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【雑記#16】太宰治『斜陽』より、【グリンピイスのスウプ】を作って食べる

こんにちはこんばんはおはようございます。
少し前に投稿した、ロシア・サラダの再現ごはんが、思っていたより反応がもらえて喜んでいます。


それ繋がりで、今日はもうひとつ、私が作ってみたかったものを再現してみようかと。
今日のメニューは……… 太宰治『斜陽』より【グリンピイスのスウプ】!

斜陽といえば、教科書にも載っていますし、「ひらりひらり」とスウプをお口に流し込むシーンが有名ですね。

そうして、無心そうにあちこち傍見などなさりながら、ひらりひらりと、まるで小さな翼のようにスプウンをあつかい、スウプを一滴もおこぼしになる事も無いし、吸う音もお皿の音も、ちっともお立てにならぬのだ。

太宰治『斜陽』より

「ひらりひらり」というところ、私も高校生くらいで始めて斜陽を読んだとき、「なんだこれは…?」と思いましたが、今になって考えれば、彼女たちは元々貴族だったわけなので、お金のある人特有の余裕や育ちの良さがわかるいい文章だと思います。
(今私はこの文章を表現するために「育ちの良さ」というフレーズを使いましたが、見たままを表すことができる表現を使わずに、相手から醸し出される気品を表現できる能力というのは、私にはないものですね)


シチュエーションが些か独特なので、今回は考察から入りましょう。
まず、『斜陽』の時代背景は、1945年、華族制度が廃止されたころ。そのせいで一家は没落貴族となり、質素な生活を余儀なくされることとなります。

けさのスウプは、こないだアメリカから配給になった缶詰のグリンピイスを裏ごしして、私がポタージュみたいに作ったもので、もともとお料理には自信がないので、お母さまに、いいえ、と言われても、なおも、はらはらしてそうたずねた。

おまけに終戦直後なので、ポタージュみたいにした、とありますが、おそらく私が普段食べているポタージュとは違い、バターやコンソメは使用していないと考えていいはず。

そうそう、そういえばスウプと一緒におむすびを食べている描写があるんですよね。

「お上手に出来ました」
お母さまは、まじめにそう言い、スウプをすまして、それからお海苔で包んだおむすびを手でつまんでおあがりになった。

ということで、想像とほんの少しのアレンジを加えて、出汁と醤油で煮込む、和風のポタージュにしてみましょう。「ひらりひらり」という表現から察するに、あまり重たくないほうがよいので、水分量をいつもより多くします。

調理開始

以上を踏まえて用意した材料がこちら。相変わらず分量は測らなかった。

(3人前)
・グリーンピースの缶詰 3つ
原作に倣い缶詰のものを買いました。アメリカから配給になった缶詰は手に入りませんので、普通にスーパーに売ってるものです。

・玉ねぎ 一個
・サラダ油
・水
・顆粒だし
・塩
・醤油
・牛乳
・(砂糖)

①玉ねぎ一個を薄切りにする。グリーンピースの缶詰は蓋を開けて汁を捨てておく。

②鍋に油を引き、中火で玉ねぎを炒める。

③玉ねぎが透き通りしんなりしたら、グリーンピースを加えてさっと炒め、かぶるくらいの水を注ぐ。
弱めの中火で15分煮る。

④豆が柔らかくなったら火を止める。水が少なくなっていれば足して、ミキサーかブレンダーで野菜たちを粉砕する。

⑤原作に倣い裏ごしをする(面倒だったら飛ばしても可)。私はザルでやりました。

⑥濾した液体を鍋に戻し、牛乳を加えてもう一度点火。牛乳は沸騰させると乳臭さが出ておいしくないので、弱火でじっくり温める。

⑦十分に温まったら最後に味を整える。醤油(入れすぎると色が損なわれるので、3〜4滴くらい)、塩(しっかり目に入れた方がおいしい)を加えて全体に混ぜ合わせる。
(私は甘さが欲しかったので砂糖を少量加えました)
味を見て問題なければ、器に注いで完成。


実食

そうしてできたものがこちら。

干からびかけていた長ネギと、この前のサラダの残りのチャービルをトッピングし、写真映えを気にした哀れな仕上がり。色は綺麗なので満足。

味はというと、青臭さは若干ありますが、塩をしっかり効かせたので普通に美味しく食べられます。裏漉しするのに使った道具がザルですので、ざらつきが残って舌触りはあまり良くないですね(完全に私が悪い)。

あと、やはりバターやオリーブオイルのリッチな風味には勝てないかなと。当たり前ですが、シンプルな味付けなので、ポタージュだと思って食べると物足りないです。
それでも、今のようななめらかおいしいポタージュを物語の中の彼女たちが食べていたか、と考えれば、再現としては物足りないくらいが正解なのでしょう。
当時の人が喉から手が出るほど欲しかったものが、今は簡単に手に入るようになったことを感謝しないといけないと思いました。


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