映画『スイス・アーミー・マン』は悩んだ時に背中を押してくれる不思議な映画 【ITSUKIの映画を語りたい①】
ボーカルデュオ「all at once」のITSUKIが何気なくツイートした『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』への期待コメント。そこに映画好きの匂いを感じたビーイングスタッフが、音楽を離れてひたすら映画愛を語ってもらうインタビューを行いました。
記念すべき第1回は『スイス・アーミー・マン』やA24がテーマです。
『スイス・アーミー・マン』を見終わって、結構前向きになれたんですよ
――このnoteを立ち上げたきっかけですが、先日のツイートを見た時に個人的にビックリしまして。ビーイング所属アーティストで『スイス・アーミー・マン』の名前を出す人がいるとは思っていなくて、すぐにマネージャーさんに相談して実現しました。
ITSUKI:(笑)
――ITSUKIさんと『スイス・アーミー・マン』の組み合わせが意外だなと思ったのですが、何をきっかけに本作を見ようと思ったのでしょうか?
ITSUKI:映画好きというのもあるんですけど、『ハリー・ポッター』シリーズでずっと追ってきたダニエル・ラドクリフが変な役をやっている予告をたまたま見たのがきっかけです。
死体役というのに興味が湧いて、ちゃんと調べてみたら製作がA24だったから、これは見るしかないと思って。それくらい予告のインパクトが凄かったですね。
――死体にジェットスキーみたいに跨って海を走る予告はインパクトがありましたよね。
ITSUKI:何これ……って。そのインパクトだけで「見よう!」って思いました。
――ちなみに映画を見たいと思うきっかけは予告が多いですか?
ITSUKI:一番は予告ですね。好きな俳優さんの出演作品は絶対に見るって決めているんですよ。ジェイソン・ステイサムが一番好きなんですけど、彼の作品は絶対に映画館で見るって決めていて。あとはマーベル関連も映画館で見るって決めています。
それ以外だと『ワイルド・スピード』みたいな映画館でしか迫力を味わえないものや、音楽が自分的に好きな作品は映画館で直接見るようにはしています。あと「本編の映像5分間公開」とかあるじゃないですか。あれを見て引き込まれたら行くって決めていますね。
――本作はずっと不思議な展開が続いて、最後には夢か現実か分からないようなオチになりますが、映画を見終わった時の感想はいかがでしたか?
ITSUKI:見終わって、僕は結構前向きになれたんですよ。めっちゃ下らないというか、よく分からない出来事で話が進むじゃないですか。最初は自殺をしようとしていたけど、そこでダニエル・ラドクリフ演じる死体を見つけたことがきっかけになって前を向いて生きていくじゃないですか。
あれを見て、意外と下らないことがきっかけでも、始めてみたら前に進み始めるというのは良いことなんだって感じて。
あと、監督のセンスだと思うんですけど、音楽が入るタイミングやサウンド感がオシャレで個人的にツボでした。だから、それもあって最後まで目も耳も離せなかったですね。
――音楽がアンビエントな感じもあって良いんですよね。
ITSUKI:良いですよね。映画の展開自体も忙しなく話が進むのではなく、ゆっくり進んでいるのに最後まで目が離せないのが不思議な感覚でした。作品としても本当に変な感じで、見ながら「オナラかぁ」と思ったり(笑)。
――個人的な感想になってしまうのですが、予告の印象から死体がジェットスキーみたいに走るのはクライマックスだろうと勝手に想像していたので、本編を見たら早々にこのシーンになったのが驚きでした。
ITSUKI:あの始まり方とかタイトルの入り方はかっこよかったですね。
『ミッドサマー』を何度も見返すと音楽活動や普段の生活に影響が出そう
――『スイス・アーミー・マン』の配給はA24ですが、A24の他の作品も見たりするんですか?
ITSUKI:個人的にホラー映画が好きなので、A24関連の映画だと『ミッドサマー』は印象に残っています。あと『ヘレディタリー/継承』を見た時の衝撃は凄かったですね。久々にクラシックな感じのホラー映画ではあったんですけど「怖っ……」って。
「怖っ……気持ち悪っ……あ〜嫌だな……」って久々に見て思ったのは本作です。A24の映画はちゃんと人間の嫌悪感を喚起するホラー映画が多い印象を持っています。
――A24は信頼の印と言っても良いですね。
ITSUKI:そうですね。A24は”映画好きが好きな映画”を世に出してくれるイメージです。あんまり映画が好きじゃない人には、気持ち悪いとか変な作品だなって感想で終わっちゃう映画が多いかもしれないですけど。
――マネージャーさんも『ミッドサマー』のことを話してましたよね?
