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社員クリエイション - ギフトタグづくりの裏側の物語

当社が運営するギャラリーショップ スペース・アルテマイスターで、昨年12月に行われたイベント「冬の贈り物2022」。

その期間、ラッピングで使用した可愛らしいギフトタグ、実は、企画からイラスト作成、デザインから仕上げまで、社員が創り上げたアイテムです。

今回、このギフトタグ制作プロジェクトを進行したのは、社員であり、イラストレーター“ノガワアイ”としても活躍する、アイさん。

通常業務・部署を越え、周囲を巻き込みながらクリエイティブ活動の輪を広げたプロジェクトを追いました。

アイさん

プロジェクトのきっかけ

スペース・アルテマイスター(以下、スペース)は、生活雑貨を中心とした暮らしが楽しくなるアイテムを揃える、当社運営のギャラリーショップ。

心潤うモノ・コトを提案するスペースをコンセプトに、企画展やワークショップなど、月ごとに様々な催しを開催しています。
店内の様子や最新情報は、こちらをご覧ください。

アイさん)わたしの所属するプロモーション企画室は、ブランディングのための販促物・広告のデザインなどを手掛けるインハウスデザイン部門です。
私はスペースで毎年行われる冬のギフトイベントのイラスト制作を、2011年から担当しています。

アイさんがイラストを手掛けたフライヤーの一部

今回も販売スタッフからイラストの依頼があり、打合せを進める中、フライヤーのイメージを反映させた「ギフトラッピング」を、新たに展開させたい、という意見が出ました。

その時、アイさんの頭に、「自分以外にも創作活動をしている社員がいるので、その人たちにも参加してもらうのはどうか?」というアイディアが浮かんだそう。

アイさん)普段から絵を描いたりしている社員にも、ぜひ一緒に参加してほしいと考えました。
業務外の時間を使っての制作になることなど相談しましたが、皆さんやってみたい!と快諾。そこから急いで企画書を作成し、決裁をもらうよう進めました。

冬の贈り物2022のフライヤー。イラストはアイさん担当


実は当社、仏壇・仏具・位牌の製造販売という伝統的な産業を担っておりますが、社員の平均年齢は35歳と比較的若め。

工芸やものづくりを志望し、デザイン・美術系の学校を卒業して入社する社員が、全国各地から集まっているという特徴があります。

実務や個人活動が入り混じり、なおかつ、部署を越えて様々な社員が参加するという今回の試みは初めてとなるため、あちこちへ相談・確認をしながら進める中、創作活動への対価については、アイさん自身の経験から真摯に考えたそう。

アイさん)初めての取り組みは、言い換えれば、先々の基準にもなると考えました。対価はクリエイティブ活動に自覚と責任を持つことでもあるので、イラスト創作活動への謝礼は出るよう、企画元であるスペースのスタッフに働きかけてもらいました。

いざ、制作へ

各所への調整を終え、企画書が通り、いざギフトタグの制作へ。

イラスト制作を担うのはAさん、Sさん、Tさんの三名。お位牌の加工や塗装研磨、事務仕事など、それぞれのセクションで業務に当たっている様々な部署の三名です。

昼食の時間を活用したランチミーティングなど、業務に支障のない範囲で時間を設け、個別で打合せを重ねました。

普段は自身の思いのままに絵を描いている三名。そのため、自分の絵を目的に沿うように創作していくこと自体が初めての経験。どう進めたら良いのか、正直なところ、戸惑いもあったようです。

アイさん)描き方や進め方など、三名それぞれのやり方を確認。締め切りも短いため、具体的なカラーイメージなども伝えながら、制作を進めました。
ラフチェックでは、現物のタグに落とし込んだ時のサイズ感から、もう少し線の密度をあけた方が良い、など、具体的に詰めていき、最後は私の上司に、全体のデザインチェックをもらい、現物へ落とし込んでいきました。

右:Tさん初期のスケッチ。比べると、線の密度、上がっていますね!

アイさん)今回のイベントは【贈っても貰っても嬉しい心温まるギフト】がコンセプトなので、三人それぞれにテーマを設けて制作を進めました。
Tさんには“ポップ” 、Aさんには“可愛い”、Sさんには“美しい”。それぞれに依頼したテーマはみんなで共有し、お客様が選べる楽しさを大切に、バリエーションをもたせました。

そして完成したギフトタグ。お客様の反応は…?

完成したタグ。左からTさん、Aさん、アイさん、Sさん。それぞれの個性が光ります。


スペースのスタッフに反響を聞いてみたところ、お客様は皆さん「わ~可愛い!」「あの人には、こっちが似合うかな」と、贈る方のことを想像して、ウキウキしながら選ばれていたそう。

2枚のタグを重ね、選べるリボンも好評だったそうです

包装紙で包むなど、手間がかかる分、お客様をお待たせしてしまいがちなラッピングですが、このタグは季節感もあり、見た目も華やか。短時間でラッピングが出来て、とっても良かった!と、スタッフからも大好評でした。

ディスプレイに出していたミニポスター(タグを拡大・印刷したもの)を、「これ、イベントが終わったら欲しいです!」と、スタッフにお願いされるお客様もいたそうです。

取り組みを振り返って

アイさん)もう単純に、まとまって良かったー!という安堵感です。橋渡し役は初めてだったので、正直ドキドキでした。

▽  ▽  ▽

幼い頃から絵を描くのが好きなアイさん。就職してからも、絵を描くのは自然なことでしたが、転機になったのは、大先輩デザイナーからのお誘いだったといいます。

アイさん)職場にアドバイザーで来ていた大先輩から、本気で描き手を目指すなら、東北イラストレーターズクラブに入ってみたら?と、声を掛けてもらったんです。ちょうど、30歳になるタイミングでした。あれこれ考えるよりも、よし、まずやってみよう!と飛び込んだんです。

それから、結婚・出産。二児の母となり、自身の立場が目まぐるしく変わり、一時期は描くことから遠ざかってしまったこともあったそう。

じわじわと見えない焦りのようなものが迫る中、自分で決めたことがありました。

アイさん)それまでは描きたいときに描く、ということが多かったんですけど、毎月1枚、テーマを決めてSNSにイラストを投稿しようと決めました。
初めて自分で自分に課した課題、チャレンジを続けるうちに、見てくださる方も増え、そのうちに外部からのお仕事の依頼も増えていきました。

アイさんの新作のイラスト

アイさん)矢野顕子さんが、どこかで話していた“10年続けたらプロと名乗っていい”という言葉が、ずっと頭にありました。
これまでの経験から、どの立場で何をやるべきか、以前よりは、少しだけ見えた気がしています。私に声をかけてくれた大先輩のように、今度は私がみんなに声を掛けていきたい。これからの10年は、自身の創作活動は続けつつも、クリエイティブ活動に取り組む社員を応援したり、ハブになったり、そんなことにチャレンジしていけたらなって思っています。

依頼を受けるイラストレーター側の視点、依頼するデザイン側の視点、両方の立場での経験から見えてきたものを、未来へ繋げたい。

当社のミッション“豊かな心を創る”を体現されているような、利他の心に溢れるアイさんの次なるチャレンジ、ますます期待しています。

現在、スペース・アルテマイスターでは、アイさんの個展を開催中です。こちらもぜひ、会場でご覧いただけたらと思います。


文/むらかみ