サボテンで作られた革製品?メキシコ発祥の「Desserto」
こんにちは、あーモンドです。
本日はサボテンから作られた革製品「Desserto」についてご紹介します。
この製品はメキシコの企業Adriano Di Martiの起業家であるAdrian Lopez VelardeさんとMarte Cazarezさんが開発した、サボテンを原料とするヴィーガンレザーです。
ヴィーガンレザーとは動物の皮革を使用しない合成皮革のことです。通常、合成皮革はナイロンやポリエステル生地の上に、ポリウレタンをはじめとした樹脂層をコーティングする事によって作られています。生地は編み物や織物をベースとしたもので、その上に、樹脂層が載るような形です。
しかし「Desserto」の原料となっているのはメキシコのサカテカス州で育ったサボテンです。
彼らがこの原料に目をつけたのは、サボテンの頑丈で厚い革の触り心地が非常に動物皮革と似ており、また見た目も本皮と酷似している事を発見したからだそうです。また、それ以前に彼らは革による環境汚染問題の深刻化を知り、その代替品となる素材を探し求めていたと言います。
彼らが指摘するように、革製品を生産するに当たって環境と健康に甚大な悪影響を与える可能性がある事が近年問題視されています。革製品が生産される過程において、毛皮や革は、動物から剥ぎ取られた後、化学的に加工しなければなりません。毛皮や革は死んだ動物の一部であるため、菌やバクテリアなどから保護しなくてはならないので、界面活性剤と脂肪、溶媒、酸、タンニン、殺生物剤、殺菌剤、染料と漂白剤などの混合なめし剤が使われます。この混合なめし剤には六価クロムやホルムアルデヒドなどの有毒物質が含まれており、工業地帯付近を流れる河川汚染、大気中それらの化学物質や剥いだ皮の破片による有害な異臭を生みだす原因であるとされています。また工業地帯周辺に住む人々がその有害物質により癌や皮膚疾患などの症状に苦しめられている実態もあるようです。この問題は世界各地で指摘されています。
だからこそ、「Desserto」の製品は現在市場で扱われているレザー製品の中でも注目を集めています。なぜなら、この製品は動物ベースのレザーを生産するのに比べて、排出するCO2や消費する水の量が極めて少なく、さらには、有毒化学物質を使用せずに生産する事が可能だからです。
事実、「Desserto」の製造過程はいたってシンプルです。
まず同社が所有する牧場内で育った成熟したサボテンの葉を切り取った後、求めている正確な湿度レベルに達するまで、3日間太陽の下で乾燥させます。その後独自の製法で染め上げて完成です。したがって、乾燥プロセスにおいてオーブンや追加のエネルギー(ガスなど)は一切使用されていません。
さらに同社はサボテン用の牧場にて、灌漑システムを使用しない製法を用いている為、水の使用量の削減に成功しています。
また、サボテンは簡単に早く育つ植物で、メキシコに豊富に生息している為、安定した供給が見込めます。
アイテムとしても、柔らかさと通気性をもち既存の動物性レザーと遜色なく、10年の耐久性を持ち合わせており、また微生物によって分解される性質も兼ね備えています。
これらの点により、「Desserto」は環境保護や持続可能な開発目的に合致する製品であるとして世界的に高い評価を得ています。実際に彼らはドイツのミュンヘンにて開催されたVII International Green Product Awardにて、6大陸52カ国から1463品集まったオーガニック製品の中で見事ノミネートを果たしました。
同社はこれまで、このサボテン皮で、自動車の座席や靴、ハンドバッグ、衣服などを作ってきたそうです。そしてさまざまな業界の主要なグループとの大きなプロジェクトに取り組んでおり、今後とも素材としての販売と、ファッション業界においての環境問題への取り組み、そしてイノベーションの重要性を発信していく企業としても期待を背負っています。
残念ながら彼らは自社では「Desserto」製品を展開していませんが、革の素材本体ならば彼らのホームページから購入が可能です。ハンドバッグ(赤/緑/ベージュ/黒)、靴(白/黒)、洋服(黒)の製造例を公開しています。1.4リニアメーターからの購入が可能だそうで、詳しい価格帯などはお問いわせとの事ですが、一般の動物性レザーと同価格帯で買う事が可能だそうです。
今後この製品がより世界に広まる事によって、より多くの商品展開がされる日が楽しみですね。
レザー用品の市場においてこの製品はまさに革命的であると言えるでしょう。