見出し画像

漁業と環境問題

こんにちは、オールビーチズの運営チームの佐藤佳奈です。


緊急事態宣言・蔓延防止措置を受けて、神奈川県由比ヶ浜を拠点としているオールビーチズのチームでのビーチクリーン活動は休止していますが、海に立ち寄ることがあるメンバーが個々にビーチクリーンを行なっています。
写真は先日、片瀬西浜で見られた漁業ゴミで、オールビーチズの運営チーム・なおとさんとその仲間たちが数時間かけて回収を行なってくれました。

このことがあり、今日は「漁業と環境問題」について調べながら、私たちができることってなんだろうということを考えてみました。

▼2021年5月9日 片瀬西浜

画像3

海に流出する漁具「ゴーストギア」

このような海に流出した漁網などの漁具は「ゴーストギア」と呼ばれ、ウミガメや魚・海鳥などに絡まってしまう「ゴーストフィッシング」が起こり、多くの海洋生物の命を奪っている、というのはメディアでご覧になった方も多いかと思います。世界の海に流出しているゴーストギアは、推定で50万トンから100万トン*1と推測されるそうです。数字が大きすぎて、もはやよくわからないのですが、空っぽのジェット機1つの重さが約150トンなので、ジェット機5,000個が、毎年海に捨てられている感じでしょうか。

▼*1 WWF JAPANは昨年から「プラスチック問題解決に向けた国際協定」の発足を求める署名活動を強化している
https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/4452.html

画像1

日本もゴーストギア問題の当事者

日本においても、漂着ゴミのうち「プラスチックごみ」に絞ると、漁網とロープで約4割というデータ*2 もあります。これは海外の船が持ち込んでいるものではなく、その多くは日本の船から出ていると考えた方が良さそうです。ゴーストギア問題は決して他人事ではなく、日本で起きている問題であり、水産庁では「漁業系海洋プラスチックごみ削減対策*3」*を推進しています。

▼*2 海洋ごみをめぐる最近の動向(環境省)
https://www.env.go.jp/water/marirne_litter/conf/02_02doukou.pdf
▼*3 漁業系海洋プラスチックごみ削減対策報告書(水産庁)
http://www.umitonagisa.or.jp/pdf/mb21/report/kaiyou_pla30.pdf

こんな状況にもかかわらず、2018年のG7(主要7カ国首脳会議)で採択された、プラスチックゴミによる海洋汚染問題への各国の対策を促す文書「海洋プラスチック憲章」に、日本は署名を行いませんでした。こういう情報を目にすると、日本の地球環境問題への対応は非常に遅れていて、世界から取り残されているのではないかと思ってしまいます。

オールビーチズでも海外から帰国したメンバーもいますが、他国で生活したことがある人に話を聞いていると、私たち消費者の意識も同様に他国から遅れを取っているように感じています。エシカルやサステナブルなことを知れば知るほど、私自身も世界の感覚から遅れを取っているなと感じてしまっています。

画像2

漁業と地球環境問題

そんな中、Netflixで公開され話題になった「SEASPIRACY 偽りのサステナブル漁業」を観ました。冒頭の結構長い時間、日本の捕鯨に対する批判が続き日本人として心が苦しくなるのですが、その先に世界の漁業のさまざまな問題点が洗い出されているので、興味のある方にはぜひ最後まで観てみて欲しいなと思います。

このドキュメンタリー映画の中にも衝撃的な数値がたくさん出てきますが、漁業が海洋生物に与える影響については、さまざまな論文が出されていて、目を疑いたくなるようなものばかりです。正確な数字ではないものもあるかもしれませんが、危機的な状況であることは確かだと思っています。

●2048年までに食用魚はいなくなる(通称2048年問題)
2006年にサイエンス(米国学術誌)に掲載された論文で、食用魚があと20数年でいなくなってしまうという。温暖化やゴーストギア、混獲(本来の獲物ではないものを一緒に捕獲してしまうこと)などが原因と言われている。
●混獲量は本来の獲物の5倍
混獲はエビ漁やマグロ漁などで特に多いと言われている。
世界で年間に5万頭のオサガメ、22万頭のアカウミガメが混獲されている
参照:WWF,2010(https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/129.html)

ゴーストギアの心配をしていましたが、そもそも2048年には漁することもできなくなると言われ、そんな状況なのに、現在の漁の方法では本来の獲物よりも多くの海洋生物を無駄に捕獲してしまっているというのです。これは漁業従事者だけが悪いのではなく、私たち消費者の需要に効率的に応えるために起きていることだと思っています。

魚がいなくなったらどうなる?

「もし魚がいなくなっても別のものを食べればいい」と思うかもしれませんが、魚がいなくなると大気中の二酸化炭素が増え、さらに温暖化が加速していくと言われています。海洋は大気中に存在する量の約50倍もの炭素を蓄えています。海洋中に吸収された二酸化炭素は、生物活動などによって深層に運ばれ蓄積されていくそうです*4。その生物活動がなくなるということは、これまでみたいに二酸化炭素を海洋中に留めていくことができなくなるということです。「SEASPIRACY」では「魚がいなくなるということは、人間も生きていけない」とはっきり語られているシーンもありました。

▼*4 海洋中の二酸化炭素蓄積量(気象庁)
https://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/mar_env/knowledge/co2_inventory/co2_inventory.html

私たちができることは?

ゴーストギアや混獲問題については、「海洋プラスチック憲章」にサインをしなかった日本でも、漁具の開発や休漁などをして、対策を進められているようです*5。でも私たち消費者が大量に食べ続ける限り、魚は確実に減っていきます。「養殖にすればいいのでは」と思うかも知れませんが、養殖も同様にそれを支える資源が必要です。例えばマグロを1kg太らせるためにはイワシが10kg必要と言われています。

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表している「世界の海洋水産資源の状況*6」では、”生物学的に持続可能なレベルで利用されている資源”は全体の67%(つまり残りの33%は資源量が持続可能でない)で、そのうち生産量増大の余地がある資源はたったの7%。どんどん人口が増えている世界で足りるはずがないのです。

▼*5 クロマグロ資源管理推進対策(水産庁)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/maguro_gyogyou/201102.html
▼*6 水産白書・世界の漁業の状況(水産庁)
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/r01_h/trend/1/t1_3_1.html

そうして考えていくと、やはり私たちができることは、一人一人が魚介類の消費量を減らしたり、少なくともフードロスをゼロにしていくことが大切だと思います。日本に暮らしていると、本当に食べ物が美味しくて、それは素材の良さでもあるとは思いますが、料理の技術が素晴らしいんじゃないかなと思っています。魚は美味しいけれど、その味や栄養を置き換えできるプラントベースなものもこれからたくさん出てくるのではないかなと思っています。

先日私が試したコメダ珈琲店のプラントベース・レストランのフィッシュバーガーは、「これ本当に魚じゃないの!?」ってくらい魚でした!

ちなみに私は料理がすごく苦手なので、オールビーチズの活動でプラントベースな料理教室などもやってみたいなと思ってきました!プラントベースな食生活も楽しんでいきたいと思っています。

オールビーチズ・運営チーム
佐藤佳奈

オールビーチズ公式サイト
https://allbeaches.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?