見出し画像

初夏のポーランドを旅して

久しぶりの投稿になってしまいました。

あちらの国からもつれづれ便りを書くつもりが、時差ぼけやいろいろなことでいっぱいいっぱいで、けっきょく、帰国してしばらく経ったいまようやく言葉にできそう、と思えるようになりこれを書いています。

海外旅行。

若い頃はいろいろな国に気楽に飛んでいっては1ヶ月以上そこで過ごして、帰ってからはすんなりとまた日本に順応できていたはずなのですが。フィレンツェもケルンもマヨルカ島もティルバンナーマライもカトマンドゥも、同じようなテンションでサラッと。

でも、今回はそうはいきませんでした。そうはいかなそう、と思っていた通りに。

まず、今回は1歳の子ども連れだということ。子連れのロングフライト、しかも帰りはワンオペ、には経験したことのない緊張を感じました(乗ってしまえば大丈夫、でも乗るまでが不安)。

そしてそれ以上に、ポーランドという国であること、が私には消化に時間のかかることでした。

ポーランドは私の第二の国です。父の国。かつて母が住んでいた国。

そういうと、家族に会いに行くたのしい旅行でないの、と思いますよね。

ですが祖父母が亡くなったいま、私たちとポーランドをつなぐのは、生来の筆無精でしかも奥様といろいろな事情のありそうな父ひとりだけで、もう、あるかないかわからないくらいの絆だったんです。

と、父とのことを書こうとすると長くなりすぎて、せっかくの風景をお伝えできなくなってしまうので、そのことは改めてまた今度、としますね(記事名の候補は、「父をたずねて三千里」。日→ポの距離はだいたい三千里だということをわざわざ調べてつきとめたのは、夫)

ワルシャワに借りたアパートの窓から

6月はポーランドのベストシーズンです。初夏の光が浸透する新緑の森。さわやかな風、照りつける太陽とひんやり冷たい木陰の空気。フルーツ、野菜、テラスで食事する人々の笑い声。

ワルシャワでの滞在先は、ワジェンキ公園の近くの貸しアパートを選びました。ヨーロッパ随一といわれるワジェンキ公園には、リスや孔雀や狐などが生息しています。市街地からは少し離れますが、これが大正解でした。ただ歩くだけで、初夏のヨーロッパをふんだんに味わうことができました。

リス見に行こう、が散歩の合図
日曜日には無料のショパンコンサートが。
寝転がったり、りんごを食べたりしながら
半日過ごせるほど大きな公園です
階段、噴水など子どもが好む環境も多
バラの季節でした

ほかにも旧市街(スターレ・ミアスト)にさまざまな博物館、美術館、ショパンゆかりの教会や聖堂など、ワルシャワの見どころはいくらでもあります。私たちのお気に入りはワルシャワ動物園でした。空いてて、人も動物ものんびりしていて本当に幸せな空間でした。

ワルシャワ動物園のチケット
ウールの国なのでアルパカは馴染み深いよう
ゴリラは子どもたちにサービスをしてくれた
ヨーロッパバイソンはポーランドに多く生息している

ポーランドの初夏はフルーツ天国でもあります。八百屋にはさくらんぼにいちご、ブラックベリーにラズベリー、ネクタリン、桃、りんごなどが色とりどりに並んでいました。

OWOCE(果物)の文字が果物やさんのしるし。若い女性もおじいさんも、果物をつめた袋や籠を抱えて列を作っています。

自分で袋にいれてもいいし、これをこれくらいと言えばお店のひとが詰めてくれる。
なじみのフルーツもびっくりするほど味が濃い


そして、ご飯。

今までは祖父母の家でおばあちゃんが料理をしてくれていて、おいしいのは当たり前と思ってしまっていましたが、ポーランド料理って本当においしい。煮込み料理に発酵スープ。ビーツやキャベツの甘いサラダ、すっぱいサラダ。付け合わせには茹でじゃがいも、マッシュポテト、そばの実、マカロニ、お米、炒めたインゲンなどさまざま。

