ハリソン・フォードが未来から降臨⁈牧眞司 × 豊崎由美、アドルフォ・ビオイ=カサーレス『英雄たちの夢』(水声社)を読む
1927年のハリソン・フォードとは?
課題本『英雄たちの夢』は1927年から1930年のブエノスアイレスを舞台にした、自動車修理工のガウナが体験する現実とが幻影が交差する不思議な味わいの小説です。ミステリー要素もあるので、お二人は慎重に言葉を選んで紹介していきます。「読書会向きの小説。読書会だと全員が読んでいる前提で、ネタバレもできる。」と豊崎さん。ここで、あまり本筋ではないネタバレを1件。課題作の一節に以下があります。
講師のお二人もハリソン・フォードといえば、あのインディ・ジョーンズのハリソン・フォードしか思い当たらない。「未来からきたのかしら」と豊崎さん。
実は、この記事を書いている私も課題本を読んで「ハリソン・フォード」に悩んだところ。必死でググって、現在のハリウッド・スターのハリソン・フォードと同姓同名の無声映画時代の俳優がいて、マリー・プレヴォ―との共演作も複数あることを突き止めました。主人公が見た映画はおそらく ”Almost a Lady”(1926)か "The Rush Hour"(1928)。1927年のことだとすれば、”Almost a Lady"と推理。
ちなみに、ハリソン・フォードもマリー・ブレヴォ―も、声が悪く、トーキーとともに仕事を失った人らしい。ビオイが課題作を書いたのは1952年なので、消えていった俳優の主演作を選んだのは、「儚さ」の象徴なのかもしれません。
ガイブンから「けいおん!」まで
牧さんはSF評論家ですが、興味の範囲はガイブンから「けいおん!」まで幅広く、知識も豊富。豊崎さんとの対話でも、本書の中で、「体験」が「記憶」から失われる様をジョイスの『ユリシーズ』やプルーストの『失われた時を求めて』になぞらえます。牧さんの博識ぶりはぜひ対談の動画でご確認ください。
そして最後に牧さんからは本を3冊ご紹介いただきました。
まず1冊目は牧さんが書かれた「『けいおん!』の奇跡」。電子書籍ですが、オンデマンドでも購入可能。
2冊目、3冊目はSFの巨匠ラファティの短編集。牧さんが編者です。「怪しい編」と「かわいい編」とのこと。
【記事を書いた人:くるくる】
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?