ユウヤへの「執着」を手放す

数回のカウンセリングを経て、ユウヤを助けたかったこと、そして本当は、自分自身が救われたかったことに気づきました。

そしてここからは、ユウヤに対する執着を手放すプロセスへと入っていきます。

身を切るように辛かったイメージワーク

カウンセリングに何度か通いながらも、私の心はまだ、ユウヤにしがみついていました。

無理もありません。カウンセラーのⅯさんが「彼はあなただったんですね」と表現してくれたように、ユウヤはもう、私の一部だったのです。

心に開いた大きな穴を共有していた同士ですから、ある意味本当に、特別な存在でした。彼への思いは恋愛感情というよりも、執着だったと思います。

私はもうユウヤのもとに戻る気はありませんでしたから、この「執着」を手放すしかありませんでした。

Ⅿさんのカウンセリングではセラピーのひとつとしてイメージワークというものを取り入れており、私に、ユウヤへの執着を手放すためのイメージワークをいろいろやってくださいました。

一番記憶に残っているのは、ユウヤの奥さまに彼を差し出すというイメージワークです。

私はカウンセリングルームのソファに座って目を閉じ、Ⅿさんの誘導に従ってこんなイメージをしました。

まず、私とユウヤが手をつないで立っています。そして、遠くに、彼の奥さまになった女性が立っているのを想像するのです。

一歩、また一歩。私とユウヤは、彼の奥さまのもとへと歩いていきます。私のイメージの中の奥さまはとても優しそうな女性で、彼女もなぜか泣いていました。

一歩一歩が、つらくて仕方ありませんでした。

そして、奥さまの目の前に到着し、握っていたユウヤの手を離し、ユウヤを奥さまに差し出すのですが……。

これが、決して簡単なことではありませんでした。

私の頭のなかのイメージでしかないのですが、どうしても、ユウヤの手を離すことができないのです。

この手を離したら、すべて終わってしまう。

そう思ったら、泣けて泣けてしかたありませんでした。

彼は私なのに。私の一部なのに……。

「でも、もうこの手は私のものではないんだ。離すしかないんだ」。
そう自分に言い聞かせて、

ようやく、きつく握ったユウヤの手を離しました。

そして、目の前にいる奥さまに、ユウヤを差し出したのです。

私の目の前には、手をつないだユウヤと奥さまがいます。

やっぱり二人とも泣いていました。
その姿を見て、私もただただ泣きました。

しばらくそうしていたあと、

私はふたりに背を向け、

もと来た道をひとりで歩き出します。

そして、目の前にある扉を開いて外に出て、


その扉をそっと閉じました。

このイメージワークの効果は、なかなか絶大でした。現実では実像を持たなかったユウヤの奥さまが、私の頭のなかでかなりはっきりとビジュアル化されたのです。

また、ユウヤを奥さまに差し出し、手をつなぐふたりを目の当たりにしたことで、彼はもう奥さまのものなのだということ。奥さまと一緒に生きていくのだということを、認識せざるを得なくなりました。

私のものだったユウヤは、もういなくなってしまったのです。

単に私の頭の中でイメージするだけであるのですが……。
これは本当につらい体験でした。

彼を選ぶ女性なら、きっとそのひとも優しい方のはずです。きっと彼も幸せになれるはず。そう思いながらも、イメージの中でつないだ彼の手を離し、奥さまの手を握らせるのは、決して簡単なことではありませんでした。

彼との思い出を書いた紙を、Ⅿさんが用意してくれた箱に「大切にしまう」というワークもありました。

「大切に。というところがポイントなんです。天宮さんにとって、本当に大切な思い出ですからね」。そんなⅯさんの言葉を聞き、私は泣きながら思い出を書いた紙を箱に入れ、蓋を閉じました。

目の前に彼が立っているのをイメージして、言いたかったこと、言えなかったことを言うというワークをやっていただいたこともあります。

泣きながら彼に想いをぶつける私に、イメージのなかの彼は、なんだか悲しそうな、申し訳なさそうな顔をしていました。

⭐︎

こうしてユウヤをへの執着を手放しつづけた結果、
ユウヤの存在が薄れていくとともに
私の心はなんだか空っぽになっていきました。

そしてようやく、自分自身の痛みと向き合うステージに移っていくのです。


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