「トゥルーマン・ショー」は喜劇か悲劇か。
【あらすじ】
離島・シーヘブンで保険会社に勤める青年
トゥルーマンは、生まれてから1度も
島から出たことがない。
しっかり者の妻や頼れる友人、明るい隣人と
繰り返す毎日には時折不自然な会話や
意味ありげな動きが存在する。
実はトゥルーマンは生まれた時から
人生の全てを24時間撮影されており、
そのままリアリティ番組
『トゥルーマン・ショー』として
世界220か国で放送され続けているのだ。
彼の住む“世界”は巨大なドーム状のセット
であり、彼のみがそれを知らない。
しかし、自分が生きる世界に違和感を
抱き始めたトゥルーマンは、
真実を突き止めようと奔走する。
この作品は最初から「これはトゥルーマンを
放送している番組なんですよ」とこちらに
提示してくる。
つまり、それを踏まえて映像を、トゥルーマンを
観る私たちもまた共犯者ということだ。
【以下ネタバレ有り】
トゥルーマン本人が身の回りに疑問を
抱き始めるポイントが面白い。
たとえば、
彼の住む世界がセットであることをコミカルに
描いているこのシーン。
彼がいつものように出勤しようとすると、
空から突然照明器具が降ってくる。
それには「シリウス(おおいぬ座)」
と書かれており、不審に思うが、
直後のラジオで
「航空機からライトが脱落した」と
報道され、納得する。
また、こちらは父親との再会シーン。
いつものように新聞を買ったトゥルーマンは、
雑踏の中で1人のホームレスの老人を見かける。
それは死んだはずの父だった。
しかしその直後、
その老人は瞬く間に何者かにバスに乗せられ、
連れ去られてしまう。
これ、結局ね、
父親がトゥルーマンを助けに来たよ!
ではなく、
父親役が出番が欲しくて暴走したよ!
なのがなるほど面白いなと思ったし、
哀しいなとも感じた。
妻メリルも結婚式の写真で
「指でクロス」を作っていて、
嘘をついている(役として結婚している)ことを
神様に謝罪している。
親友マーロンもトゥルーマンを励ましているかと
思いきや、それはただスタッフから
指示された通りの台詞であった。
身近な人が理解してくれないことほど
痛みを感じることはない。
あの世界でトゥルーマンのことを本気で
考えていたのは、学生時代に出会った
あの女性だけだったんだね。
基本的にこの『トゥルーマン・ショー』は
人々から好意的に観られている。
いやむしろ大人気だ。
みんながトゥルーマンを大好きで彼はスター。
それが皮肉だよねと思うのだが、
最終的に作り物の世界から脱出する彼を観て
人々は大喜びする。
ここ。
ここが、
この映画を爽やかなものにしていると思う。
人々はきっとトゥルーマンに自分を重ねて
応援したのであろう。
映画としてこれを観ている私たちと同じように。
「おはよう!
念の為
『こんにちは』と『こんばんは』も」
第2のトゥルーマンが生まれていませんように。
【トゥルーマン・ショー
/ピーター・ウィアー】
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