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ストレスとアレルギー
いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。
ストレスが溜まるととても痒くなります。
時には咳が止まらなくなることも。
なぜそうなってしまうのか?
今回は興味深い文献を勉強したので
一部抜粋して、まとめていきます!
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1.そもそもストレスとは?
ストレスという言葉は定義が難しく
日常生活では短期間の焦りや不安を生じる場合に
「ストレス」という言葉を使います。
精神医学においても
ストレスに対する定義は単一ではありませんが
体の要求とそれに対する体の能力のバランスが乱れた状況
を特徴とするものです。
疾患による生理的なストレス
失業や親族の死などの感情的な問題による精神的なストレス
またはその両方によるストレスなど
異なるタイプのストレスがあります。
期間では
急性(数日)または慢性(数か月または数年)に
分類することができます。
短時間では
体に大きく有害な影響をもたらすことはありません。
(※既存疾患がある方は別)
一方で、慢性的なストレスの場合
バランスの不均衡を補正するための
調整メカニズムが乱れ
ストレスに耐えることができません。
長期的なストレスは様々な病気と関連付けられています。
心血管系:動脈硬化/心臓病/高血圧
精神医学:うつ病/不健康な行動傾向
内分泌学:糖尿病/脂質異常
神経学:脳血管事故
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2.ストレスと免疫システム
ストレス状況を感知することで
コルチゾールが分泌され
ノルアドレナリンの生成を促したり
副腎皮質刺激ホルモンの分泌を誘導します。
副腎皮質刺激ホルモンの分泌によって
間接的にコルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリン
が生成され、サイトカインである
IL-4,IL-10,IL-13の生産が増え、IL-12の生産が減り
Th2細胞が増加、Th1細胞が減少します。
Th2優位な反応では
繰り返されるストレスによる免疫内在性メカニズムの失調
を生じます。
※他研究結果でも炎症のメカニズムを説明しております。
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3.様々な臨床研究の結果
臨床の現場ではどうだったのか?
見ていきましょう。
Wrightらは
アトピーの既往歴を持つ499人の子供とその家族を対象に
妊娠初期(出生48時間後)のストレスが
新生児の免疫応答に及ぼす影響を調べました。
結果は、妊娠初期のストレスへの感知が2-3歳の時点で
IgEの発現の増加、アレルゲン特異的な増殖リンパ球応答と
TNFαの増加、IFN-γの減少と関連していることを示しました。
ストレスへの早期暴露が
敏感な子供たちの免疫応答反応に変化をもたらし
Th2の炎症応答を強化する可能性があることを結論付けました。
Yon Herzcnらは
母親のストレスによって
持続的にコルチゾールが分泌されることによって
胎児や新生児においてTh1/2分化に影響を与えます。
結果、遺伝的に感受性のある個体に
アレルギー疾患への感受性を高めることがあると
考えられます。
アレルギー患者において
ストレス状況でのHHA応答の減少は
多数の著書によって報告されており
ストレスによる炎症カスケードの発症の確立が高まる
ことが示されています。
Marshallらは
健康学生グループの期末試験によるストレスがある環境下で
Th2応答が偏った状態になることを報告しました。
別の研究では
気管支喘息を有するアトピー患者で
試験期間中は痰の中のTh2応答に関わる
サイトカインの存在が増加しました。
Kilpelainenらは
18-25歳の10,667人のフィンランド人学生を対象とした研究で
人生のストレスの背景がアレルギー性鼻炎と喘息の発現を
頻度を上げることを結論付けました。
Wrightの研究により
アトピー性気管支炎の既往歴のある個人において
子どもや青少年期に起こしたネガティブなライフイベントや
それに対応する社会的支援が不十分であった場合
現在のアトピー性気管支炎による入院件数の増加と
関連していることが示されました。
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4.まとめ
本研究では
ストレスによってTh2優位になることで
アレルギーの症状がひどくなる可能性を示唆しています。
一方で
個人によってストレスの感じ方が異なるため
同じ刺激に同じように反応しないことを
考慮する必要があります。
現時点ではストレスがアレルギーを引き起こすのか
という疑問に確実な答えは得られていません。
様々な研究から得られたエビデンスは
遺伝的に敏感な個体において
長期的なストレスは
アレルギー疾患を複雑化させる
可能性があるという考えを示唆しています。
Blogでは割愛致しましたが
クラシック音楽の聴き方
キスや笑いなどの喜びを感じる体験は
アレルギー患者の免疫細胞の行動に
変化させることを示しています。
なるべくストレスを溜めず
発散できるよう
みんなで気をつけましょう。
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