ディルやマジョラムをたっぷり効かせた料理は毎日まったく飽きませんでした。

上 プラツキ(じゃがいもパンケーキ)とグヤーシュ
下 コトレット(豚のカツレツ)ときゅうりのサラダ
コトレット、トマトのスープと、ベリーのコンブチャ。
3種選べるサラダは、紫キャベツ、根セロリ、きゅうり。
ピエロギ(ポーランド風餃子)
中身はじゃがいもとカッテージチーズ。
お惣菜をテイクアウトすることも多かった。
グォプキ(ロールキャベツ)、サラダ、マッシュポテト
イタリアンレストランで。フォカッチャや生ハムと一緒にポーランドの夏のスープを。
左 フウォドニック(ビーツと発酵乳のスープ)
プラツキとグヤーシュ

お菓子も名物がたくさんあります。甘酸っぱいりんごをたっぷり使ったシャルロトカ。ジャム入りドーナツのポンチキ。ケシの実のフィリングを巻き込んだマコヴィエツ。メレンゲを土台にしてナッツを焼き込んだケーキ。トゥファルクというポーランド産の白チーズを使ったチーズケーキ、セルニック。

ナッツとメレンゲのケーキ、紅茶


ジャム入りドーナツのポンチキはどこのパン屋さんでも。写真はラズベリージャムのポンチキ
ワルシャワ蜂起博物館のカフェで。
チーズのサンドイッチ、シャルロトカ(りんごのケーキ)

甘いパンもケーキも、食べたいものがたくさんあってお腹が足りなかった。ロールケーキ状のマコヴィエツは、ホールで売っていることが多くて自分ひとりに買って食べることができませんでした。無念。

そして、ポーランドの主食といえばじゃがいもとパン。子どもの頃はそれにうんざりするような気持ちになっていましたが、いま味わってみると、じゃがいももパンも日本で食べられるものとはぜんぜん違う。ものすごく美味しいことに気がつきました。
じゃがいもはみずみずしくて鮮やかな黄色。ホクホクともねっちりともいえないさらりとした食感で、いくらでも食べられそうなほどするすると口に入っていきます。

パンはいわゆる黒パンも、白いパンもどちらもあります。酵母かわりのサワードウの香りなのか、小麦や水がちがうからか、ただのパンがすごくおいしい。駅のごく普通のパン屋でも、空港の割高のパン屋でも、なにを買っても外れません。

パン屋はチェーン店もあれど、個人店がたくさんありました。

きゅうりとトマトのサンドイッチも、きゅうりだけ、チーズだけのサンドイッチも、ひとつのこらず記憶にのこっています。帰国後もライ麦パンを焼いたりパン屋めぐりをしたりしていますが、あの味にはとうてい辿りつきません…。次回は、パンにバターにチーズ、たくさん買い込もう。

薄ぺらいチーズとハムだけなのに。
移動中はサンドイッチが食事代わりでした。

バルト海沿いの街、ソポトにも遠征をしました。ワルシャワから電車で4時間半。小さくてのんびりとした海辺の街です。3日間過ごしました。

バルト海は冷たい。とポーランド人
ホイールローダーで砂遊び
ビーチの目当てはブランコと滑り台
いかにも地味な考古学博物館が最高だった
中世の兜をかぶる兄。重い!

2週間のポーランド旅。祖父母のお墓参りをするなど、楽しいだけではない旅でしたが、それも含めて、ここでの全てが自分のあらたな糧になってくれたように思います。バターの味、硬水の味。洗剤の匂い、煮込みの匂い。日本人に近い、はにかむような人々の笑顔。電車からみた畑や森の景色。ほとんどのエレベーターが壊れていてベビーカー移動が大変だったこと、そもそもエレベーターのないアパートが多かったこと…。ケーキの、パンのさまざまな色。街の人々の話すポーランド語のなつかしい音。

五感と感情を、総動員して旅をしてきました。

結局、父には今回は会えませんでしたが、家族の生きた街を歩くということにはそれだけで幸福がありました。

また行こう。

ソポトへの電車のなかで。

最後に。ポーランドはあまりポピュラーな旅先ではないかもしれませんが、いまの物価高、円高のヨーロッパで日本人がすごくたのしめる国だと思います。物価は安めで(外食は日本の2/3くらいの印象、円高を含めても)治安もよく、子連れにもやさしい。本当におすすめです!

いいなと思ったら応援しよう!