all at onceマネージャー:予告だと幸せそうな雰囲気だから、そんな感じだと思って行ったら「えぇ……」ってなって。
ITSUKI:崖から落ちるところとかもちゃんと映すので、しっかりR指定だなって思います。でも、そこまで映すからこそ嫌悪感じゃないですけど、より気持ち悪さというか不気味さを感じられる作品だなって思いますね。
――『ミッドサマー』の本編は夏至祭の一部でしかなくて、本編では描かれていない祭りが存在するらしいのがまた怖いですよね。
ITSUKI:ひとつの作品を何回か見返すタイプなんですよ。でも『ミッドサマー』に限っては一回しか見てないです。音楽活動とか普段の生活に支障が出そう(笑)。もう全部が嫌になる。
――レコーディング前に見て、声に覇気がなくなるみたいな。
ITSUKI:そう、覇気が無くなりそう。
――ちなみに『スイス・アーミー・マン』をプレゼンする機会があったとしたら「ここに注目してほしい!」というポイントはありますか? もしくは「こんな映画だから見てほしい」というのでも大丈夫です。
ITSUKI:意外かもしれないですけど、「これから人生どうしよう」とか「恋愛が上手くいってないからどうしよう」みたいな大きな悩みを抱えている時に見ると、背中を後押ししてくれて、前を向ける作品かなと思います。
――『スイス・アーミー・マン』はラストシーンも印象的なんですよね。
ITSUKI:そう! ラストも印象的で心温まるんですよ。それで音楽も良いのに、ダニエル・ラドクリフは死体役っていうのも面白くて。
――先ほどから話を伺っていると、ダニエル・ラドクリフもお好きなんですか?
ITSUKI:『ハリー・ポッター』シリーズもですが、『グランド・イリュージョン』とかも好きです。あと、作品名をド忘れしちゃったんですけど、手に銃を固定される……
――『ガンズ・アキンボ』ですか?
ITSUKI:そう! 『ガンズ・アキンボ』も見て、色々な役をやるなっていうのを感じて衝撃でしたね。
ずっとダメじゃないですか、あいつ(ガンズ・アキンボの主人公)。でも、最終的に一気に変わって凄い殺人鬼になってしまう演じ方とか、豹変する時の目の演技が好きですね。
弱々しい感じから、急に猟奇的殺人鬼みたいになるし。それなのに『ハリー・ポッター』シリーズでハリーを演じている時はハリーの目だし。そんなところが好きですね。
――『ガンズ・アキンボ』はネットでイキリ散らかしている奴が、目が覚めたらガウン姿で手に銃を固定されているインパクトが凄いですよね。
ITSUKI:めちゃくちゃ可哀想ですけど、自業自得だなって思うところもあります。でも、あの映画はスカっとしますね。
『エブエブ』はミシェル・ヨーの演じ分けが楽しみです
――そしてこの『スイス・アーミー・マン』の監督の次回作が『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』なんですが、色々と楽しみにされているとは思いますが、特にどのあたりに期待していますか?
ITSUKI:一番はカンフーですね。主演のミシェル・ヨーのカンフーがめちゃくちゃ好きなのもありますし。マルチバースでカンフーって、もうわけわかんないですからね。ミシェル・ヨーはマーベルの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』にも出ていたんですよね。
見た目もそうですけど、カンフーの動きも綺麗な印象があって。女性らしいけど、ちゃんと強いカンフーな感じが個人的に凄い好きです。あと、マルチバース(多元宇宙、パラレルワールド)だから色々な役を演じないといけないじゃないですか。
その中で表情だったり、それこそ性格とかも全部違うだろうから、その演じ分けが見られるのも楽しみですね。
――先ほどから目とか表情に注目されますね。
ITSUKI:喋り声とかも注目しますけど、やっぱり表情を一番見ますね。ここら辺はホラー映画が好きだからかもしれないです。ホラー映画って、表情で全てを伝えるじゃないですか。
――ちなみにミシェル・ヨーの作品の中で好きな作品があれば教えてください。
ITSUKI:それこそマーベルの『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のイン・ナン役は好きでしたね。あとジェイソン・ステイサムが出ていた『メカニック:ワールドミッション』も好きです。
――初回なので軽く話を伺おうと思ったら、想像以上に濃い話を聴けて楽しかったです。次は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』をお互い見て、感想戦が出来たら良いですね。
ITSUKI:良いですね。是非お願いします。
聞き手:岩崎航太(ビーイング)