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嵯峨嵐山でいにしえの文学を感じる京あるき・前編〜百人一首編〜


こんにちは。ALKOTTOメンバー3回生の剱物真桜です。

前回更新してからすっかり季節が変わってしまい、とうとう祇園祭の山鉾巡行を迎えてしまいました。なかなか記事が更新できないまま、書きたいネタだけが積みあがっていく日々です。


さて、今回は嵯峨・嵐山地区に行った時の散策記です。

目的は今学期に履修している「コンテンツツーリズム」という授業の課題の調査に行くこと。課題の中身は「文学と観光のかかわりについて説明すること。」というものです。

小説や近代文学作品、作家たちとゆかりの深い場所を観光するというのもコンテンツツーリズムのひとつ。京都で主に挙がる場所としては、川端康成の『古都』に登場する祇園祭、谷崎潤一郎の『細雪』に登場する平安神宮、三島由紀夫の『金閣寺』といったところでしょうか。また、森見登美彦や万城目学など現代の小説家も、京都を舞台にした作品を生み出しています。


しかし、文学とはこれらだけではありません。京都が誇る文学といえば、やはり『源氏物語』なのではないでしょうか。

平安時代中期、紫式部によって書かれた長編小説。世界的にも有名な、謂わずと知れた世界最古の文学作品です。源氏物語を語らずして、文学は語れません。

来年度の大河ドラマは吉高由里子演じる紫式部が主演の『光る君へ』に決まり、源氏物語は今とてもホットな話題です。幸い、授業内でも実際に自分の足で文学と関わりのある観光地に赴き、その調査結果が課題に反映されていれば加点されるらしいので、京都で源氏物語に関わりのある場所に行ってみることにしました。


もうひとつ、わたし達に身近で、京都と関わり深い文学作品があります。

それは、『小倉百人一首』。和歌も立派な古典文学です。みなさんも一度はかるたで百人一首に触れたはずです。この「小倉」という名前の由来は、大堰川を挟んで嵐山の対岸にそびえる小倉山。百人一首を編纂した鎌倉時代の歌人・藤原定家は、紅葉の名所であるこの場所を好み、山荘を営みました。ここで作られたのがこの『小倉百人一首』だったのです。


じつは嵯峨・嵐山地区には日本の古典文学を代表する2つの作品に非常にゆかり深い場所なのです。これは、調査に行くにも、そのついでに息抜きするにもうってつけの場所。最近届いたばかりの新しい夏服を着て、意気揚々と嵐山に繰り出しました。

最初の目的地は嵯峨嵐山文華館。ここは百人一首や日本画を主に取り上げ、文化と観光振興を図るために作られた文化施設です。常設展・百人一首ヒストリーでは、小倉百人一首が誕生してから現在のかるたの形になるまでの歴史や、100首すべての現代語訳や英訳、作者の人形などが展示されています。1階にはカフェテリアもあり、ここで遅めの朝食食べてから展示を見に行きました。

厚切りトーストが美味しい🍞

この文華館で面白いところは、原文(古語)・現代語訳・英訳の3つのことばで百人一首を理解することができるところです。

「君がため 惜しからざりし いのちさへ ながくもがなと 思ひけるかな」

という、藤原義孝が詠んだ恋の歌があります。私のいちばんのお気に入りの歌なのですが、古語のままでも理解しやすい内容ですよね。これを現代語訳すると、このようになります。

「あなたのためならば命さえ惜しくないと思っていましたが、お逢いした後の今となっては、長く生きていたいと思うようになったものだなあ。」

 とても熱い恋の歌です。こんな言葉を贈られたら、恥ずかしくて顔も合わせられなくなってしまいますね。(そんな時に御簾は便利だったのかも?)そして、この和歌の英訳はこの ようになっていました。

“I thought I would give up my life to hold you in my arms, but after a night together, I find myself wishing that I could live forever.”

 いかがですか?現代語訳より、なんだかさらにロマンチックになってしまっていますね。まるで少女漫画を読んでいる時みたいにドキドキします。

ミュージアムの壁面に飾られている人形

百人一首のなかには、このような情熱的な恋の歌もあれば、身を焦がすような悲しい恋の歌、そして美しい景色に感動した歌、会えなくなってしまった友人に向けて詠んだ歌など、当時の人たちがどのような感性で何を感じ、何を憂いていたのか、何を美しいと思ったのかを読み取ることができます。そしてそれは、わたし達が持っているものと同じだったりするのです。


嵯峨・嵐山地区一帯は小倉百人一首ゆかりの地として、この嵯峨嵐山文華館を中心に観光地利用されています。亀山公園などの5カ所の公園や公有地に、100首分の歌碑が建てられていて、歩きながら百人一首を巡ることができるのです。斜面に建っていて少し見に行くのが大変な歌碑もありますが、ぜひお気に入りの歌を見つけてみてください。


そして、次に向かったのは常寂光寺。戦国時代末期から江戸初期のあいだに開山し、境内には「時雨亭」と呼ばれる藤原定家の山荘跡が残っています。京都でも屈指の紅葉の名所ですが、ということは、初夏には輝かしい青紅葉が楽しめるということ。

全身を包み込む青い木漏れ日と葉擦れの音。楓の葉の1枚1枚が折り重なって、そこから光が漏れてくる様子はあまりにもまばゆく、ダイヤモンドのブリリアントカットのように見えました。

足を踏み入れれば、瞬時に碧い世界に包まれます

小倉山に建つ常寂光寺には、平安時代の歌人・藤原忠平が詠んだといわれる有名な和歌の歌碑が建っています。


「小倉山 峰のもみじ葉 こころあらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」

「小倉山の美しい紅葉よ。お前に人間の情が分かるのなら、今一度天皇がおいでになるまで散らずに待っていてくれないだろうか。」


対岸の嵐山は桜の名所、それに対し小倉山は紅葉と鹿の名所として貴族や歌人に好まれた地です。その後の藤原氏の繁栄の基盤をつくった藤原忠平は、この歌の中で紅葉を愛でるだけでなく、暗に天皇陛下を紅葉見物に誘う歌を詠んでいるのです。当時の権力者がいかに風流を理解する心にあふれていたのかということ、和歌がどれだけ重要な教養だったのかということが読み取れますね。


歩き疲れてきたので、古典文学をめぐる散策はここでいったん休憩にします。喫茶店で一休みしたら、源氏物語「賢木の巻」に登場する野宮神社に向かいます。(後半へ続く)

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