【読書感想】望月の烏_その2
(前置き)
はじめに申し上げたいのは
わたしは八咫烏シリーズが大好きであることです。
八咫烏シリーズは外伝・ファンブック含めて
全て読んでおります。
また、この投稿は、「望月の烏」を読んだ人間が
「楽園の烏」を読み返した際の記録のようなものです。
「烏に単は似合わない」から、「弥栄の烏」まで読み、なおかつ「楽園の烏」から「望月の烏」まで読んでいる。
そういった前提で、ネタバレ気にせず記載しておりますので、自分で伏線を回収したい方はこちらで折り返してください。
では、その2をはじめます。
その1を読みたい方はこちらから。
【読書感想】望月の烏_その1|甘子 阿二胡 (note.com)
博陸侯と対面を果たした安原はじめ。
博陸侯は、安原はじめをたっぷりともてなしたあと、単刀直入に荒山の権利を渡して欲しいと伝えます。
しかし、安原はじめの回答は、YESではありません。
その理由として、荒山の中にこんなにすごい桃源郷があるのであれば、荒山の価値はもっと高いはずだろうと言うのです。そして、その対価は金銭ではなく、安原はじめにとって価値のあるものだ、と。
さすがの博陸侯も困ってしまいますが、安原はじめはしばらく山内に滞在するから、その間に考えてくれと伝え、滞在のお供に末席にいた山内衆の頼斗を指名します。
安原はじめのテンポでことがどんどん進んでいく、そんな序盤でした。
まず、安原はじめは花街で出かけます。
そこで「猿」の襲撃にあってしまいますが、頼斗や山内衆によって「猿」は追い払われます。
「楽園の烏」の時系列における山内では、猿の大戦から20年経った後も、猿の残党が出没しては、山内衆や羽林軍によって鎮圧されているようです。
先の猿の大戦で殺し損ねた猿の子供が、復讐している・・・(ニュアンス)と雪斎は安原はじめに対してこのように話しました。
ちょっと待ってくださいね、たしかに猿の大戦で猿の子供は出てきました。
しかも名前までありましたね。オオキミが大事にしている子供たちがいました。
でも最後、雪哉は大戦で猿たちを殲滅したあとも、隧道を探し回り、猿が二度と山内に入ってこられないようにしました。
猿の子供を殺し損ねる?「弥栄の烏」でそんなシーン、ありましたか?
これは澄生のことを言っているように思います。
「楽園の烏」以降、博陸侯雪斎陣営のいう「猿」は「反乱分子」のことなのでしょう。
博陸侯雪斎の作る超合理的社会に対して不満を持つ人たちのこと。
「楽園の烏」では、博陸侯雪斎によって整理された谷間に住んでいた人たちが反乱分子の代表例として描かれています。
他にも博陸侯雪斎に敵対する勢力・反乱分子は、明鏡院長束陣営(「烏の翠羽」)や澄生と浜木綿とその周辺の人々(「望月の烏」)と少なくないですが、いずれも博陸侯雪斎にとっては「猿」なのでしょうか。
ああ、奈月彦のお付きをしていた垂氷郷の雪哉や勁草院時代の雪哉はどこにいってしまったのでしょうか。
私は「烏は主を選ばない」のときからずっと騙されているのでしょうか。
最初に「楽園の烏」を読んだときは、この”博陸侯雪斎”の姿には何か理由があって、雪斎の中にもあの頃の雪哉は残っているのだと信じていたのですが、「望月の烏」を読み終わってから「楽園の烏」の帰ってくると、信じる気持ちも失われてきました。
しかし、「望月の烏」で凪彦に澄生の正体を明かすとき、雪哉は奈月彦と浜木綿の子供のことを「あの子」と言いました。
雪哉がはじめて「あの子」を抱いた日に涙したことをずっと忘れずにいようと思います。
さて「楽園の烏」のストーリーに戻ります。
朝廷に戻ろうとした帰り道、次は烏の集団に襲われます。
安原はじめと山内を出歩くに際して、色々と不測の事態に備えていた山内衆の頼斗は、花街からの帰り道では、事前に囮を作っておき、安原はじめをこっそり護送しました。しかし囮は見破られ、本物の安原はじめに対して烏の集団が襲ってきます。護衛の羽林軍や山内衆は散り散りになり窮地に陥ります。そこでかっこよく頼斗と安原はじめを助けにやってきたのは千早でした。
奈月彦亡き後、金烏に忠誠を尽くす証であった太刀を返上した千早。千早の妹が谷間に世話になっていた経緯から、谷間整理のあと残った子供たちをたまに守っているとのこと。逃げ道として千早に洞穴を案内してもらい、そこで谷間に残って生活している子供たちに出会います。
またまた安原はじめのわがままにより、千早を護衛につけることを条件として、安原はじめと頼斗はしばかく谷間に厄介になることになります。
今の谷間、昔の谷間を知っていくうちに、安原はじめは元女郎たちが働いている工場や、男たちが馬になって働いている堤防を視察したいと言い出します。頼斗は反対しますが、千早と相談し、明鏡院長束のサポートを受けることで視察を行うこととします。
当初、頼斗は博陸侯雪斎による超合理的政治に心酔しているので、馬になった男たちも、工場で働けている元女郎たちも、山内の役に立って幸せなのだと信じて疑っていませんでした。そのせいで今の谷間の長であるトビと口論になることもありました。しかし、視察を終えて、頼斗は少し考えなおし始めます。堤防で力仕事をする男たち、工場で谷間の食糧を生産する女たち、そして何も知らずにいる子供たち。それぞれがそれぞれの人質になっているこの社会の仕組みに違和感を覚え始めるのです。
頼斗の主人公感が増してきましたね。
その2はここまで。引き続き「楽園の烏」を読み返しながら、「望月の烏」へ思いをはせていきます。
その3はこちらから。
https://note.com/amakoaniko/n/nc869e4f9342b
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