました。一シート目ではあまり生理の変化はわかりませんでした。
ピル服用のいいこと、悪いこと
じぶんのなかでピルのいいことと悪いことが、そろそろ整理できたので、この記事を書いています。一体験談として参考になれば幸いです。
〈いいこと〉
・生理の開始日、終了日がドンピシャでわかる
・性行為への不安が減った
・PMSが軽くなった気がする
・肌荒れが減った
・生理痛がましになった
→鎮痛剤が生理痛専用の薬じゃなくても良くなった
→安い、ハッピー
・経血量もましになった
→ナプキン、タンポンの使用量が減った
〈悪いこと〉
・高い
・毎日決まった時間の服薬が面倒
・高い
・婦人科への通院が苦しい
・婦人科高い。一回で諭吉二人消えたときは笑った。
・ピル高い
・月額2750円課金してまだ痛いぞ。Spotifyでも月500円で広告ぜんぶ消えるのに。
悪いことには金銭的な負担ばかりが出てきます。分かってるよ定期的な検診大事だって。高いんよ。
いいこととしては本当に、ましになった、という実感と快適性です。課金する価値はある。本当に。あと定期的な検診が付随してくるのでちょっと安心。
前述したように副作用は全くありませんでした。じぶんは。体験談やエッセイでは太った! みたいな意見が見られましたが一切無かった。なんなら痩せた(これはピルの影響ではなく健康的な生活を送るようになった作用です)。
もちろん特定の病気のリスクは上がるし、服用できない人もいます。実際には服用する人や薬によるのでしょう。専門家ではないので詳しくは言えません。
それでも、じぶんとしては。
課金して良かった~~~~~!!!!!!
じぶんと向き合う
クィアとして、ピルを飲んだから楽になった、ということはあまりありません。一つ挙げるとしたら、身体性によって生まれる悩みが軽減した、かな、くらいです。
金銭的な負担と精神的な苦痛は増えたので大差ないです。
婦人科こわいな、という人へ。
いやほんとにそれな。こわいよな。クィアとかFtMとかぜんぶ関係なしにこわいもんはこわいよな。
でも大丈夫。泣いても許してくれる婦人科はあったよ。我々利用者はお金を払ってサービスを受けているので、泣いちゃってもたぶんいいんだよ。だからって悪いことしていいわけではないけれど、苦しいのに婦人科行くだけでえらいんだから。
行くって決めた人は一緒に頑張ろうな、じぶんも頑張るよ。
ピルを飲むにあたって、じぶんとよく相談しました。それが一番大事だったように思います。
生理がしんどかったら、相談だけでもしてみたらいいと思います。その参考までに。
すべてのにんげん、健康であれ。